『まっちゃ売りの少女』

やましん(テンパー)

『まっちゃ売りの少女』 バトル1

 『これは、おとぎ話しです。』



        🍵😌✨



 『まっちゃ、まっちゃは、いらんかね〰️〰️〰️☺️』


 何もかも、凍りついている街角に、彼女の売り声が侘しく響く。


 『まっちゃ、まっちゃは、いらんかね〰️〰️〰️〰️〰️。あまい、まっちゃ。日本製だよ。』


 こんな晩に、うかつに外に出たら、それだけで深い凍傷だってしかねない。


 もし、じっとしていたら、それはもう、確実に凍死である。


 実際に、あちこちに、何人か、すでに長い時間、まるで動かない黒い影がある。


 建物の引っ込みや、角に寄りかかって、疲れて眠ったのだろう。


 子ども連れの母らしきもあった。


 もしかしたら、まだ、生きているのかもしれない。


 しかし、このまま、誰も、助けには来ないだろう。


 レスキュー隊は、とっくに崩壊している。



 戦争なんか、するからだ。


 核の冬とは、良くも言ったものだ。


 ついでに、核爆発が、火山の大噴火を導いたのか?


 南の火山が、破局的なカルデラ噴火を起こしたのだ。


 けれども、もはや、説明してくれるマスコミも学者も、ない。


 テレビもラジオも、新聞も止まったままだ。


 市役所も破壊されて、職員も、みないなくなった。


 市長さんは、行方不明のままだ。


 代わりをやろうなんて人は、在るわけもない。


 警察署はあるが、これも警官がほとんどいない。


 暴力警官が、あまり発生しなかったのは、国民性だろう。


 また、もし警官や、役人がいても、給料は出ないし、どうにも、食べられないだろう。


 食べられなければ、仕事にはならない。



 何れにしても、太陽は、ぶ厚い雲の上でしか見えないのだ。


 地上には、なんの恩恵も、もたらさない。



 『まっちゃ、まっちゃは、いらんかね〰️〰️』

 

 

 すると、街の反対側から、別の売り声が聞こえてきた。


 リリックなソプラノのまっちゃ売りの少女よりも、すこしどすが効きぎみで、ドラマティックなメゾソプラノあたりだろう。


 アルトまでは、たぶん行かない。


 『核爆弾、核爆弾は、いらんかね〰️〰️。純粋超小型熱核融合弾だよ。日本製だよ。核コンロにもなる優れものだよ。』


 『あら、ついに、来たか。話には聞いていました。核爆弾売りの少女。これは、負けられませんわ。………まっちゃ、まっちゃはいらんかね〰️〰️。あまい、まっちゃ。日本製だよ。まっちゃ、まっちゃ。』


 まっちゃ売りの少女は、声を一段と高めた。



 相手も、気がついたようである。


 呼び声が、さらに凄みを帯びてきた。



 『爆弾、核爆弾はいらんかね〰️〰️。核爆弾。超小型純粋熱核融合弾だよ。最高性能。日本製だよ。ひっくり返したら、あら不思議、核コンロにもなる、優れものだよ。』


 『まっちゃ、まっちゃは、いらんかね〰️〰️最高品質❗あま➰〰️➰いまっちゃ、日本製だよ。』


 『爆弾、核爆弾はいらんかね〰️❗最高の核爆弾はいらんかね〰️〰️。』



 ついにふたりは、街の真ん中の交差点でぶつかった。


 それで、ふたりで交差点を占拠し、ぐるぐる廻りながら、呼び声合戦となったのである。


 『まっちゃ、核爆弾、まっちゃ。最高の核まっちゃ。日本製だよ。まっちゃ核融合弾。爆弾まっちゃ❗ まっちゃ核爆弾❗ ひっくり返せば、核まっちゃ❗』


 

 すると、ひとりの、初老の男がやって来た。


 『あ、あなたがた、頑張ってるところ、わるいけれど。』


 『あ、おじさま、まっちゃ。買ってください。』


 『いえ、おじさま、核爆弾にしましょう。』


 ふたりは、背の高い男にまとわりついた。


 少女といっても、体は、大人並みにみえる。


 『いったい、このふたりは、何を食べて生きているのだろうか。』


 その、今時珍しい、このあたりの住民ではなさそうな、かなり良い身なりの紳士は、いささか考えたのだ。


         🍵

 


             つづく……

 


 

 


 


 

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る