7
それから二人は友達になった。
いろはとあゆみは二子山駅から出ると、人の姿のほとんど見えない二子山町の駅前通りをゆっくりと歩いて移動をした。
あまり昔から変化のない町の風景を見て、いろははいろんなことを思った。
「ここはいいところだね」
といろはは言った。
「どのあたりがですか?」
と首をかしげてあゆみが言った。
「静かだし、安心できる。それにとてもゆっくりとした時間が流れているような気がするんだ。なんだかすごく、この場所だといろんなことを今まで以上にもっと、もっと深く考えることができるような気がするの」
と隣にいるあゆみを見ていろはは言った。
そのいろはの言葉にあゆみは無言だった。
話を聞くと驚いたことにあゆみもいろはと同じように『家出』をしている最中とのことだった。
今朝、両親と喧嘩をして、そのまま(中学校には登校しないで)家を飛び出したのだそうだ。
そのあゆみの言葉を聞いていろはは「実は私も家出をしているところなんだ」とちょっとだけ顔を赤くしながらあゆみに言った。
するとあゆみはまた笑いを堪え切らない様子で、くすくすと上品な仕草でいろはを見て笑った。
「家にはまだ帰りたくない?」といろは言った。
「はい。まだ」とあゆみは言った。
「でも今日中には家に帰るつもりでいるんだよね?」といろは言った。
そのいろはの言葉に少しだけ間を置いてから、「はい」と(しっかりといろはの目を見て)あゆみは言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます