第2章 113 夜の庭園の誘い
宰相が現れたことにより、食事が中断されてしまったことで食欲も無くなってしまった。
先に食事を終えたアルベルトは私が食べ終わるのを待っているのか、ワインを飲んでいる。
そこで彼に声を掛けることにした。
「アルベルト様」
「どうした?」
「あの、今夜はあまり食欲が湧きませんので、これで終わりにしたいのですが……」
「そうなのか?まだ半分も食べ終えていないじゃないか。でもまぁ……あれでは食欲が失せても仕方ないな」
苦笑するアルベルト。
「ええ、そうですね」
「なら、気分転換に散歩にでも行かないか?夜の庭園を散歩したことがあるか?」
「いいえ。ありません」
アルベルトの提案に驚きながら返事をした。
正直に言うと回帰前、アルベルトの後をつける為に夜の庭園に行ったことがある。
勿論、回帰後は一度も行ったことは無いけれども。
「そうか。夜の庭園は陽の光で見るのとではまた一味違う。ランタンで照らされた庭はとても美しい。一緒に行こう」
「え?わ、私と……ですか?」
未だに信じられず、問いかけた。
「当たり前だ。ここには俺とお前しかいない。他に誰を誘うと言うのだ?」
ムッとした顔で私を見るアルベルト。
「そうですよね、申し訳ございません」
「よし、それでは早速行こう」
「はい」
そして私達は席を立った。
****
ダイニングルームを出ると、廊下にはハインリヒが待機していた。
「ご苦労。ハインリヒ」
アルベルトがハインリヒに声を掛ける。
「いえ、これも私の役目ですから。それではクラウディア様、お部屋に戻りましょう」
すると私が返事をする前にアルベルトが口を開いた。
「いや、これから2人で夜の庭園に散歩をしに行くところだ」
「そうなのですか?」
以外そうにハインリヒが首を傾げる。
「ああ、今日は食事中に不愉快な訪問者がいたからな。気分転換だ」
「成程……承知致しました。それでは私も御一緒に……」
「いや。お前は来なくていい」
「「え?」」
私とハインリヒが同時に声を上げる。
「何だ?2人とも。今のはどういう意味だ?」
アルベルトが私とハインリヒを交互に見る。
「いえ、いくら城内と言えど……今は夜ですし、護衛がいるのではないかと思ったからです」
ハインリヒが珍しく焦った様子で答える。
「そうか?クラウディアはどうなのだ?」
「はい、私も……彼と同じ考えでしたけど……?」
「それなら案ずることはない。ハインリヒ、俺の剣の腕前は知っているだろう?」
「はい、存じております」
「なら、何も心配することは無い。クラウディアも俺が部屋へ送り届けるから大丈夫だ。今夜はもう休んでいいぞ」
「はい、分かりました。それでは失礼致します」
ハインリヒは頭を下げると、立ち去って行った。その後姿を見届けるとアルベルトは私に声を掛けてきた。
「では行こうか?」
「はい」
こうして、私はアルベルトと2人で初めて夜の庭園の散歩をすることになった。
そして彼から意外な話を聞くことになる――。
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