それから二人は友達になった。

 いろはとあゆみは二子山駅から出ると、人の姿のほとんど見えない二子山町の駅前通りをゆっくりと歩いて移動をした。

 あまり昔から変化のない町の風景を見て、いろははいろんなことを思った。

「ここはいいところだね」 

 といろはは言った。

「どのあたりがですか?」

 と首をかしげてあゆみが言った。

「静かだし、安心できる。それにとてもゆっくりとした時間が流れているような気がするんだ。なんだかすごく、この場所だといろんなことを今まで以上にもっと、もっと深く考えることができるような気がするの」

 と隣にいるあゆみを見ていろはは言った。

 そのいろはの言葉にあゆみは無言だった。

 話を聞くと驚いたことにあゆみもいろはと同じように『家出』をしている最中とのことだった。

 今朝、両親と喧嘩をして、そのまま(中学校には登校しないで)家を飛び出したのだそうだ。

 そのあゆみの言葉を聞いていろはは「実は私も家出をしているところなんだ」とちょっとだけ顔を赤くしながらあゆみに言った。

 するとあゆみはまた笑いを堪え切らない様子で、くすくすと上品な仕草でいろはを見て笑った。

「家にはまだ帰りたくない?」といろは言った。

「はい。まだ」とあゆみは言った。

「でも今日中には家に帰るつもりでいるんだよね?」といろは言った。

 そのいろはの言葉に少しだけ間を置いてから、「はい」と(しっかりといろはの目を見て)あゆみは言った。

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