第3話 狂犬

夜になった。男は火をおこし、野営の支度をする。


「ひとりで野営は危険だ。二人でそれぞれやるよりも一緒にやったほうが便利だろ」


ネコは同意した。


朝、男が目を覚ますとネコの姿がない。用を足しにでも行ったかと思ったが、近くに気配がない。


「あいつ…俺を巻く気だな」


男は急いでネコのあとを追う。


「道は基本的に一本道だ。やつの足ならそのうち追いつくはず……。それまでに他のやつに見つからないといいが……」


男の不安は的中した。


ネコは冒険者らしきヤツらに囲まれていた。


「おい。お前達なにをしてる」


「何だ?俺たちが先に見つけたんだぞ。横取りしようってのか」ガラの悪い冒険者たちが言う。


「そいつは俺のツレだ」


「は?どこにそんな証拠がある。これは俺達の獲物だ」


「……そいつがいくらで売れるのか知ってるのか?」男は落ちつているが力強い声で言う。


「当然だろ。獣族の娘だ。大銀貨100枚はいくだろ」


「そうか。それはお前たちが命をかける価値のある金か?」男は剣を握る。


「おい、そいつ知ってるぞ」冒険者の一人がいう。「狂犬だ。親衛隊の狂犬だ」


「何?じゃあお前があのシーゲルか」


「ああ」狂犬、シーゲルと呼ばれた男は頷く。


「丁度いい。お前、賞金首になっただろ。稼がせてもらうぞ」


冒険者たちは同時に剣を抜いた。3人でシーゲルを取り囲む。ジリジリとにじり寄る冒険者たち。正面の冒険者がシーゲルに振りかぶる。シーゲルはそれを払いのける。背後から二人が同時に襲いかかる。シーゲルはそれも回避。シーゲルは包囲から楽々と脱出し、ひとりずつ斬りかかる。冒険者のひとりが倒れる。


「あと2人…」


冒険者の一人が逃げる。残されたひとりはシーゲルに睨まれる。狂犬に睨まれた子うさぎのようになってしまった冒険者は、負傷した仲間を残したままそそくさと逃げていった。


「薄情なヤツラめ」

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