PrettyGirls(可愛い少女たち)ーレディースバンド物語ー
安田 沙織
中学時代
第1話 吹部と胸
1980年、日本は自動車産業も世界1となり、激動の年であった。
それでも、10年前に解散したビートルズの影響は音楽界を変えていた。
そんな時代の中、小さな田舎町の少女4人の夢物語の始まりだった。
「茉莉子姉ちゃん、お風呂一緒に入ろうよ。いつも入ってくれてないじゃん。」
「当たり前でしょ?もう、高2なんだから。弟と風呂入るわけないし。麗奈あんた入ってやりなよ。どうせ、胸だってまな板なんだからね。小学生の幸平と変わらないわよ。」
「もう、小4なんだから、1人で入ってよ。私も嫌だわよ。幸平も、これからは1人で入ってね。」
確かに、中1としては胸もなかった。
普通体型だったが、胸だけなくコンプレックスだった。
姉も母も、胸はそれなにに大きかった。
自分だけどうしてだろうと思っていた。
まぁ、どこにでもある共稼ぎの家族だった。
父の隼人は、帰宅は夜9時をいつも回っていた。
母も7時に帰宅してたので、幼い頃から夕飯は8時からだった。
茉莉子は、中学校から吹奏楽部でトランペットを担当していた。
家でも消音器をつけて、練習していた麗奈の憧れだった。
母に頼んで、教室に通わせてもらったのは小4の時だった。
一応、教室でもコンテストとかマーチングとかに出場するので楽器は早いもの勝ちだった。
トランペット・トロンボーン・クラリネット・フルートは人気があり、既に人数がいた。
女の子に人気のホルンもいっぱいだった。
残った楽器はチューバとユーフォニアムだった。
どちらも大きかったが、通称ユーフォの方が小さかったので仕方なく選んだ。
小学生の頃から目立たなく大人し目の麗奈は、女友達2人といつも話したり。
帰宅も途中までは一緒だった。
まぁ、公立なので変わることなく3人は同じ中学に進んだ。
姉の茉莉子は、吹奏楽に力を入れてた私立高に通い。
音大への勉強も進めていて、しっかりと音大への道を自分で進んでいた。
この頃3年やってたユーフォはオケには無く、その理由は中途半端な音と歴史の薄さだった。
麗奈は姉とは違い、音大とかには興味が無かったので調べると大学でも吹部はあった。
部活も決めかねていた、ある日の公園のベンチで座って空を眺めていた。
突然目の前に、男の顔がありびっくりして。 ベンチから飛び降りると。
幼馴染の坂本秀一だった。
秀一は、同じマンションの同じ階の2個隣に住んでいた。
「なぁ~んだ。秀一か。脅かさないでよね。びっくりするじゃないの。」
麗奈はベンチに座り直すと、秀一は少し離れて隣に座っていた。
「麗奈。部活どうするんだ?俺はやること無いし吹部入ろうと思ってたけど、お前は?」
「考え中よ。あそこの吹部下手だし。人数も少ないからね。」
「見学行ったのか? 誘えよな。」
「見学行ってないし。聞こえた音とかでわかったからね。ところで秀一楽譜読めるの?入るなら読めないとね。私がユーフォやってたことは内緒だからね。他のやりたいしね。もし、入ったとしてもね。」
そのまま、秀一と一緒にマンションに帰っていった。
小学校からの仲良しの加藤あすかと早見彩香は、麗奈が楽器を習ってるのを知っていた。
あすかと彩香は同じクラスで、麗奈だけ別だった。
放課後になると、2人は麗奈のところに来て吹部の見学に無理矢理連れて行った。
まぁ見学だけならいいかと、3人は覗いていた。
部員は、たったの20人しかいなかった。
3人は見つかりそのまま中で見学をしていると、1人の新入生が入部届けを持ってきていた。
彼女の名前は、浅井葉月であった。
どこかで見たことがあると思ったら、毎年小学生のコンクールとかマーチングで見た顔だった。
葉月は、こっちを見て中に入っていった。
彼女はトランペットだった。
なんでも、部員は40人くらいいるのだが。
3年生が引退してから、部長と副部長を推薦で決めて、不満でみんな出てこない様だった。
まぁ、ほとんどが2年生であり。
支持されてる3年生も来ていた。
だから人数も少なくやる気の無いバラバラの演奏で、合奏にはなってなかったとわかった。
わからなかったが、昔は銀賞もとってたようであった。
音楽室の後ろの壁に、表彰状が額に入れられて飾ってあった。
今回新入部員が何人入るかで、この部も決まると思っていた。
葉月がいるので、麗奈も入ろうかなと思った。
一度彼女が広場で1人演奏をしたのを、聞いたことがあった。
綺麗な音で伸びがあり、正確な音と豊かな感情で麗奈は好きだった。
どれだけ練習したら、あんなに素敵なメロディーを奏でられるのであろう。
小3から唇の練習と、茉莉子のマウスピースを借りて練習をしてて。
本格的に楽器を鳴らしたのは小4だった。
それでも友達が少ないのが功を奏したのか、毎日練習をしていた。
難しいメロディーは、最初はゆっくり正確に指だけの練習をして。
それから、ゆっくりと吹いていた。
除々にスピードはあげていたが難しかった。
ユーフォのCDを聞いたり、色々な演奏を聞いていた。
まぁ成績は中の上あたりだったが、音楽だけはよかった。
楽器自体高いので、自分では到底買えなく借り物だった。
やり始めるとベッソンがよく、お気に入りのゴールドは80万以上して手は届かなかった。
まぁ姉の茉莉子は音大に行ってるので、両親が買い与えていた。
中学でも借り物で過ごそうとした。
1週間が過ぎ、部活入部の受付の日。
新入部員は15人であり、未経験者ばかりだった。
麗奈も未経験者の中に入って楽器を選ぼうとしてると、葉月が。
「田中さん、ユーフォでしょ? 聞いたことあるもの。ダントツ上手かったわよね。」
「ちょ ちょ 待ってよ 浅井さん 人違いですよ。トランペットやりたいかなって。」
「葉月でいいわよ。公園でユーフォ抱えて、私の演奏聞いてたの知ってるわよ。感想は?」
「とても上手かったです。綺麗な音色で心に響いてきました。」
「でしょ? 田中さんのユーフォも一緒よ。貴女ユーフォの顔してるものね。部長さん、麗奈のユーフォ聞きたいでしょ? 演奏してもらいましょうよ?びっくりするわよ。」
「葉月さんがそこまで言うならね、それでなにを演奏してもらうのかしら?」
「麗奈 【打上花火】知ってるよね。あれ、ユーフォで主線おねがいね。私がペットで吹くからね。」
こんな強引な人だったのかしら?
麗奈は呆れてしまっていた。
器材室にはユーフォが2個あり、金色の感触がよかったのでそれを借りた。
みんなは、小声で悪口を言い出していた。
「そんな簡単に演奏できるのかしらね。 ペットと呼吸合うのかしら。」
「まぁ、これで1人また居なくなるのかしらね。」
「そうそう、3年間裏方ね。」
ユーフォのソロからなので、演奏をし始めていた。
殆どがユーフォが奏でていた。
ペットは、今回は脇役の役割だった。
演奏は終わり、部員にお辞儀をしていた。
殆どが、中学から始めた初心者で努力もしていない。
多分葉月も麗奈と同じ、嫌それ以上に努力していたのでみんなは圧倒されていた。
「部長さん、麗奈のユーフォ如何でしたか?もう、3年以上はやってますよ。みなさんよりもキャリア長いですものね。当然、これくらいの演奏はできますよ。」
まぁ、葉月が合わせてくれたので楽に演奏もできた。
この曲はいつも、河原で演奏していたのでお気に入りだった。
みんなも担当の楽器が決まっていた。
秀一はトロンボーンだった。
あすかはパーカッションで、彩香はコントラバスに決まった。
彩香は兄がベーシストなので身近にエレキだったがベースがあり、よく触っていた。
彩香がコントラバスをやると言うと、兄は友達から借りてきてくれていた。
なんせ大きく持ち運びに不便なので、自宅での練習は別のが必要だった。
家は近いので、貸し出しのユーフォの持ち帰りは意外と楽だった。
吹部自体女子の人数が多く、男子は7人だった。
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