第10話

 カフェを出て到着したのは、いつも来るショッピングモール。

 買い物もできるし、飲食店も豊富で映画館だってある。とりあえずはここに来ればデートは間違いがない。


「春香。今日はどこ見たい?」


「んー、今日は服を見たいんだー。

 最近、真一の服のサイズが合わなくなってきてるし。」


「え、俺の服?

 今日、あんま金持ってきてないけど。」


 財布の中身を考えるが、いるのは諭吉さんが一枚くらいだったはずだ。

 もちろん、下ろせばあるが。


「大丈夫です!

 実は、美香さんから服を買うお金を預かっています!」


「なんだってー!」


 まるでコントのような驚き方をする俺。

 注目を集めていることが、周りを見なくてもわかる。


「春香の好みの服装にしてくれる?

 母さんに買ってもらった服もいいんだけどさ…。

 あんまり、今の俺には合わないかなって思ってたんだよね。たまに服とかも見に行くんだけど、何が似合うかわかんないし、流行りもわかんないからさ、買うのためらっちゃうんだよね。」


 店員さんに話しかけられるのも苦手だ。おしゃれな人から見たら、ダサいと思われるんじゃないかなんて考えてしまい、店の中に入ることもためらってしまう。

 何とか頑張って試着しても、店員さんのお似合いで巣を信じることができない。かといって試着した以上は買わなければとよくわからずに買ってしまうことが何度もあって、あきらめてしまった。


「任せて!

 私にとって最高にかっこいい真一にしてあげるから。」


「母さんにはいくら預かったの?」


 ショッピングモール内の地図を見ながら行く店を悩む春香の横でぼーっと立っているのもさみしいので、会話をすることにした。


「なんと、3万円です!

 2セットくらい買っておいでだって。」


 俺より遥かのほうが、母さんと話しているのではなかろうか。

 というか、俺にひとことぐらいあってもよかったんじゃないのか、母よ。


「そっか。結構買えるね。

 靴とかも合わせてほしかったし、少し、お金下ろしてくるね。

 少し、この辺で待ってて。」


 せっかくだから、全身コーデをしてもらおうと思い、春香にそう告げた後俺は、ATMコーナーに向かった。

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