episode2/ゲーム準備、そしてルール説明
少しだけ歩いてドアから教室をのぞく。
そこで見えたのは、ベランダを歩く謎の人物。仮に名前をXとでもしておくか。
Xは黒いローブを羽織っており、顔は見えない。
学校に不審者がいることも問題なのだが、驚いたのはそのあとだった。
Xの後ろには教師が並んで列を成している。全員の目が虚ろだった。
Xが何か合図をする。それと同時に教師たちは拳をガラスにぶつける。
全員の手が血まみれだったのを僕はすんなり受け入れてしまった。
ガラスが割れる瞬間がスローモーションで流れてゆく。僕は何も考えることができなかった。
六組のガラスを割ると、Xは教師とともに七組のほうに歩いていく。
視界から教師たちが消え、また窓が割れる音がしたとき、僕の意識は現実に引き戻される。
少しふらふらしながら春のほうに歩いてゆく。
「大丈夫?」
春は不安そうな顔をしていた。僕は頭をぶんぶんと振り、
「大丈夫。」
という。実際は大丈夫ではないが。
「ほんと?」
勘ぐられてうぐっとよくわからない声が出た。春に目をじっと見られる。やばい惚れる。
そんなこんなしてたら、また放送がかかる。
『準備が整ったようです。それではみなさん、男女の二人一組になってください。制限時間は5分です。』
この人は何をさせたいんだと困惑しながら春と顔を見合わせる。あまりにも同時すぎて思わず笑ってしまう。
前述したとおり僕は本当にコミュ障である。同性と話すのも苦手なのに異性とペアを作るのはさらにハードルが高い。春には本当に感謝しかない。
さて、かなり時間が余ってしまったけどどうしようか。といっても5分なんてあっという間だ。
少し周りの人を観察していたらすぐに制限時間が終了した。
『では、ペアになれなかった人を今から殺しに行きます。』
……は?
全員同じことを思ったらしい。僕と春も顔を見合わせる。
すると、どこかから悲鳴が起こった。驚いてその方をみると、血しぶきが上がっていた。
壁には血が飛び散り、周りにいる生徒たちは顔面蒼白である。その中心には、去年お世話になった先生がいた。
先生は虚ろな目で、宙をにらみながら逃げ惑う生徒たちを襲っていく。
僕は自分の目に映っているものが信じられなかった。さっきまで元気だった人たちが今では血まみれになって床に転がっている。
これが夢ならばどれだけよかっただろうかとも思った。でも、まぎれもない現実だった。
どれほどの時間がたったのだろうか。それほど、とても長い時間に思えた。
そんな僕たちの状態とは関係なく、また放送がかかる。
『処理が終わったそうです。それでは今からルール説明をしますので、お近くの教室にお入りください。』
僕も春もおとなしく従う。抗う気力さえも残っていなかった。
教室にはガラスが飛び散っていた。いつも友達と笑いあっていた場所だとは思えなかった。
いつの間にか、教室のプロジェクターの電源がついていた。映像が映し出される。
そこには、先ほどのXが映っていた。変わらずローブを着ており、顔はおろか背格好すらもわからない。
Xはくぐもった声で淡々と話し始める。
『みなさん、見えていますでしょうか。私はこのゲームの主催者、ゲームマスターでございます。
みなさんにはこれから、私が考えたゲームを攻略していただこうと思います。
ルールは三つだけ。
一つ目、殺しあってはいけません。喧嘩もしないようにしてくださいね。
二つ目、パートナーと分かれてはいけません。別行動も禁止です。ほかのペアとの協力もダメですよ。
そして最後に、私の指示には必ず従ってください。もし抗った場合、命はないと思ってください。
では次にこのゲームについての説明です。
このゲームは運要素もある謎解きゲームです。知力と運が試されますね。
校舎のあちこちに謎が隠されているので解いていってください。
私のカウントのあと、チャイムが鳴ったらスタートです。それまでは教室から出ないでくださいね。』
そこまで静かに聞いていた僕たちだったが、次の一言でまた、ざわめきが戻る。
『謎を早く解いた先着10ペアのみ、このゲームをクリアしたことになり、無事に家に帰れます。』
つまり早く解けなかった場合……待っているのは死。
学校攻略ゲーム ゆー @You_midori
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。学校攻略ゲームの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます