第28話
ペットショップで熱帯魚を購入してから栞を家に送り届けたあと、僕は病院へ向かった。
私服でオフィスに入る事に違和感を感じながら、僕は水槽に向かった。
目黒 修:「今日からここが君たちのお家だよ」
水槽の蓋を開け、買ってきたばかりの熱帯魚たちを水槽の中に入れる。
容器に少しだけ残っていた餌と新品の餌を入れてから、蓋を閉めた。
用事は済んだので、もう帰ろう。
そう思った時、オフィスの扉が開いた。
???:「あら、目黒先生。いらしてたんですね」
優しく微笑むのは
この病院の清掃員だ。
年齢は僕より少し上で既婚者だ。
目黒 修:「お久しぶりです。堀内さん」
同じ病院で働いていても、僕が居ない間にオフィスの掃除をしてくれていたりするので、顔を合わせる事は少なかった。
堀内真奈美:「お休みなのに、どうしたんですか?」
目黒 修:「新しく熱帯魚を買ったんで、水槽に移しに来たんです」
堀内真奈美:「へぇ、どれですか?」
興味津々の堀内真奈美は水槽の前にやって来た。
目黒 修:「あの尾ひれの付け根にミッキーの模様があるのがホワイトミッキーマウスプラティ。茶色のがチョコレートグラミィ。メダカっぽいのがジャワメダカです」
泳ぎ回る熱帯魚たちを指で追い掛けながら、新人たちを紹介する。
堀内真奈美:「可愛いですね。栞ちゃんの趣味ですか?」
しゃがみ込んで水槽を眺めながら、クスッと笑った。
以前、デートしているところを目撃されてしまったので、事情を話して黙っていてもらっている。
目黒 修:「そうですね。でも僕も気に入ってるんで、僕の趣味でもあります」
栞がはしゃぎながら熱帯魚を選んでいたのを思い出す。
堀内真奈美:「良い顔してますよ」
立ち上がった堀内真奈美は僕の顔を見ながら優しく微笑んだ。
目黒 修:「顔……ですか?」
無意識に顔の筋肉が緩んでいたのか、頬に触れた。
堀内真奈美:「幸せそうな顔、してますよ」
僕は何と言い返していいかわからず、困った様に笑って見せた。
目黒 修:「……ところで、堀内さんは僕のオフィスに用があったんじゃないですか?」
恥ずかしくなったので話題を変えた。
堀内真奈美:「あ! そうだった!!」
堀内真奈美は手を叩いて苦笑いを浮かべた。
堀内真奈美:「水槽を掃除しようと思って来たんですけど、餌も入れたばっかりなので、また今度にしますね」
目黒 修:「いつもありがとうございます」
僕は深く頭を下げた。
堀内真奈美:「水が汚れないようなアイテムが入ってるんで、私は水槽の表面とかほんの少しのコケを拭き取ってるくらいなんで気にしないでください」
優しく微笑む堀内真奈美の目尻に小じわができる。
堀内真奈美は水槽以外の清掃もあるので、僕はもう一度頭を下げてからオフィスを出た。
小山るうを僕の作品に変えるのは、予定通り明日にしよう。
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