第2章 76 アルベルトの叱責
「陛下、私は水を降らせる方法を知っています。それにリシュリー様の話では私が発見されたあの神殿は『水の神殿』と呼ばれているそうですね?」
「……」
にこやかに話をするカチュアとは対象的に、アルベルトは険しい顔で無言のまま彼女を見つめている。
「私は水と相性が良いのです。なのでどうか私にお任せ頂けますか?」
「それでは一応尋ねよう。一体どんな方法で雨を降らせるつもりだ」
「はい、雨乞いの儀式を行いたいと思います」
「雨乞い?」
アルベルトが眉をしかめた。
「はい。まず高い山に登り大きなヤグラを高く積み上げて火を燃やします。そして祈りを捧げる為に楽器を演奏するのです。そうすれば雨は降ります」
カチュアはきっぱり言い切った。
やはりそうだ。この流れは回帰前と同じだ。カチュアは火を沢山燃やして煙で上昇気流を巻き起こし、更に音楽で空気を震わせて雨雲を作るつもりなのだ。
だけど、この方法では……。
「駄目だ、却下する」
アルベルトが即座に答えた。
「「「え?!」」」
カチュアと宰相、そして私まで思わず声を揃えてしまった。
「な、何故ですか?この方法なら必ずうまくいきます!あの山に登って私の言う通りにすれば必ず雨を降らすことが出来ます!」
カチュアが指さした先には山がそびえている。山頂付近にはうっすら雲がかかっているのも見える。恐らくあの雲の下で火を燃やすのだろう。
「こんなに日照りが続いた状態で山で火を起こせば山火事が起こるかもしれない。今、城では水を作り出せる王宮魔術師たちを水不足で苦しんでいる領地に送り込んでいるが、ギリギリの状況だ。もしここで火事が起これば鎮火させることなど出来ない。その場合、お前は責任が取れるのか?!」
アルベルトがカチュアと宰相に激昂した。
確かに回帰前、カチュアが雨を降らせたという話は国中に広まった。そして彼女は『聖なる巫女』として、ますます人々から慕われるようになった。けれどその反面、酷い山火事が起こったという話も耳にしていた。
でも、何故アルベルトは山火事の話を……?
カチュアはすっかり怯えてしまい、震えている。すると宰相が訴えてきた。
「山火事が起こるかどうかなどまだ分からないではありませんか!なら、一体どうするおつもりですか?陛下に何か良い考えがあるならお聞かせ下さい」
宰相は興奮の為か顔を赤く染めている。
「その対策を考える為に私はここまで出向いたのだ」
「は?!では、まだ何も具体的解決策が無いということですな?だとしたら我等の案を取り入れてみるべきではありませんか?!」
仮にも国王のアルベルトに宰相はぞんざいな口を聞いている。けれどこのままでは以前と同じように山で火を起こすことになるかもしれない。
だとしたら……。
「お話中、申し訳ございません。この件、私にお任せ願えないでしょうか?」
私はその場で手を上げた――。
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