第1章 71 ユダの嫌疑 1
「ユダが監禁て…一体どういうことなの?」
するとヤコブが困った表情を見せた。
「それは…」
するとすぐ近くで食事をしていた兵士が吐き捨てるように言った。
「そんなのは簡単なことですよ。あいつは裏切り者なんですから」
その言葉を皮切りにあちこちでユダに対する不満が爆発したかのように口々に彼を避難する言葉が彼等の間で飛び交い始めた。
「あいつ…リーダーだかなんだか知らないが、威張りくさって前から気に入らなかったんだよ」
「全くだ。俺たちを顎でこき使いやがって。一体何様のつもりだ」
「何でもかんでも自分1人で決めやがって」
彼等が互いにユダの悪口を言う姿に戸惑っていると、スヴェンが割って入ってきた。
「おいおい、いくらなんでも仲間の悪口を言い過ぎなんじゃないのか?」
するとライがジロリとスヴェンを睨みつけた。
「あいつが仲間?ふん!あんな奴仲間なもんか!あいつのせいで俺たちは皆死にかけたんだからな!」
死にかけた…?
その言葉は流石に頂けなかった。
「ちょっと待ってちょうだい。何故ユダのせいで死にかけたなんて言うの?」
「そうですよ。一体何の根拠があってそのようなことを言うのですか?」
トマスも我慢出来なかったのか、私の後に続いた。
「いいぜ、なら教えてやるよ。毒蛇に俺が襲われたのは絶対にあいつのせいなんだよ!」
ライの言葉に私は驚いた。
「どうして貴方が毒蛇に襲われたことがユダのせいになるの?」
「それはユダが俺たちでクラウディア様を迎えに行くときに、渡してきた匂い袋のせいに決まっているんだよっ!」
「匂い袋?それって何ですか?」
リーシャが質問した。
「ええ、荷馬車に積んであるので今持ってきますよ」
食べ終えた器を地面の上に置くと、ヤコブが近くに止めて置いた荷馬車に向った。
「一体匂い袋って何のことでしょうね?」
「さ、さぁ…?」
リーシャ余程匂い袋の話に興味があるのか耳元で尋ねて来るものの、私は首を傾げるしか無かった。
「持ってきました」
ヤコブはすぐに戻ってきた。
彼は小脇に両手に乗るほどの小さな木箱を抱えている。
「この中に匂い袋が入っています」
ヤコブが蓋を開けた途端、まるでワインのような香りが中から漂ってきた。
箱の中には小さな匂い袋が入っている。
その数はおよそ10個くらいだろうか?
「この匂い袋がどうしたの?」
尋ねるとヤコブが説明してくれた。
「はい我らが出発する際に、ユダが全員にこの匂い袋を渡してきたのです。この匂いは危険生物が嫌う成分の香料が含まれているのでお守りとして身につけておくようにと言って渡してきたのです」
「そうだ、それなのに俺はあの【死の大地】で毒蛇に襲われて死にかけた!こんなのおかしいだろう?!」
ライは興奮気味に言い放った。
「ああ!そうだ!俺だって襲われた!」
「俺もだ!」
「これのせいで俺たちは死にかけんたんだ!」
彼等の短絡的な考えに呆れてしまった。
「皆、落ち着いて!あの場所は毒蛇の巣穴だったのよ!そんな所に足を踏み入れれば、いくらこのお守りを付けていても無駄だったのじゃないの?」
「ああ、姫さんの言うとおりだ。あの後、調べてみたらお前たちが襲われた場所の付近で蛇の卵がいくつも見つかっているんだぞ?たまたまお前が運悪く毒蛇の巣穴に入ってしまった結果、あんな目に遭ってしまったんじゃないのか?」
スヴェンはライを指さした。
「な、何だって!俺のせいだって言うのかっ?!」
ライは怒りで顔を真っ赤にさせた。
「でも助けに行ったユダも毒蛇に噛まれたのよ?本当にユダが裏切っていたなら、自分も皆と同じ匂い袋を持たないはずじゃないの?」
「クラウディア様。ですが、現に我々は試してみたのですよ。全員の匂い袋を集めて、この箱に入れて放置してみたところ、サソリが現れてこの箱に近付いていったのですから」
「え…?」
ヤコブの言葉は耳を疑うものだった―。
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