第2章 53 アルベルトからの質問
宰相が神官の家柄出身だった……。
アルベルトの話から、回帰前の私は本当に何も知らなかったのだということが改めて思い知らされた。
この国に嫁ぐ前の私は既に『エデル』で悪評が広がっていた。
今にして思えば、旅の道中で私は試されていたのだろう。アルベルトの妻となるのにふさわしい人間かどうか。
そこで『レノスト王国』の領地に立ち寄らせ、敗戦で困っている領民達を私がどのような態度で接するのかを試したのだ。
次期王妃として、相応しい行動を取れるかどうかを……。
けれど私は最低な態度を取ってしまった。戦争で困っていた領民達に手を差し伸べるどころか、見捨てて逃げてしまったのだ。
その酷い対応はすぐさまアルベルトの耳に届き……『エデル』に到着する頃には既に私はこの国の全ての人々から嫌われる立場になっていた。
だから私はアルベルトや城の者達から、そして『エデル』の国民から憎まれた挙句に処刑されてしまったのだろうか……?
「どうした?クラウディア」
不意に名前を呼ばれ、顔を上げた。
「気分でも悪いのか?先ほどから俯いたままで食事の手も止まっているようだが?」
いけない。アルベルトの前だというのに、つい考え事をしてしまっていた。
「いえ。何でもありません。ただ今日は色々あって……少し疲れてしまっただけですから」
「そうだったな。まさか宰相がクラウディアをここまで連れて来てくれた彼らをあんな監獄に入れるとは……。知らせを聞いた時は本当に驚いた。おまけに助け出したのがお前だったという事実にもな」
そしてアルベルトはじっと何か言いたげな目で見つめて来る。
その目を見た瞬間、私の背筋に冷たいものが走る。
どうしよう……宰相のようにアルベルトも私が何故ユダ達の居場所を知っていたのか追及してくるのではないだろうか?その時は一体何と答えれば良いのだろう?
自分の隠している事実を誰にも知られるわけにはいかない。
「それにしても良く居場所が分かったな?知らせを受けた時、すぐに彼らを監獄から出すように命じたが既にお前が彼らを助けていたのだから」
「はい、そうです……」
緊張しながら、次のアルベルトの言葉を待つが……彼は予想外の話を口にした。
「そうか……。俺の力を借りようともせずに危険を顧みず自ら動いて彼らを助け出したということだよな?それ程までに彼等はお前にとって大切な存在だったのか?」
「え?」
アルベルトは一体何を言い出すのだろう?
「宰相の言葉では無いが……個人的にどうしても助けたい人物がいたから俺に助けを求めずに自ら行動したのか?」
「い、いえ。そうではありません。様々な危険な目に遭いながらもここまで私を連れて来てくれた仲間達です。彼らが言いがかりで牢屋に入れられるのを見過ごすわけにはいかなかったからです。陛下の手を借りずに、自分の力で助けたかったのです」
「それが理由だったのか……。だが、今後のことを考えてクラウディアにも護衛をつけた方がいいかもしれないな……」
アルベルトが何やら考え込んでいる。
私に専属の護衛……。
この城で一番信頼出来る兵士がいるとしたら……やはり彼しかいない。
「あの、陛下。護衛の件でご相談したいことがあります」
「何だ?」
「はい。私に護衛をつけて下さるのでしたら、ユダという兵士を専属護衛にして頂けないでしょうか?」
「何?ユダ……ユダだって?!」
何故か、アルベルトの顔が険しくなった――。
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