第19話

「真一、もうしないから出てきてよ。」



俺の息子が完全に落ち着くまで、返答ではできなかった。

春香が扉の前に居るので、自分で処理することもできず、悶々とした感じだけが残っている。



15分ほど待って、完全に息子が静まったのを確認してからドアを開ける。

すると、少しばかり涙目の春香がドアの前に立っていた。



「ごめんごめん。お待たせしました。

あまりにも、童貞には刺激が強かったもので。」



「自分でしたわけじゃないよね?」



春香があまりにも直球なので驚いてしまう。

そして驚いた姿を見て、さらに疑念を持ったようだが、はっきりと否定しておいたほうがいいだろう。



「してないよ。

今度からは、もう少しゆっくりと進めていきたいんだけどどうかな。」



春香は俺が否定したことに安堵を覚えつつ、首を振った。



「いやです。

だって、ゆっくりなんて思ってたら、付き合うのに高校生までかかったんだよ。

この分じゃ、私が真一とつながれるのは成人してからとかになりそうじゃん。」



俺のヘタレが原因ですね、すいません。とは言えない。

その発言からすでにずいぶんと待たせてしまったこともわかる。



「春香。そこはちゃんと考えているから、待っていてほしい。

流されてとか、そういう不確かな状態で簡単に春香と一線を越えたくないんだ。」



今、自分ができる精一杯をしようと、一歩春香に近づく。

そして、春香を俺の胸の中へと抱きしめる。



「本当に?先延ばしにしようとか考えてない?」



今までが今までだから、やはり信用はされない。



「春香の優しさや思いに甘えたくないんだ。春香を大切にしたいんだ。

俺は春香と一生一緒に居たいから、だから、俺が納得して進めるまで待ってほしい。」



だけど、ここは譲れないのだ。

中途半端に妥協して、未来離れるよりもとことん頑張って未来も一緒に居たい。

そのために、今は我慢したいと思う。



「うん。」



「それと、俺も我慢しているんだ。

春香としたくないとかじゃないのだけはわかってほしい。」



自分の欲望のままに、春香に触れることが出来たらどんなにいいだろう。

自分のすべてを春香にぶつけてしまいたい。

自分の中のドロドロとした菅女王や欲望を全て。

そして受入れてほしいと思う、あまりにも醜い人間のエゴだ。



「わかった。

じゃあ、真一が納得して進めるようになるのはいつなの。

何が出来たら納得できるの?それを教えてほしい。」



「俺としては、どんな形であれクリスマスには結論を出したい。

自分なりに頑張って、それでもクリスマスまでに結果が出ないなら、春香に相談するとか、違う方法を考えていくべきだと思う。

だから、クリスマスの予定を開けておいてほしい。」



抱きしめていた身体を離す。

ずっと抱きしめていたいくらい、柔らかくいい匂いがしていたが。



「うん。

ねぇ、一緒に寝ていいの?」



「もちろん。男に二言はない。

一緒に寝よう。」



手を出さないように頑張らなければならないが。

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