Charlotte the Beginning
「……ふぅ。いやぁ、退いてくれて本当に助かった。こんな離れた距離で銃なんて撃ったって、素人の私に当てられる筈がないからね」
「えぇ⁉ 噓でしょう⁉ 今の、全部ハッタリだったんですか⁉」
「か、勘弁して下さいよロブさん‼」
「だいたい、俺たちこんな修羅場に連れて来られるなんて聞いてませんでしたよ‼ どうなってんですか⁉」
「いやぁ、悪い悪い。まさかこんなことになっているなんて、私も知らなかったものだからね。だけどまぁ、全員怪我も無くて良かったじゃないか」
「結果論でしょう、そんなの⁉」
「もう二度とこんなことには付き合いませんからね‼」
「いやいや、良い結果の結果論は大いに結構じゃないか。それより、こんな人数を我々だけで担いで行くことはできないな。誰か、車を用意してきてはくれないかね?」
「……ハァ……ったく、了解しましたよっと……」
「さてと、それでは私も仕事をするとしようか。バレル君? おーい、バレル・プランダーく~ん? 早く起きてくれないかね。さっさと仕事を手伝ってくれないと困るのだよ」
「……おい、ロブ……お前には、こいつが見えないのか……? 腹にも脚にも大穴が開いてて……全身傷だらけなんだぞ……。そんな怪我人に、この上仕事をさせるなんて……ジョークにしては、全然笑えないだろ……」
「私はこれから君たちがノックアウトしてしまった連中を介抱しなければならない。だというのに、まさか君は何もせずそこで寝てるつもりだったのかい? ほら、早く立って。自業自得だと思って諦めたまえよ。ハーリーアーップ」
「……頼むよ……。俺たちは仕事のパートナー……なんだろう……?」
「ほう、ようやく私のことをパートナーと認めてくれたようだね。だが、君とはまだ正式に手を組んだ訳じゃない。言っておくが、手を組むのを引き延ばしたのは君の方だよ。だから今回のは補償外案件さ。むしろ君たちの後始末を手伝ってやるというのだから、貸し一つだと考えてほしいものだがね」
「…………、……なら、貸し二つにして良いから……俺たちを運んで、ついでに治療もしてくれよ……」
「そういうことなら大歓迎だ。おい誰か、応急手当のできる者はいないか? 二つも貸しのある者に死なれたら困るからね」
「……あぁ、クソッ……全身血塗れで穴だらけじゃないか……。剣は折れるし、服もズボンもボロボロになっちまうし……。オマケに、こんな胡散臭い奴に二つも貸しを作っちまうなんて……。ハァ……最悪の一日ってやつだ、今日は……」
「……おい、バレル……」
「ん、あぁ……なんだよ、起きたのか。良いからまだ寝てろって。この分じゃ、俺たちが家に帰れるのはまだ後になりそうだぞ。というより、頼むから今は俺を寝させてくれ……」
「…………」
「どうした。まさか、さっさと離せって言うのか? 仕方ないだろ、今はもう指一本たりとも動かないんだから。セクハラだなんて言うなよな」
「…………、……私の、私の
「なんだよ、突然そんなことを言いだして」
「突然、じゃない……。連中の相手をさせたのも、お前が傷だらけになっているのも、全部、全部私が悪いんじゃないか……」
「……ったく、何を言い出すかと思えば。許すって言ったって、そんなことを言われてもな……。なぁシャーロット、俺たちはもう家族みたいなもんだとは思わないか?」
「……家族?」
「そうさ。帰る家があって、二人でこれからの生計について頭を悩ませて、飯だって一緒に食ってる。いや、だから家族って言えるのかは分からないが。とにかく、そう言えば分かりやすいだろ」
「そう、なのか?」
「そうなんだよ。それでだ、家族だってんなら、迷惑を掛け合うのが当たり前で、どっちかが困ってるなら、片方が助けてやるもんなのさ。だから今回のことだって、別に特別なことなんかじゃないんだ」
「…………」
「難しい顔をするなって。良いじゃねぇか、それで。とにかく今回は二人共生きていたんだから」
「……そんなのは、
「ったく、面倒なやつだな。今回のことで俺が気に入らねぇことがあるとすれば、最初から俺に相談しなかったことだよ。俺たち二人が組んでいたなら、端からこんなことにはならなかった筈だぞ」
「だ、だって、それは……話したら、お前に迷惑が掛かると思ったから……」
「ハァ、おかげでこの有り様だよ……。そう、だな……どうやって、今回の埋め合わせを……してもらおう、か……――」
………………。
「……バレル? おい、どうした……? …………ッ⁉ おい、起きろ‼ 返事をしろッ‼」
「うるせぇな、まだ生きてるよ……。あぁ、一つ良いことを思いついたぞ。なぁシャーロット、今回の埋め合わせをしたいってんなら、まずその話し方をどうにかするってのはどうだ? お前、顔は良いんだ。今の内に歳相応の話し方ができるようになれば、いつか今よりもずっと美人になるだろうぜ」
「…………、どうすればできるんだ、そんなこと……」
「俺がそんなことを知る訳ないだろう。俺はお前が言うところの、悪人面なんだぞ。そうだな、まずは誰か参考になるような美人を見つけて、そいつの真似でもしてみろよ」
「……そんなことをして、一体お前にどんな得があるんだ?」
「見ていて面白い。それだけで十分さ」
「……フッ……本当に、頭のおかしなやつだ」
「おい、早速契約違反だぞ。フリでも良いから、ちょっとは可愛らしく喋ってみなって」
「えっ、あっ、えっと……。…………、あ、頭のおかしいやつ……です、わ……?」
「……それは、勘弁してくれよ……」
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