第2章 228 よく似た光景
「クラウディア様……本物の聖女って……?」
リーシャが驚いたように私を見つめる。
「一体、どういうことなのでしょうか?」
騎士が尋ねてきた。
「アルベルト様に言われたの。本物の聖女は私だって。カチュアは宰相が用意した真っ赤な偽物なのよ。神殿に様子を見に行ったということは、きっと本物ではないカチュアが何か神殿の怒りに触れるようなことをしたからなのかもしれないわ」
自分自身が未だに聖女だとは思えない。けれど、こうでも言わなければ城に行かせてなど貰えないだろう。
「た、確かに……カチュアはとてもではありませんが、聖女には思えません。陛下は初めから疑っておられましたから。では神殿に偵察に行ったのも……」
マヌエラの顔が青ざめる。
「ええ、絶対そうに決まっています。だっておかしいじゃありませんか! 城の頭上だけ、あんな雲が立ち込めているなんて!」
エバが城の上空に浮かぶ不吉な雲を指差す。
「そうよ、だからこそ……城に行って様子を見に行かなければ!」
「……分かりました」
すると騎士が頷く。
「え? それでは……」
「はい、私がクラウディア様を城へお連れいたします。本当は陛下から何があってもクラウディア様を安全な場所でお守りするように言われていましたが……」
「ありがとう。そう言えばまだあなたの名前を聞いていなかったわね。教えてくれる?」
「はい、私はヨハネと申します」
「ヨハネ……」
彼もキリストの使徒と同じ名前だなんて……! きっと、信頼してよい人物に違いない。
「どうかしましたか? クラウディア様」
訝しげに私を見るヨハネ。
「いいえ、何でも無いわ。それではヨハネ、私を城まで連れて行ってくれる?」
「ええ、もちろんです。クラウディア様」
そして私とヨハネはリーシャたちを宿屋に残し、彼の馬で城へと向かった。
**
城が近づくにつれ、その不気味さは一層際立っていることに気付いた。木立は生暖かい風に吹かれ、ざわめき……空は血の色のように赤く染まり……不気味な巨大な黒雲が浮かんでいる。
「一体、何という空の色なのでしょう」
私の背後からヨハネが声をかけてくる。
「ええ。そうね……」
空を見上げながら私は不吉な予感で押しつぶされそうになっていた。
カァ……
カァ……
頭上を不気味なカラスが無数のカラスが飛び交い、不気味に鳴いている。
この空の光景は……あまりにも似すぎている。
初めの生で私が処刑されたあの日の光景に……私は無意識に自分の身体を抱きしめた。
大丈夫、あのときと今は状況が違うのだ。大体今の私には信頼できる仲間たちがいるのだから……!
「クラウディア様! 見てください! 城が……!」
突然ヨハネが声を上げた。
「え? 何?」
ヨハネに言われ、私も近づいてくる城を注視した。
「え……? あれは一体……?」
城全体がまるで薄いモヤのような白い膜に覆われていたのだった――
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