第3話
私には大好きな人がいる。
名前は真一で、私の幼馴染だ。
家が隣同士で、両親同士が仲が良かったから幼いころから一緒だったし、兄妹みたいに育ってきた。
だからなのか、真一は私の好意に気づいていない気がする。
太ももや肩、ブラ紐が見えるような服を着て部屋に遊びに行っても全然反応がないし、彼の胡坐の間にくっつくように座ってみても「一緒に見る?」と見ているアニメを見せてくる始末だ。
その時間もまた、私は好きなのだが。
一般的には、私は可愛いや綺麗といわれる事も多いし、告白は後を絶たないので割と美形なほうだと思っている。
身体も、彼がアニメで好きなキャラクターと同じように胸が大きくて腰にクビレがあってお尻がでかい感じのいわゆるぼんっきゅぼんだし、彼の好きな黒髪ロングに敢えてしている。
髪なんて、短いほうが手入れも楽だし、ひっかけたりすることもない。なのに、ロングにしているのは真一がそういう女の子が好きだからに過ぎない。
なんだか、悶々としていると真一がぶつぶつ呟いているのが聞こえた。
真一は、考え込むと独り言をいう傾向にある。
私は、そんな真一の考え事をしている時の顔が好きなのだ。
真剣な表情をしているので、ずっと見つめていたくなるし、見つめていても全く気付かない。
「真一?さっきからぶつぶつ喋ってるけどどうしたの?」
さすがに、ずっとぶつぶつ言っているのは怖いので少し話しかけてみることにする。
大体、こういう時は私がいることを忘れているので、声をかけると考え事から戻ってきてくれる。
「いや、独り言。なんて言ったか聞こえた?」
やっぱり考え事だったらしい。
「いや、あんま聞こえなかったけど。」
安堵したよな真一の顔、聞こえなくてよかったってことは私に言えないようなことを考えていたのだろうか。
少し間を開けて、真一が私を見つめて言う。
真一に見つめられると恥ずかしくて目をそらしてしまいそうになる。
「春香。今年のクリスマスの予定をあけといてほしいんだけど。」
「いいけど。てか、毎年一緒に過ごしてるでしょ。今年はうちでやる予定だよね?」
そう、毎年交代で互いの家で甘江田家と思井家で集まってクリスマスパーティーをしている。
今年はうちでやるので、真一がうちに泊まっていく予定だ。なので、そこでは特にアプローチを強化しようとお母さんと話していた。
「いや。今年は二人クリスマスを過ごしたいんだ。
二人でご飯食べに行って、イルミネーション見ながら春香に告白するから、二人で出かけるって和真さんと一花さんに言っておいてほしいんだよね。」
意味が分かるけど分からない言葉がたくさん出てきた。
「ん?二人?告白?イルミネーション?」
「俺と春香の二人でクリスマスを過ごしたい。そのうえで、デートの終わりに告白したいから、クリスマスの予定を開けてほしいんだ。
俺さ、昨日、愛原君と出かけてた姿を見たって話を聞いて、春香のこと取られたくない。
だから、ちゃんと告白してお付き合いしたいんだ。
そのために、準備してクリスマスに告白するから、予定あけといて。」
突拍子もないとは正にこのことだ。真一は私に興味がないんだと思っていた。
しかも、告白をすると言っている。そんなこと言われたら緊張してしまう。
「あ、あの、わかったから。
予定も明けとくし、両親にも言っておくから。
きょ、今日は帰るね。」
とにかく、恥ずかしさや真一への愛おしさで爆発してしまう前に逃げなければならない。
嬉しさと恥ずかしさと困惑で何も考えることができない。
「あ、うん。隣だけど送ってくよ。」
「いや、いい!
大丈夫!ほんとにすぐだから。
ね?大丈夫!
ま、またね!」
私は顔を隠しながら、自宅へと走った。
誰にも真っ赤な顔を見られないように、自分のベッドへと飛び込んだ。
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