盲目

ひなみ おおがい

盲目

「注目されたい」

どんな人でも一度は思ったことがあるのではないだろうか。

私は常日頃から思っている。

「誰か私を見て」

「誰か私に気付いて」

そう思えば思うほど、

誰も私を見ていない事実にうちひしがれる。

誰も私を見ていない。

SNSで投稿しても

誰も私に気付かない。

私の事が見えない人は

私にとってはみんな盲目。



「どうして?」

「どうしてなの?」

ある日私は死ぬことにした。

「死にます。」

これが私の最後の投稿。

それでも誰も気付かない。

そりゃそうだよね…


私は飛び降りた。

でも、すぐには死ねなかった。

気付くと私は病院にいた。

動けなかった。

何も見えなかった。

何も聞こえなかった。

だけど、誰かの泣く声がした。

頬を伝って流れる悲哀が

私の冷たい体にわずかな温もりを与えた。


私は気付いた。

盲目なのは私の方だ。

私には見えていなかった。

自分を大切に思っている人がいることに

私は気付いていなかった。


もう少し早く気づきたかったなぁ。

私は泣きたかった。

けれど、泣けなかった。

顔も見えない誰かの悲しい音が

私の耳に入らなくなる

その瞬間まで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

盲目 ひなみ おおがい @Hinami-Oogai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る