アサシンズ・クアッド~合衆国最凶暗殺者集団、知らない女の子を傷つける『敵』の暗殺を命ぜられて困惑する~

空戦型ヰ号機

1章 アサシンズ・クアッドの困惑

プロローグ はじまりの暗殺

 摩天楼が広がる夜の町。


 最新のインフラが地表を覆い尽くし、目には見えない様々な情報が飛び交うそこは自然を排斥した人間だけの世界。夜の闇を覆うように瞬く無数の光は、それとも見たくないものを影に追いやる傲慢さを内包している。


 そこは世界有数の大国家、『ジルベス合衆国』の歓楽街だった。


 眠らない町を行き交う、酒の臭いを漂わせた赤ら顔。

 男を誘う女、女を誘う男、無遠慮に撒き散らされる声、足音、吐息。

 目先の欲望と口当たりの良い真実に踊らされ、真実を見ようともしない愚か者たちの腐臭が立ちこめるそこは地獄か、それとも享楽に溺れる者にとっては楽園か。


『ユニット・アクティブ!!』


 町の一際巨大なビルに映し出される立体モニターに映るのは、爆煙を突き破って派手に登場する鋼鉄の鎧に全身を覆われた兵士。エフェクトか過剰に盛られ、まるで子供向けの勧善懲悪娯楽番組に出てくる変身ヒーローのようだ。

 後れて、やけに陽気なナレーションが入る。


『これぞ、今日こんにちまでのジルベスの平和と発展を担ってきた我らがヒーロー、『U.N.I.T.ユニット』だ!! あらゆるテロを圧倒し、危険な場所での活動もなんのその!! 世界の治安と平和はジルベスの技術の結晶、『U.N.I.T.ユニット』によって守られているんだぜ!!』


 まるで特撮番組の紹介のような声の後ろでは、ユニットが実際に活躍する映像が流れている。


 フライトユニットを装着し、数多のマイクロミサイルを華麗に躱し、銃で撃墜し、時にはブレードで切り裂いて画面に迫る迫力満点のユニット。


 崩落した建造物の巨大な柱を片手で薙ぎ倒して子供を保護し、突然の敵の襲撃にバリアのような障壁を張って民間人を守るユニット。障壁は決して砕けることなく、攻撃していた敵兵達が弾切れを起こして怯えたように逃げていく。


 また、あるユニットは海中を魚雷のような速度で推進して海面に勢いよく飛び出すと、戦車砲を無理矢理携行型に改造したようなサイズの電磁投射砲レールガンを発射する。眩いプラズマ光と共に放たれた弾丸は海に浮かぶ空母の土手っ腹に命中し、船体が中腹からへし折れて派手に轟沈する。


『海陸空あらゆる戦局に対応し、人型のサイズでこの力!! これぞ今の地上における絶対正義と言えるだろう!! 今日もユニットは悪をくじき、苦しむ人々を救うために華々しく活躍しているのだッ!!』


 デモ映像が終わると、ジルベス軍の兵士募集の呼びかけやジルベス軍の勇ましさをアピールする様々な映像や活動実績がつらつらと並べられる。


 映像は全国放送で流れており、郊外の寂れた廃工場に置かれた粗末なモニターでも視聴することが出来た。

 そのモニターの先に――漆黒の衣を身に纏った少年がいた。


「……誰の正義のことを言っているのだかな。お前はどう思う? 正義のために亡命するんだろ?」

「ひっ……ひっ……!!」


 少年に問われたメガネの中年男性が、ひきつけでも起こしたように青い顔でびくんと震える。


 月明かりに照らされた少年はとくべつ特徴のない顔つきだった。

 その瞳に深淵のような昏さを宿し、手に軍用拳銃『カレウス-11』を握っていなければ、その辺を歩いていても特別目のつかないような少年だっただろう。


 何事もなく日常を送り、必要なときになって初めて濃密な『死』の気配を放つ。

 『殺し屋』――そんな現実感のないワードがいやにしっくりくる、そういう少年だった。

 中年の男はジュラルミンケースを抱えて暫くひきつけのような動きをしていたが、恐怖に歪んだ顔にある瞬間から狂気が宿る。


「ひっ……ひひっ、ひひひっ! ぼ、ぼ、僕が何も考えずにこんな場所に逃げ込んだと思った? 思っただろ、低学歴の貧困者が!!」


 瞬間、廃工場の物陰から一斉に複数の陰が蠢き、少年目がけて強烈なマズルフラッシュと共に夥しい弾丸が叩き込まれた。たった一人の人間を殺すには余りにも過剰な火力に加え、手榴弾とグレネードランチャーまでもが間髪入れずに発射され、少年の姿が爆煙に飲まれた。


「おーおー、跡形も残ってないんじゃないの?」


 物陰から姿を現す、全身強化外骨格に身を包んだ男らしき誰かが肩に軍用アサルトライフルを担いで中年の男に近づく。顔色の悪い中年の男は、やっと一息ついたのか大きく息を吐き出すと、手元の携帯デバイスを弄る。


「ほ、ほ、報酬は口座に……残りの半分は、脱出が完了してから」


 パワードスーツの男が微かに首を動かすと、彼の部下らしき他のパワードスーツの男たちが何から確認を行い、親指を立てて肯定の意を送る。


「確認できました、リーダー」

「約束通りだ。金払いのいい依頼者は好きだぜ。成功させてやりたくなる」

「ひ、ひ、ひひ……そうだろうとも! 僕に代わりなどいない! いちゃいけないんだ!!」


 中年の男は、ある国家機密を持って他国に亡命しようとしていた。

 パワードスーツの戦闘集団は、彼に雇われた護衛兼闇ブローカーだった。

 国の為にと戦場に送られ、そして戦後の発展に取り残され、闇家業に身をやつした……ジルベスではそう珍しくもない集団だ。嘗ては軍でそれなりに名の知れた部隊だったのか、結束を示すように全員が妖精の羽のデカールをパワードスーツに貼り付けていた。


 リーダーは未だ爆煙で煙が立ち上る、さっきまで少年の殺し屋がいた場所に首を向ける。


「しかしあの若い鉄砲玉にこんな過剰な戦力が必要だったか? スナイパーで一撃でも良かったろうに」

「じ、情報があったんだ……『クアッド』が来るかもって。それくらいこれは重要な情報なんだ」

「クアッド? ……あのホラ話の? まさか!」


 リーダーは肩をすくめて笑う。

 『クアッド』は、ジルベスの権力者の間でまことしやかに囁かれる都市伝説だ。

 所謂伝説の殺し屋、マトにかけられれば決して助からない現代の死神。

 黒い噂の絶えない人間が急に社会からとき、人々は『クアッドにやられたんだ』と口にする。証拠なんて何もないが、何もないことが証拠だと陰謀論主義者はうそぶく。


「だとしたら俺たちゃ大手柄だな。さ、とっととズラかるぞ。裏手にくるまを――」


 言いながら男を出口の方に誘導したリーダーは、ふと長年の戦闘経験から異変を感じ取った。

 少年を総攻撃した際に巻き上がった爆煙や噴煙が立ちこめすぎている。

 パワードスーツの計測器は確かに少年の消滅を確認しているが、何かが引っかかる――反射的にリーダーはライフルを構え、そして、視界が反転した。


「はえ?」


 声と呼んで良いのか躊躇われるような間抜けな声と共に、リーダーの頭部は肉体と永遠の別れを告げた。嘗ての軍での活躍も、その後の没落も、裏の人間としての再起も、すべてを無に帰す斬撃で。


 部下たちは見た。

 レーダーでもサーモグラフィでもあらゆる探知機能で何もないと証明されている筈の空間に、煌めく刃があることを。それが自分たちの従う隊長の首を型落ちとはいえ軍用パワードスーツの装甲ごと容易く切り落としたことを。


「なんだあれは……対物ライフルも耐える複合装甲を紙切れみたいに!?」

「実体じゃない、虚空にエネルギーを固着させてるのか!?」

「何かいやがる! 姿を見せろ!!」


 副隊長と思しき人物が反射的にその刃のある場所へアサルトライフルの銃撃を叩き込むと、何もない筈の虚空が次々に火花をあげて弾丸を弾いた。バチチ、と短いスパークをあげて何かが弾けると、そこに漆黒の鎧が顕現する。


『ユニット・アクティブ……とでも言えば喜ばれるのか?』


 軍用パワードスーツのような野太い形状とは一線を画すスマートな形状。

 全ての光を吸い込む漆黒の装甲は、兵器としての無骨さと甲虫のような曲線が織り交ぜられ、兵器というよりは芸術品のようなある種の美しさを醸し出している。

 この細さで、戦車の装甲にも穴を開けるパワードスーツのライフルを弾ける筈がない。

 もしそんなことが出来るスーツがあるとしたら、それは――。


「U.N.I.T.……なのか?」

「馬鹿な! ジルベス最強の戦略兵器だぞ! 軍さえ容易に投入を決定できないモノがこんな場所にある筈がない!」

「虚仮威しだ! やっちまえ――」


 彼らの言葉はそれ以上は続かなかった。

 漆黒のユニットが光の剣を大きく横一線に振り抜いた瞬間、刃の先端からレーザーのように光が発射され、包囲していたパワードスーツが工場の外壁ごと切り裂かれたからだ。

 夜の暗い工場を照らす幻想的な光は、大半の兵士達の上半身と下半身を泣き別れにした。


「は、範囲が……広、すぎる」

「こんな出力、あり、え、な――」


 パワードスーツの常識では考えられない出力を、一瞬で。

 自分たちが血反吐を吐いて泥水を啜りながら国の為に駆けずり回った地獄には駆けつけてくれなかった不平等なヒーローの姿が脳裏を過り、それが彼らの最後の思考となった。


 そんな中で僅か数名――高所に陣取っていた者と戦場で培われたカンで辛うじて回避した者たちが、漆黒のユニットに銃口と刃を向ける。

 彼らは勝てるかどうかは考えなかった。

 倒すしか生きる道はないと本能が絶叫していた。


「あぁぁぁああああ!! ――ごぷっ?」


 高所にいたパワードスーツの胸部に大きな穴が開く。

 一体いつ構えたのか、漆黒のユニットが見たこともないモデルのライフルらしきものを発射し、弾丸が中の元兵士ごと装甲を貫いたのだ。考える暇もなく即死した元兵士。その死を悼むことさえ許されない生き残りのパワードスーツたちがシールド片手に接近戦に挑む。


「ハァァァァ!! うおォォォォ!!」


 パワードスーツが振り回すのは高電圧を纏ったバトンだ。一般的にはスタンバトンなどと呼ばれ非殺傷性を売りにした武器だが、彼のそれは軍用に改造されたものを更に違法改造が施してある。殴打による破砕力だけでなく人が触れれば電流で即死、機械に当てれば高電圧が電子機器類を全て焼き切る『当てれば勝ち』の非道な武器だ。


「ユニットだろうが技術的にはパワードスーツの発展系だろう!! 焼けて死ねやぁッ!!」


 軍用格闘術に従った突き、薙ぎ払い、死角からの切りつけと次々に殺傷性スタンバトンを繰り出しすパワードスーツ。これだけ激しく攻めれば銃を構えて撃つ暇はない。しかし漆黒のユニットは慌てることもなく最小限の動きでそれを躱す。本来パワードスーツであるなら重量による慣性が働いて姿勢を崩すような動きさえ、それは舞うようにこなしてみせた。

 パワードスーツを駆る元兵士が半狂乱になって叫ぶ。


「馬鹿な、馬鹿な、馬鹿なぁ!! 本当にユニットだというのか!? 本当に戦場を一変させる国家の必殺戦略兵器だとでも言うのか!? たった一人の科学者を殺す為に……ジルベスの闇はそこまで深いというのかッ!?」

『……喧しいやつだな。自分もその闇とやらの一端を担う側だろ』


 少年の声とともに、一瞬の隙を突いてユニットの手刀がパワードスーツに叩き込まれる。通常のパワードスーツであればマニュピレータがイカれて自らがダメージを負うことになる筈の手刀は、容易くパワードスーツの装甲と中にいる人間の臓腑を貫いた。


「が、あ……ふ、ふふ」

『?』

「捕まえ、たぁ……!!」


 彼の最期の言葉と同時に、パワードスーツが自律起動してあらん限りの力で自らを貫く漆黒のユニットの腕を掴んだ。中の人間は既に死んでるが、男はその執念を予めパワードスーツにプログラミングすることで自らを犠牲に敵を抑えこむ。リミッターを解除したことで限界を超えた力がユニットの腕を締め付ける。


 その瞬間に――生き残りの最後の一人が殺傷性スタンバトンをユニットに向ける。


 元兵士は一言も言葉を発さず、普段は押すことのないバトンのボタンを押し込んだ。

 瞬間、スタンバトンの先端が分離、射出される。

 改造スタンバトンの一回限りの切り札、テーザーショット。

 射出部分は細いワイヤーを通してスタンバトン本体の高電圧を遠くに飛ばすことができる。


 仲間が作った一瞬の隙を、彼はものにした。


「この戦争、俺たちの勝ちだッ!!」


 テーザーショットの先端が漆黒のユニットに絡みつき、激しいスパークを発する。

 そして、それ以上何が起きたか彼は認識できなくなった。

 漆黒のユニットが平然と銃を構え、無慈悲な弾丸が彼の頭部を吹き飛ばしたからだ。


 漆黒のユニットは死してなお腕に掴みかかるパワードスーツを虫を払う様に片腕で床に叩き付け、ワイヤーで絡みついた高電圧のテーザーショットを指先から飛び出した刃でぶつりと切り落とす。高電圧の影響は欠片も見えない。


 兵士の返り血を浴びた漆黒のガイストの前には、鉄と屍の山が転がっていた。

 戦いとも呼べない圧倒的な殺戮だった。


『……いつまで戦争続けてるつもりだ。もう十年も前に終わってるのに』


 鼻を鳴らすと同時、漆黒のガイストは燐光とともに一瞬で消え去る。

 光の中心にいたのは、先ほど銃撃を受けたあの少年だった。

 少年はイヤーデバイスを人差指で叩く。


「サーペント、目標は?」

『僕が手を下すまでもなく、君のスライサーでずんばらりんさ。うわぁ、酷いよこれ。前屈みで逃げてたせいでとんでもない断面の形に』

「心にもないことを言うなよ。酷いかどうかなんて興味も無いくせに」

『そういう君は、暗殺者に心はないとか言うくせに心って言葉使うよね』

「言葉狩りに付き合うつもりはない。ミケとテウメッサは?」

『もう終わったってさ』

「そうか」

『んふふ。君は冷めたフリして実は仲間思いだよね、オウル』


 からかうような男の声に無視を決め込み、少年――オウルはブラウンの髪を揺らして工場の端に向かう。そこに、パワードスーツの部隊とも抹殺対象とも違う何者かの生体反応があったからだ。部隊員が持ち込んだと思われる作業用のコンテナ、その中で対象は倒れ伏している。


 反応を見るに藻掻いているようで、拘束されていると思われる。オウルはするとコンテナの上部を。先ほどの戦闘の際に斬撃で切り裂かれていたとはいえ、かなりの重量がある筈のコンテナはあっさりずれ落ちた。


 コンテナの中には、余りにも場違いな少女が両手足を拘束されて床に無造作に放られていた。なんとか拘束を解きたいようだが、目隠しされているせいで周囲の状況が分かっていないようだ。口も乱雑に布で塞がれている。もし床に転がされていなければさっきの攻撃で死んでいたかもしれない。

 ジルベスでは珍しい黒髪だが、肌の色が白いのを見るにクォーターなどその辺りだろう。年頃はオウルと同じ十三、四歳といったところか。


「んーっ! んーっ!」


 第一印象は、なんだこいつは、だった。

 状況確認のために再度仲間に連絡を取る。


「おい、サーペント。見えてるな。こいつはなんだ?」

『突入より約二時間前に、繁華街の近くでたちの悪い誘拐犯に捕まって強引にこの辺りまで車で誘拐されてるね。そして誘拐犯はさっきの戦闘部隊を目撃してしまい口封じに殺害されて魚の餌。女の子はその時点で既に拘束されてたから、まぁ戦闘後のお楽しみにでも使うつもりだったんじゃない?』

「運の悪い奴だ。玩具にされていれば今より長生き出来ただろうに」

「むうっ!? むぅー!!」


 少女は耳を塞がれていないため、今のオウルの言葉がはっきり聞こえたようだ。

 急に全身を震わせ、後ずさりしだす。


 オウル、サーペント、そして他の二人の仲間は『クアッド』に相違ない。

 正体不明、標的確殺の暗殺者集団で、誰も実態を知らないクアッドだ。

 だから、ほんの僅かであったとしてもクアッドに繋がる情報は隠滅しなければならない。


 この別に罪も謂れもないであろう不幸な少女を、究極の不幸にしなければならない。

 オウルはそのことに躊躇いを覚えることはないし、他の三人の仲間も同じだろう。

 これまでそうしてきたし、これからもそうしていく。


 クアッドは、なのだから。


 オウルはユニット化した腕を少女に向け――唐突なメッセージに動きを止めた。

 単なるメッセージであれば躊躇いなく殺してから確認した筈のそれは、少女にとっては幸運なことに、眼前の人間を処理することより優先事項の高い事柄だった。


「……? ……??? サーペント、俺は目がおかしくなったのか?」

『だとしたら現場から遙か離れているこちらもおかしくなったことになるね』

「お前、こんな経験あるか?」

『これが夢の中でないならば』


 オウル達は依頼ではなく命令を受けて人を消す。

 命令はどんな無茶でも非道でも絶対服従が彼らのルールだ。

 そんな彼らの命令は、極めて特殊な回線を用いて彼らの『あるもの』を介して視界に直接送り込まれてくる。その命令がオウルを激しく困惑させていた。


《目の前の少女『ユア・リナーデル』の肉体、精神に著しく害を為す全ての存在の殺害を命じる。殺傷に制限はない》


 何も知らずに事件に巻き込まれた筈の、目の前で殺処分を待つ子猫のように震える少女に仇なす存在を、これは実質守れと言っている。


 ――ジルベス合衆国の最奥の闇とさえ呼ばれる『クアッド』が、子供を守る?

 ――人殺ししかしたことがないような人でなしの屑の怪物集団が?


「俺たちに、あの反吐が出るようなプロパガンダのヒーローそのものになれとでも言う気か? 馬鹿馬鹿しいにも程がある! 暗殺者は人殺しの屑でしかない筈だろ……!」


 暗殺者という生き方しかしたことのないオウルは激しく苛立ったが、暗殺者であるが故に命令に逆らうという選択肢を持ち合わせておらず、それがまた無性に腹立たしかった。


 この日、このときより、暗殺者集団アサシンズ・クアッドの困惑の日々が始まった。




「……納得はいかないがとりあえず女に薬打っておくか。ここ数時間の記憶がやや曖昧になる副作用があるが、大人しくなるから運びやすい便利な薬だ」


 ぶしゅ、と何の容赦なく首筋に拉致用の無針注射を叩き込まれた少女ユアは、「あうっ」の一言しか発することが出来ずにそのまま意識を混濁させた。

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