第4話
命を奪われた森岡静菜を地下室の突き当たりにある処置室に運び込み、消毒済みの処置台に寝かせた。
僕はその光景をしばらく眺めた後、裁ちばさみで森岡静菜が身につけている衣服を切り始める。
【第1工程:服を脱がす】
紺色のワンピースとお尻まで隠れるインナーを切断すると、お揃いの赤い下着と監禁中に電線したストッキングが露わになる。
僕は手を止めない。
ブラジャーのフロントと肩紐を切断し、パンティとストッキングを二本の脚から引き抜いた。
わずかに失禁していたようで、パンティが少し湿っていたが気にせず衣服と同じようにゴミ袋に詰める。
目黒 修:「さて、と……」
森岡静菜を全裸にすることで第一工程が終了した。
衣服が邪魔なだけで、この行為に性的な意味は一切ない。
【第2工程:消毒】
僕は体温を失いつつある皮膚に消毒液を吹きかけ、全身の殺菌を行った。
【第3工程は洗髪・洗顔・表情の整え】
長い髪を念入りに洗い、涙で化粧が崩れた顔を洗う。
保湿剤を塗りながら苦しそうにしている森岡静菜の表情を、静かに眠っている表情に整える。
夕食を食べることすら忘れて、僕は一生懸命に森岡静菜の美しさを保存しようと手を動かし続けた。
【第4工程:防腐液の注入】
一連の作業で最も重要になるのが、赤色に着色した防腐液を血管に流し込むこと。
僕はコレクションにエンバーミングを施している。
エンバーミングとは遺体を衛生的に保全して、事故や病気の激しい損傷の修復や生前の健康的な姿に近付けることができる処置の事。
防腐液を流し込み、化粧を施すことで長期的に美しい姿を保存することができるのだ。
目黒 修:「永久的に保存できたら良いのにな……」
血液と防腐液を入れ替えたとしても、最長50日程度しかその美しさが保存できない。
目黒 修:「有限の美しさも花みたいで良いけど……」
そう不満気に呟きながら森岡静菜の右鎖骨上部と右太ももを切開して、動脈と静脈を露出させる。
心臓が止まっているのでスプラッター映画のように真っ赤な血液が吹き出すことはない。
僕は淡々と専用の機械に繋がった二本の管をそれぞれ動脈と静脈に繋ぎ、機械を稼働させると防腐液の注入を開始した。
それと同時に静脈からは不要になった血液が排出され始める。
赤く着色している防腐液のおかげで、生前と変わらない血色が保たれるのだ。
全身に防腐液を行き渡らせるためにマッサージを行い、それが済んだら休む間もなくメスを握る。
【第5工程:残存物の吸引】
慣れた手付きで腹部に小さな穴を開け、そこに金属管を差し込み、胸腔や腹腔に残った血液や残存物を吸引する。
そこにも防腐液を流し込んだ。
【第6工程:縫合・洗浄】
メスを入れた部分を縫合し、それ以外の損傷箇所はないため、全身の洗浄をしてエンバーミングは終了した。
本来の流れであれば服を着せるのだが、僕は遺伝子が創り上げたままの姿でコレクションしたいので化粧だけ施した。
目黒 修:「はぁ、美しい……」
処置台に横たわる森岡静菜の姿に見惚れ、思わず溜め息が漏れる。
目黒 修:「本当に手に入れられて良かった……」
僕はファンデーションを塗った森岡静菜の頬や滑らかな肌の腕に触れ、全身を確認する。
目黒 修:「明日はマニキュアとペディキュアを塗り直さないとな」
手や足の爪の色が剥げてしまっている事以外は何の問題もなかった。
目黒 修:「それくらいなら処置室じゃなくてもいいか」
僕は銀色の処置台から『森岡静菜』とシールを貼った白いコレクション台に彼女を移し、長い間作業をしていた処置室を出た。
ガラガラと白い台を押して、同じ地下室にあるコレクション室に運び込む。
そこは歴代のコレクションを一時的に保管しておく部屋で、赤い絨毯や小さめのシャンデリア、アンティーク調のソファとテーブル、壁にはいくつかの絵画を飾って美術館のような内装にしていた。
目黒 修:「これで7つ目、か……」
また一つ、僕のコレクションが増えた。
心地良い疲労を感じながら、達成感に心踊らせる。
近々それを眺めながらシャンパンを飲もう。
僕はようやく感じた空腹を満たすために地下室を出てキッチンに向かった。
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