夢恋(むれん)
涼
第1話 恋が叶ったら…
『夢恋』とは、片想いの人、むしろ、交際をしていても、不思議なくらい自分の描く恋愛像を大きくしてしまう。
それを、叶ったと思った時、それは何だったのだろう?
『夢恋』、この事について、今夜は話すとしよう。
*
今一つ、言える事は、『夢恋』は、誰しも夢の中で自由自在に好きな人が、手を繋いでくれるとか、抱き締めてくれるとか、キスをしてくれるとか、我儘を言っても、自分を想ってくれる…そんな、人と人との温かさを究極に欲すると、『夢』が本当の『恋』になるかも知れない…。
この後、『夢恋』を体験するのは、
高校2年生。
彼女が片想いしてる相手は、
2人とも、目立つ存在ではないが、そうは言え、別に友達が少ないとか、根が暗いとか、人と話すのが嫌いとか…そう言った人物ではない、という事。
*
紬は、昨日の夜、不思議な夢を見た。
夢で出て来た樹のタイプの髪型が、ショートカットだ、と言う夢を。
嘘か、誠か、半信半疑で、決心して、腰まであったロングヘア―を、次の日、ショートカットにして、教室に入った。
すると、クラスの誰より先に、樹が駆け寄ってきた。
「酒井!マジか!髪、ショートにしたんだ!!スッゲー似合う!!」
と樹が瞳を輝かせて、褒めに褒めてくれた。
(あの夢…まさか…正夢!?)
1番びっくりしすぎて、棒立ちしているのは、クラスの誰でもない、そして、樹でもない、紬本人だった。
1週間後、また紬は樹の夢を見た。
告白したら樹はOKしてくれる、と言う内容の夢だった。
こんなの、さすがに夢だけの話…。
そう思った紬だったが、暗くはないが、積極的な方でもなかった。
こればかりは、かなりの覚悟で行かないと、ひどく痛い結果に終わる。
それだけは嫌だ。
失敗すれば、同じクラスと言うだけで、かなりの被害を被る。
もう、樹の方を見つめる事さえ出来なくなる。
悩んで、悩んで、悩んで出した結論は…【告白する!】に至った。
告白の心の準備にえらく時間がかかり、その日を迎えたのは、夢から2週間後だった。
紬は、放課後、屋上へ樹を呼び出した。
そして、
「私…私!!樹君が好きなの!大好きなの――――!!!」
と大声で、学校中に響き渡るようだった。
その大声で、恥ずかしさもあったのだろう。
少し間を取り、樹は静かに、紬とは正反対に静かに、歯痒そうに、もう顔に出てるぞ!と突っ込んでしまいたくなるほど、照れて赤くなったほっぺで、
「俺も…俺も酒井の事好きだよ…」
とつぶやいた。
付き合いだした2人はクラス中に祝福され、公認の仲になった。
いや、学校中からも公認された。
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