カモノハシのひとりごと(242話辺りからあとのお話)
私は最近、あまり面白くない。
理由はわかっている。
クリスマスにこの部屋にやってきた丸くてご主人様の布団に入ることができる新入り。
あのペンギンのせいで面白くない。
ご主人様はあの子がきてから、カモノハシのティッシュカバーである私のことをあまり可愛がってくれなくなった。いや、もともとそれほど可愛がられていたわけではないけれど、今まで以上に気にされなくなったような気がしている。
大体、ペンギンにはペンちゃんという名前があるのに、私には名前がない。
背中に生えたティッシュを供給するという大切な役目を果たしているのだから、カモちゃんと呼んでくれても良さそうなのに、ご主人様は呼んでくれない。カモちゃんが嫌ならノハシでもいいけれど、呼んでくれそうにない。
ペンギンは名前があるどころか、志緒理、と呼ばれることさえあるのに不公平だと思う。私だってご主人様を仙台さんと呼ぶ人間の代わりくらいにはなれるはずなのに、代わりにはしてくれない。
愛情の差を感じる。
でも、一番になりたいわけじゃない。
ご主人様には宮城志緒理という一番がいる。
私を選び、この家に来ることになるきっかけを作った人間で、ご主人様を仙台さんと呼ぶ人間である宮城志緒理。ご主人様の大切な人間である彼女は、この部屋にやってきて、私の手を握ったり、私でご主人様を叩いたりする変な人間だ。
ご主人様は、そういう人間を気に入っている。
私はご主人様の一番が宮城志緒理であることに文句はないし、彼女から手を握られることも嫌ではないけれど、私でご主人様を叩く行為だけはいただけないと思っている。私はご主人様を叩きたくはない。
でも、ご主人様は宮城志緒理に叩かれても、蹴られても、噛みつかれても、ようするになにをされても気にしていないどころか、嬉しそうに見えることが多いから、宮城志緒理が私でご主人様を叩くという行為を甘んじて受け入れている。
ただ、ペンギンを受け入れることは難しい。
私だってあの子のようにご主人様からたくさんキスされたいし、抱きしめられたい。でも、ご主人様がペンギンにキスをする回数よりも、宮城志緒理にキスをする回数の方が多いから、ペンギンは一番にはなれない。
一番は宮城志緒理で、ペンギンは永遠に二番だ。
……おかしい。むかつく。
二番は私だ。
ペンギンは新入りだから三番になるべきだ。
三番になったら、ペンギンと仲良くしてあげてもいい。
何故なら、ペンギンのぺたりとした足は私に似ていなくもないからだ。それに、ペンギンにもくちばしがある。いつか少しくらいは話をしてあげてもいい。
でも、絶対。
私がご主人様の二番になってからの話だ。
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