ゼロステップ
尻餅ペタン
一 0steps
男はスマートウォッチを購入した。
平日は腕時計にかえて、この新しい相棒と共に出勤し、働き、帰宅する日々を過ごしている。
購入して数日。一日が終わって自宅で眠る前に歩数計機能を確認中すると、四千歩と少しといった具合になっていることもわかってきた。
『4213steps』
もう少し歩いたほうがいいかな。最近食べすぎているからな。いや、仕事に影響が出たらいやだな。そんなことでは体力はつかない。
「どう思う?」
外したスマートウォッチに聞いてみる。返事はない。
「おやすみ」
男は枕もとにそっと置いて眠った。
翌朝目が覚める。時計をつける。歩数計を確認する。
『0steps』
この機能は日ごとにリセットされるので、また今日もこれから歩数がカウントされていく。
男はある晩、残業からヘトヘトになって帰ってきた。クタクタでもう何をする気力も残っていない。
なんとか着替えだけを済ませてベッドに倒れこんだ。歩数計を確認する。
『3894steps』
いつもより少ない。今日はコンビニやスーパーに寄らなかったからだ。その余裕も体力もなかった。
疲労感が睡魔にかわるように、そこまで考えて眠りについた。
夢を見た。会社にいく夢だ。どこか急いだ気持ちで会社に向かう。到着すると皆が仕事をしている。遅刻をしたのかな。そんな思いのなかデスクについて仕事を始める夢だった。
そこで目を覚ます。外はまだ白くなりかけで暗い。時刻を確認するため、一度枕もとを手でまさぐり、目的のものを手にはめていたことに気づく。
スマートウォッチで時刻をみるとやはり起きるにはだいぶ早い時間だった。
そのとき癖のように、なんとなく歩数計を確認する。
『2189steps』
どうやら出勤しているつもりらしい。
ただ今日はこれからだ。
男は再び眠りについた。
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