第15章決断

久しぶりに目覚めが良かった。

カーテンを明け

目映いばかりの光

最上階から見える金沢の街並み

暫くの間、こんなに綺麗だと

思える景色を見ることがなかった。

と、言うか

心の余裕がタケシにはなかった。


「あの夢。。。やけに会話がリアルだったな。。。」


テーブルの上に置いてあるケント6mgのくちゃくちゃになった箱からタバコを取り出し

火をつけベッドに腰掛けた。


ふ~~~っと煙を口からいっぱい吐き出す。


おもむろに

スマホを手に取り

仕事探しの広告に目をやる。


その画面に一番に映し出された

コバルトブルーの海の景色が載った求人に

目を奪われた。


【南の楽園の島、宮古島

リゾート地であなたの夢叶えませんか?】

そんな求人が載っていた。


南の島か。。。

きっと暖かいよな。何も知らない土地に行ってみたいな。。。


そんな気持ちがタケシの頭の中を掠めた

誰も知らない街で一から人生やり直すのも

いいのではないかと思うようになってきた。


人生の中には人それぞれ環境、価値観が違い

そして出会いも別れもある。


タケシは生まれながらに普通に暮らすと言う意味が分からなかった。


彼は彼なりにただ、平凡と言う中の暮らしが欲しかった。

人を愛する表現方法も分からず、ただ、その関係する周りの人たちが喜ぶことが幸せと思い込んでいたのかもしれない。

それに翻弄され自分の思いとは裏腹に勘違いされ

その時に言い訳や反論したらまだ気持ちも許されたであろう。

自己表現すれば誰かが傷ついてしまう

そして気持ちを押し付けてしまったら

その関係性は崩れてしまう。

それが怖くてたまらなかった。


人々とすれ違うたびに横目にするのは

小さな子供を連れ添った家族たち

心許し合い笑顔を交わす恋人たち

羨ましいのではなくその優しい時間が本当は欲しかった。


手に入れようとするとその手からこぼれ落ちるように知らず知らずに関係する人達が離れてしまう。それが心閉ざしてしまう、一つの要因に過ぎなかった。

ある人は自分自身に原因がある、身内からはお前が全部人を不幸にすると言われ育った。


その関係する人達を思う余りに自分を押し殺すしか無かった。

その場所にいる限り、自分がピエロになっても良いとさえ思い暮らしてた。

だからそんな自分が嫌になっていた。

だからもう全てを捨ててもいいと思っていた。


そんな自分が存在してもいいのだろうか

そんな自分が生きていても意味があるのか。。。と

人に言わせれば利己的な考えだと言う者がいるかもしれない。それでも。。。

それでも心許す人達に幸せでいて欲しいと思っていた。



やがてタケシは一つの思いを胸に決断するのだった。


「あの優しい夢の中の女性を探してみたい。そこに何か答えがあるのかな。。。

」と



誰も知らない場所から自分やり直したい。。。と



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