第5話 初めての学園祭

学園祭前夜、最後の仕上げに入っていた。

曲は5曲、この季節にそった曲を選んでいた。

【木枯らし】【ハートブレイク】【秋月】【冬将軍】【満天の空の元】

ロック調であるが、出だしと秋月はしっとりした曲になっていた。

5曲の通し演奏を終えて、4人は家路についていた。

明日は吹部の後の演奏であり、少し客の入りが心配だった。

もしかしたら、だれも来ないかも知れないと思った。

演劇部が終わり、吹部で殆ど居なくなるのであろう。


学園祭には、他校からたくさんの生徒が来ていた。

父兄なども来ていて、賑やかに午前中が過ぎていた。

4人は前もって作ってきた、ビラを午前中に配っていた。

午後の1番は演劇部だった、器材を運び始めていた。

いつもはあまり長距離を動かさないアンプの移動は、重労働だった。

0時前から運び始めて、器材はギリギリ運び終わっていた。

外でチューニングをして、吹部の終わるのを待っていた。

案の定、聞くに価しない演奏でお客様はいなくなっていた。

舞台でのセッティングも終わり、時間が押しているので始めるしかなかった。

見守るのは、教師数名だけで。

これによって同好会もできなくなってしまう。

麗奈はみんなにアンプのボリュームを上げる様に言い、ギターを弾き始めた。

大音量の演奏が流れ出していた。 

教師達は耳を塞いでいた。

ギターを立てかけると、ワイヤレスのマイクを持ち舞台から飛び降りていた。

歌いながら移動して体育館の窓を開け、扉も全部開けていた。

舞台に戻るとみんなで笑顔になってギターを弾き始めていた。


一度体育館を後にした生徒や、他校の生徒・父兄までも次々に体育館に入ってきていた。

2曲終わると、席は満席に近くなっていた。

マイクを取り、麗奈はお客様に言っていた。


「みなさーん 聞きに来てくださってありがとうございます Joihuru Prittygirls です。結成2ヶ月です。この公演で同好会認められるかの審査でしたけど、それはどうでもよくなりましたーー だって、こんな大勢に聞いて頂いて嬉しいんですもの 全部オリジナルです。最後まで、お付き合いくださいね よろしくーーーーーーー」


葉月が麗奈の音域の広さを知ってから作った、綺麗な曲だった。

会場の人々は、うっとりと聴き込んでいた。

4曲目が終わり、ステージもラストになる頃には立ち見も出てきていた。


「みなさーーん ありがとうございます ラストの曲です 聴いてください」


ドラムのスティックの音から、激しい音楽が鳴り響いていた。

みんな衣装は、ハーフパンツとそれと同じ色のスポーツブラとジャケットだった。

胸の無い麗奈は反対したのだが、押し切られた。

ラストの曲が終わり、4人は並んで手を繋ぎお辞儀をして挨拶をしていた。

観客からは、割れんばかりの拍手と歓声だった。

幕が降り4人がステージを後にしても、アンコールの拍手は止まなかった。

4人は予想してなかった出来事に顔を見合わせていた。

幕が上がり、4人がステージに戻ると大きな拍手が巻き起こっていた。


「みなさん ありがとう 今日の事一生わすれませーーーん  あまり持ち歌もまだバンドを組んで2ヶ月で無いですけど、新曲を歌いますねーーーーーー  みなさんの心に響く様に歌います 悲しい時や辛い時、この曲を思い出してくださいね。そんなイメージで作りました。じゃ、最後になります  みなさん もし、同好会できていたら、来年も会いましょうね やっぱり体育館よりも窓とか扉開けて野外みたいな方がいいですねー じゃ、次の歌。【翼】」


こうして、4人の文化祭も幕を閉じていた。

帰り道、4人で缶ジュースで河原で乾杯した。


「しかし、いつもは大人しい麗奈がマイク持つと人が変わるって知らなかったわよ。」


「そうそう、マイクもって体育館移動した時はびっくりしたけどね。」


「それに、私達の事紹介もしないで1人でマイクパフォーマンスしちゃっててね。後ろで笑ってたわよ。」


「幼稚園とかから、友達も少なかったから。音楽だけが、信用できる友達だったのよ。だって、努力すれば裏切らないでしょ?」


「そうだね。私達も色々と今回はミスばかりしてたけど。初めて2ヶ月とか言い訳にならないしね。これからいっぱい練習しないといけないね。」


「これからは、みんなで喧嘩しながらやっていかない? みんな気を使って、他人の事注意してないでしょ?私もだけどね。まとまらなきゃいけないから、言わなかったけど。それに歌詞もヘボすぎ。私感情移入すると、歌ってて泣いちゃうのよね。そんな詩まだないしね。」


「もう、麗奈ったら、悪口言ってるし。でも、それくらいでないと進歩ないわよね。」


「私と麗奈でも曲作るので色々と文句言い合えばいいしね。それに、彩香にばかりではなくって、私達も作詞にも入ってみるのもいいわよね。ワンパターンになるからね。」


「葉月の意見には賛成だわね。私と葉月はクラッシクからジャズ・洋楽・ロックなど幅広く小さい頃から聞いてるからね。あの有名なビートルズだって、最初は下手くそだったんですってよ。当時の器材で新しい音楽を切り開いたのは素晴らしいですものね。」


「ところで、麗奈はどこの高校を志望するつもりなの? もう、麗奈の事だから、探してあるんでしょ?」


「桜花女子学園よ。近いし。現在少ないけど、軽音もあるしね。」


「ああ 桜花か、あそこならそんなに偏差値も高くないし、あすかでも受かるわよ。」


「葉月ちゃん、なに言ってるのよ。そんな私バカじゃないし。」


「でも、この中でビリの成績はあすかちゃんよ。今のままで、余裕で入れるけどね。」


「しかし、麗奈。よく2ヶ月ちょっとでここまで上手くなったよね。天才か?」


「なに言ってるの、あすか。麗奈の指見てみなよ。何回もマメ潰してるよ。多分、1日8時間は練習してるし、土日は弾きっぱなしだろうしね。それでなきゃ、初心者であそこまでの演奏はできないわよ。」


いつしか、祝賀会は反省会に変わっていた。


学園祭が終わり数日が経つと、麗奈は職員室に呼び出され同好会の許可をもらった。

今は吹部は使っていないので、部活の日の1時間以外は音楽室の許可を得た。

まぁ吹部は殆どがパート練習に別れるので、音楽室は使っても合奏の時だけであった。


演奏の練習もしながら、これからの目標も決めていた。

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