二人と過ごす時間
かずさんと
二人と一緒に、ずっといれるわけないのに…。
「明日、お弁当取りにスーパーに行くから。仕事前にいいかな?りーちゃん」
「はい、勿論です。美陸さんは、何か好きなおかずとかありますか?」
「敬語じゃなくていいよ。そうだな。玉子焼きかなー。僕、甘いの好き」
「甘い玉子焼き、わかった。」
「ため口でいいし、美陸さんじゃなくて、君とか呼び捨てでいいから」
「じゃあ、美陸君で。」
「うん」
「でも、私といるの見られたら恥ずかしくない?」
「僕が?何で、恥ずかしいの?りーちゃんは、自分が思ってるより魅力的だよ。」
その言葉に、泣いてしまった。
「ごめんね。泣かせるつもりなかったんだけど…」
「すみません。何か、優しくされて嬉しくて。こんなに楽しい時間が、魔法みたいに消えてしまったら嫌だなって思ってしまって」
「消えないよ。僕達は、生きてる人間だよ。簡単に、消えないよ」
そう言って、美陸君は笑ってくれた。
「こんな風に、お二人と過ごす時間が続けばいいと思ってしまいます。」
「続けよう。僕も、りーちゃんといるの楽しいよ。ねぇ、かずくん」
「うん。俺も楽しいよ。」
二人の優しさに涙が込み上げてくる。
こんな風に、見た目を気にしなくて生きていける事が幸せな事だって忘れていた。
「あのさ、りーちゃん。」
「はい」
「今度、僕とデートしようか?」
「デートですか?」
「うん。アクセサリー、選びに行こうよ。僕が、プレゼントしてあげるよ」
「そ、そ、そんな高価なもの、大丈夫です。」
「僕がしたいからするだけだよ。気にしないでよ。」
「それなら、俺にもお金出させてくれよ」
「おっ!!じゃあ、いいの買えるね。りーちゃん」
「何か、申し訳ないです」
「いいじゃん。一つでも、りーちゃんの自信に繋がるものを身に付けれるべきだよ。」
そう言って、美陸さんは笑ってくれた。
「あの、お二人にお礼を言いたかったです。」
「なに?」
「美陸君、かずさん、消えたいと思っていた私を救ってくれてありがとう。足が駄目になってから人が嫌いだった。久しぶりに人を好きになれました。本当に、ありがとう」
私の言葉に、二人は首を横にふった。
「誰にも理解されずに死んでいくんだと思っていました。でも、お二人に出会って…。私の人生はかわりました。初めて、この体を理解してくれた事に感謝しています。」
「僕達の事も、理解してくれて感謝してるよ」
美陸君が、笑った。
私は、涙を拭って笑った。
こんなにも、楽しくて幸せな時間を失いたくない。
でも、幸せな時間って長く続かない事を私は知っている。
「ごちそうさまでした」
私は、お皿を下げにいく。
「後は、僕が洗っておくよ」
「りーちゃん、送ってくよ」
「うん。りーちゃん、これお弁当箱よろしくね。」
「はい。わかりました。」
美陸君は、玄関まで見送ってくれる。
「じゃあ、また明日ね」
「またね」
手をふって、玄関をでた。
かずさんが、車で私を家まで送ってくれる。
「また、明日も晩御飯食べようね」
「はい…。でも、職場で大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。何も悪い事なんかしてないよ。もしかして、りーちゃんが、辛い思いしてる?」
「してませんよ。そんな事」
森ノ宮さんの話をするのは、やめた。
そんな話をしたら、もう会わない方がいいねって言われそうで怖かった。
「りーちゃんが、幸せになれるお手伝いをさせてよ」
「今でも、充分幸せですよ」
「もっと、幸せにならなくちゃ。今まで、辛い思いしたぶんもっと幸せにならなくちゃ」
そう言って、かずさんは私の家の前に車を停めた。
「俺や美陸じゃできないけどさ。こうやって、頭撫でたりとか抱きしめるぐらいは俺にもできるからさ。」
「こんな事されるだけで、充分ですよ。今日もありがとうございます」
「うん、気をつけてね。」
「はい」
「また、明日。おやすみ」
「おやすみなさい」
私は、手を振って家に帰った。
この幸せをずっと、ずっと、感じていたい。
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