さようなら
バブみ道日丿宮組
お題:絶望的な別れ 制限時間:15分
明日吹く風は、今日も吹くから。
そういって彼女は学校の屋上から飛び降りた。
すぐに救急車を呼んだおかげもあるのか、即死ということはなかった。
それでも意識不明の重体だ。
近くにいたはずなのに、止めることができなかった。
一緒にいれば、一緒に落ちることもできたのに、彼女は一人で行こうとした。
少し許せなかった。
ベッドで静かに眠る彼女は、とても安定してる。
今すぐにでも目をあけて、話しかけてきそうな雰囲気すらある。
脳死ではない。きちんと脳は生きてる。心臓も動いてる。
彼女は目覚めを拒否してる。現実に戻りたくないと閉じこもってる。
たくさん声をかけてくださいとかつてお医者さんに言われた。
こっちに戻ってくるきっかけを作ってあげてとのことだ。
親御さんは最初の方はきちんときてたようだけど、二年も経つとほとんど顔を見せなくなった。
毎週きちんときてる友だちは私だけだ。私だけが彼女のそばにいる。
手を握る。
細くなった彼女の手は死人に近い。
点滴だけの生活は、どんどん筋力を落としてく。
いっそのこと、殺してあげれば少しは楽になるんじゃないか。
そう思い、彼女の首に手をかけた。
すぐに苦しそうな声色に変わり、緩めた。
生きてる。まだ生きてるんだ。私がどうこうするのはおかしい。
ごめんなさいと私は泣いた。
側にいることはできるのに、隣に並ぶことができない。
彼女を連れ戻すことができない。その術はどこにもない。
飛び降りれば、彼女の近くに行けるだろうか? また別の場所に行ってしまうのだろうか。
それなら、一緒に飛び降りれば同じところにいけるのではないか。
決意は生まれなかった。
ただ怖かった。
同じことを私はする勇気を持てなかった。
それなのに、一緒に飛び降りるなんて……あのときであろうとできなかったはずだ。
結局彼女は彼女の世界に飛び込むだけで、私が入り込む余地なんてまるでないのだ。
ここにくるのはもう止めよう。彼女は旅立ってしまったのだ。
立ち上がり、背を向けた瞬間、服を掴まれた。
振り返れば、彼女の手が私の服を掴んでた。
止めるという選択肢は簡単に砕けた。
彼女はここにいてほしいと私に言ってる。
まだ私にもここにいる意味があるんだ。
手を握りしめると、大丈夫だからと声をかけた。
次の日彼女は病院から飛び降り謎の死亡を迎えた。
さようなら バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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