ひろいおうち

齊藤 涼(saito ryo)

ひろいおうち

今日からここが私のおうち。


新しいママは輝くような笑顔で迎えてくれた。


今度は優しいママだといいな。


五階建ての大きなおうちにふたりで住むの。


広いお部屋にたくさんのおもちゃ。


これを着てねとニコニコ笑顔のママ。


男の子のお洋服。不思議だな。


ぴったりねと微笑むママは嬉しそう。


ぶかぶかなのになんでだろう。


そろそろご飯の時間ねとつぶやいた。


もう夜中なのにと首を傾げると悲しそうな顔。


良い子でいないといけないのに。


慌ててお腹が空いたと言った。


真っ暗なお部屋で冷たいご飯。


熱々ねとニッコリ笑顔のママ。


ごはんの後は歯磨きの時間。


鏡に映るママの顔は笑っていなかった。


ふかふかのベットに私だけのお部屋。


ゆっくりと眠れそう。


大きなクマのぬいぐるみを抱きしめた。


部屋の壁に何か書いてある。


赤いクレヨンでタスケテの文字。


廊下を歩く音が聞こえた。


こんな時間に誰だろう。


隙間から覗くと階段を上ってくる男の子の姿。


ふたりだけのおうちなのにあの子はだあれ。


積み木が倒れて音がなった。


真っ黒な目がこちらを見つめる。




今日からここが僕のおうち。


嬉しそうに笑うママが迎えてくれる。


冷たい風が吹いた。

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