Episode.09 ゴーレムの住む村
「昨日は本当にすみませんでした」
朝、目覚めた俺は昨日の夜に考えた通り、ルドルフさんにもう一度謝罪した。
「ほっほっほ、もう気にしておらんよ」
ルドルフさんはそんな俺を笑い、気にしないでいいと許してくれた。
「……?」
そんな俺達を事態が飲み込めていないフィオがぼけーっと見つめている。
「さぁ、今日も張り切って向かうとするかのう」
ルドルフさんのその掛け声に頷き、俺は彼に続く様に歩き始めた。
Episode.09 ゴーレムの住む村
道中、ルドルフさんから今回仕事を頼んできた人の手紙を見せてもらった。
そこには一言、ミミズが這った様な文字でこう書かれていた。
――私のお父さんを探して下さい
「依頼主は子供なんですか?」
当然、その文章から書いたのが小さい子供であると予想する。
「うむ、どうやら父親が失踪している様じゃな」
肯定され、真っ先に思ったのは金にならなそうな仕事というものだ。
俺がルドルフさんの立場なら引き受けたかというと怪しい所だ。
「お父さん、見つかると良いですね」
「そうじゃな」
ただ幼い子が悲しんでいる状況を良しとしている訳ではない、余裕があるなら助けたいという気持ちはある。
「あんた、まだ怪我が治ったばかりなんだから無茶するんじゃないわよ?」
「わ、分かってるよ」
俺達二人の話を横で聞いていたフィオは何かを察したのか、釘を刺してきた。
それから数時間歩き続け、前方に村の様なものが見えているのに気付いた。
「村だ! ルドルフさん、村ですよ!」
「うむ、そうじゃな」
昨日今日で歩くのにうんざりしていた俺は目的の村に辿り着いたと知り、歓喜してルドルフさんに話しかける。
その村は大きな森林地帯を抜けた先にあり、周囲には
ぶっちゃけ、とんでもなく辺鄙な場所だ。
「早く行きましょう!」
一刻も早く村に着いて休みたいと考え、俺は先行して走り始めた。
「ロスト、待ちなさい! 何か様子が変よ!」
周囲の様子を伺っていたフィオが走り出した俺を大声で呼び止める。
「え、何だって?」
しかし、既に二人と20mは離れていて彼女の声が聞き取り辛かった為、足を止めるのが遅れてしまった。
「……煙?」
立ち止まって気付いたが、周囲に薄くだが白い霧の様なものがかかっている。
「ロスト、早く此方に戻るんじゃ! その霧は
「ひぃぃ」
瘴魔の前兆、その言葉を耳にして恐ろしくなった俺は大急ぎで二人の元へ戻ろうとした。
だが、行動するのが遅かったらしく霧の中から現れた
それは全身が真っ黒な影の様なものに
「あっ……あっ……」
前回遭遇した犬モドキとは比べ物にならないほど恐ろしい姿をしており、俺はその場で立ち
「ロスト、逃げなさい!」
二人は全速力で俺のいる場所へ駆けつけようとしてくれている。
ただ二人が辿り着くまでに瘴魔が俺を襲うには充分すぎるほど時間があり、死を覚悟する。
「っ!」
瘴魔の鋭く尖った
その
「お゛ぉぉぉぉ」
直後に大男は人とは思えない
「あ゛ぁぁぁぁ」
そこへ駆けつけた二人が火と風の魔法を同時に浴びせ、
「ロスト、大丈夫なの?」
「あ、ああ」
立ち
まだ身体の震えは止まっていないが、助けてくれた大男にお礼を言おうと接近する。
「あの、さっきは助けて頂きありg……」
感謝の言葉を口にしている途中、目の前の大男が人ではない事に気付いた。
それは全身が岩で形成されており、胸に
「ほう、ゴーレムか」
その信じられない姿に固まっていると、ルドルフさんが横でそう呟くのが聞こえた。
「ご、ゴーレム?」
巨大なそれを見上げ、再び現実世界では見聞きした事がない存在について尋ねる。
「魔力を動力にして動く人形の事よ」
困惑している俺にフィオが分かりやすい様に
「しかし、これだけ大きなゴーレムだと膨大な魔力が必要のはず、この様な村に用意できるとは思えんが……」
ルドルフさんが言っている事は俺には理解出来なかったが、このゴーレムとやらが凄い存在なのは分かった。
俺達三人が話し込んでいると突然目の前のゴーレムが動き出し、先にある村へと歩き出した。
その光景を三人で何となく観察していると少し離れた場所で立ち止まり、此方を確認する様に振り返る。
「どうやら村まで案内してくれるみたいじゃな」
「馬鹿ロストがまた
危うく死にかけたのでフィオの意見にはイラっとしたが大人しく従う事にした。
その後、ゴーレムの案内で俺達は何事もなく村へ辿り着く事が出来た。
「案内、ありがとう」
改めて案内してくれたゴーレムにお礼を言う。
そして、そのまま全員で村に移動すると思いきやゴーレムは村に到着すると行く所があるのか、一人で村の中へ入って行ってしまった。
「仕方ない、三人で行くかのう」
ルドルフさんの一声で俺達は三人で村へと移動する。
「おや、旅人さんかい? 外から人が来るなんて珍しいね」
村に入る直前、近くで農作業をしていたおばさんが俺達に声をかけてきた。
「あ、どうも」
先頭を歩いていた俺が何となくおばさんの応対をする。
「ようこそ、ラットヴィルへ」
手紙に書かれていたので名前は知っていたが、村の名前はラットヴィルと言うらしい。
「何もない所だけどさ、ゆっくりしていってよ」
「は、はい、ありがとうございます」
その言葉に頷くとおばさんは嬉しそうに笑い、農作業へ戻って行った。
そんなやり取りを後ろにいた二人がにやにや笑いながら見ている。
「見てないで二人も挨拶して下さいよ」
「すまんすまん、ぎこちない姿を見ていたらお主と初めて出会った時の事を思い出してのう」
文句の一つも言おうと口を開くが、ルドルフさんの返答に何も言い返す事が出来なくなってしまった。
「あんた、人と話すの下手すぎ」
但し、こいつは許さん。
それから何度も手紙の主の家を見つける為、聞き込みをしたのだが何故か全て俺がやらされる事になってしまった。
本音を言うとコミュ障の俺には少々辛い、ますます屋敷へ帰りたい気持ちが強くなる。
手紙には送って来た人物の名前が書かれていたのでそろそろ見つかっても良いはずだ。
俺が人との接し方について真剣に悩み始めた頃、不意に背後から声をかけられた。
「あっ、もしかして賢者様ですか?」
声色から既に背後の人物が子供である事が分かる。
振り向くとそこには
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