義の悪役令嬢と義理の姉にいじめられていた私が王子のダンスパーティーに行ったら【親友】のおかげで大逆転劇

カイト

花嫁

「あなた前にも言ったわよね、本当にちゃんと掃除してる?」



苛立ちがこもった口調でそう言ってくる。



「はいすいませんお母様もう一度最初からやり直します」



「レイン あと5分以内にここら辺全体の掃除が終わってなかったら今日昼ごはんなしにするよ!」



レインにさっきから怒りをぶつけているこの女はレインの義理の母である。



名をクライシスという。



「後5分以内にですか…」



弱々しい声でそう言葉を返した。



クライシスは怒りの表情を浮かべて無言でレインとの距離を詰め、勢いよくレインの頬を叩いた。



パンという乾いた音が家の中に響く。



「あなたは私の言う事に従ってればいいの分かった!」



「はいわかりました口答えをしてしまい申し訳ありませんでした…」



そう言って頭を下げる。



「何々結構大きな音が聞こえたけどレインがまた何かやらかしたの?」



そう言って部屋の中に入ってきたのはレインの義理の姉であるデールだった。



「またこの子がやらなきゃいけない掃除をサボってたの」



「またサボってたの全く掃除ぐらいいい加減できるようになってよ」



いつもように2人でレイン攻める。



「ほんとあなたって使えないわね」



無言で何も言わないレインに対してデールがそう言葉を吐き捨てた。



「それに引き換えあなたは私に似てすごく可愛いわね」



「ねえお母様3日後に行われるダンスパーティーに何を着ていけばいいか一緒に選んでください」



「そうねそのパーティーにはきっと王子も来てくれるだろうし2人のどちらかが王子の心を射止めることができればもっと地位の高い公爵令嬢になれる」



「そうと決まればお母様早速服選びを始めないと」



そう言って楽しそうに話しながらその部屋の中から出て行った。



レインの実の母親と父親は小さい頃に亡くなっていて親戚であるこの家に引き取られた。



この家に来たばかりの頃は義理の姉も母も優しかったがそれはただの偽りの仮面でしかなかった。



この家に来て一か月もしないうちにレインの事を2人とも道具のように扱い馬頭し、レインの心は次第に壊れて行った。



毎日毎日それを繰り返し最初は悲しみの感情に飲まれることもあったがもはやそれもなくなった。



心が壊れたその日からレインの世界は灰色一色となった。



もう2人に罵倒されても何も感じなくなっていた。どんな嫌がらせをされても何も感じることはない。



完全な抜け殻状態。



2人のレーンに対する嫌がらせは日に日にエスカレートして行った。



最初の頃は 足をわざと引っ掛けられ転ばされるだけだったが最近は物理的にも精神的にも攻撃してくるようになった。




いつも通り3人で夜ご飯を食べているとレインがこう言った。



「お母様私は三日後のダンスパーティーに 何を着ていけばいいでしょうか?」



「あなたが着ていく服なんかを考えておく必要なんてないでしょ、あなたがパーティーに出席するわけないんだから」



「ていうか何でむしろ地味で大して可愛くもないあんたが王子主催のパーティーに出席できると思ってるの?」



デールが嘲笑あざわらうようにそう言ってくる。



「もしかしてあんたまさかだけど自分だったら王子と釣り合うかもしれないと思ってるの?」



「もしそうだとしたらどれだけうぬぼれてるのよ」



「いいえ決してそのようなことは…」



「デールの言う通りあなたを連れてってもただ邪魔になるだけだからね」



「でもまあいい引き立て役にはなってくれるんじゃない」



「それもそうねははは!」



今度は2人で馬鹿にする様に笑う。



「まあそういうことだからあなたはいつも通り家の掃除でもしといて」



「分かりましたお母様」




レインはそのパーティーに特に行きたかったわけではない、もし万が一パーティー会場に行くことがあれば洋服選びをしなければいけなかったからだ。




この家に来てからというものよっぽどのことがない限り新しい服を買ってもらえなかったのだ。



だからといってもし私が一緒にパーティー会場に行くことになれば使い古された洋服などではいけない。



もしそんなクライシスをはずかしめるようなことをすれば後で手を挙げられるのは間違いないだろう。



「後使った食器洗っといて」



「はいわかりました」



デールに 言われた通り食器を丁寧に洗い食器棚に戻す。



そして家の近くにあるとても小さな空き家に入りそこに置いてある布団の中に入る。



家の中にいくつかの空いている部屋があるにも関わらず、クライシスが 強制的に レインを空き家で眠らせている。



その建物自体がとても古いため小さな穴から冷たいすきま風が入ってくる。



かなり前にレインは家の中で寝させてくれるようクライシスとの交渉を試みたが、居候の分際で何を言っているんだと怒鳴られてしまった。



レインはその隙間風にじっと耐えながら布団にくるまり眠りに落ちるのを待つ。




レインはいつも通りクライシスに言われて家の庭の辺りを掃除していた。



花壇に植えてある花の手入れやお客様が 入るところの玄関の掃除や 色々な場所を掃除した。



家の外の掃除をしていると家の玄関の所に誰かが立っているのが見えた。



そこにはエメラルドのような綺麗な緑色の瞳で水色の髪でショートカットの女の子がそこに立っていた。




「レイン久しぶり」



「お久しぶりですメイン」



「今日はどうしてここまで来たんですか?」



「特に用事があったわけじゃないんだけど久しぶりにレインと話したいなと思って」



メインは平坦な口調でそう言う。




2人は家の庭に置いてある小さいベンチに座った。




「ところで最近義理のお母さん達とはうまくいってる?」



いきなりそう質問を投げかけて来る。




「ええ、とても仲良して頂いてますよ」



メインは自然な感じでそう言った。とても良くできた 作り笑いを顔に浮かべながら。




これがもし今しゃべっている相手がメインでなく浅く広くの人間関係だったなら ここまで手の込んだ表情づくりはしなかっただろう。



じゃあ何故そんなことをしているのかといえばレインにとってメインは小さい頃からの唯一たった1人の友達であり親友だからだ。



そんなたった1人の親友に心配をかけるわけにはいかない。





10年前。



「レイン建物の中ではなるべく気をつけて動いてくださいね」



「はいわかりましたお母様」



素直に返事を返す。



「それでは今日も楽しんでくるんだぞ」



「はいお父様 今日も1日楽しんできます」



その父親の言葉に明るい笑顔でそう言葉を返す。



「それでは先生今日も1日よろしくお願いします」




そう言って母親が頭を下げる。



父親も少し遅れて頭を下げる。



「わかりました」



「それじゃあレインちゃん行こうか」



「お父様お母様行ってきます!」



そう言って元気よく手を振る。




楽しく友達と遊んでいる最中ふと横に顔を向けてみると、みんなが楽しく友達と遊んでいるなかただ1人だけ自分の席に座り本を読んでいる女の子の姿を見つけた。



「これ何の本?」



真剣にその本を読んでいる女の子の横からのぞき込むように本のページを見てそう尋ねる。



すると本を読むことに集中していてレインが横にいることに気づかなかったようで驚きの視線を向ける。



「私の名前はリーフィアレイン」



「あなたの名前は?」



「私の名前は…イールドメイン」



恥ずかしいのか本で口元を隠すようにしながら小さい声で呟く。



「一緒に遊びましょう」



「うん…」



そう返事をしてレイ の手をとる。



それから2人はよく遊ぶようになった。





「それでレインはそのダンスパーティーに行きたいと思ってるの?」



メインに昨日の夜あなたがダンスパーティーに行けるわけないと言われたことを話した。



「メインはそもそもそのダンスパーティーに行きたいと思ってるの?」



そう聞かれて無言で首を横に振る。




「私がダンスパーティーなんて出た らいい笑い者になるだけですよ」



「メインは王子のパーティーに出席するんですか?」



「パーティーは苦手だから できることなら行きたくないんだけど お母さんがいろんな人との交流を深めて来なさいって言てて」



「公爵の娘も変ですね」



レインも一応公爵令嬢の娘ではあるのだがメインの家と比べるとちいが低い。



メインは上流階級の家の娘である。



「まあ私はどっちにしろそのパーティーに出席するつもりはないんだけどね」



ちなみにクライシス達はメインと友達であることを知らない、というより言わないようにしている。




もしレインと友達であることがクライシス達にバレたりなんてしたら、 メインの高い地位を利用してなんとしてでも高い地位を得ようとするだろう。



もしそんな事になってしまったら間違いなくメインに迷惑がかかる。



そんなことにならないためにも隠し通さなければいけない。



「掃除サボってあなた何やってるの!」



後ろの方からクライシスが怒りがこもった口調でそう言ってくる。



「すいませんお母様」



そう言いながらベンチの横に置いておいたほうきを持つ。



「これはこれはメイン様お久しぶりです この子がなんか迷惑をかけていませんでしょうか?」



おっとりとした優しい口調でそう言葉を口にする。




 「いいえこちらこそすいません掃除の邪魔をしてしまって」



変わらず平坦な口調でそう言葉を返す。



「いえいえいつでもいいのでまたいらしてください」



メインはその場を去った。



「はぁ…」



そう短くため息を吐いた後明らかに口調が変わった。



いつもの口調に戻ったのだ。



「全くひやひやさせないでくれる、 あなたメイン様に何か失礼なことしてないでしょね?」



「はい…」



「ていうかいつ私が掃除を止めていって言ったのよ」



「すいません……」



今にもこの場から消えてしまいそうな声でそう言った。



「謝るんじゃなくて掃除をしなさい掃除を」



「本当あなたって使えないわね」



呆れた口調でそう言う。




また何か言葉を返しても怒られるだけだと思い黙って掃除をすることにした。



次の日。




いつも通りレインは家の庭の掃除をしていた。



「お久しぶりですレインさん」



そう声をかけられ顔を向けてみるとラトナ王子がそこにいた。



「王子どうしてこんなところに?」



「お母様に何か用事ですか?」



「いえ今日はレインさんのお母様に用ではなくレインさんに用事があるんです」



「私にですか?」



「ええ って言っても大した用事ではないんですけどね」




「あの今度僕がやるダンスパーティーに是非レインさんも来て欲しいんです」



「私がですか?」



「はい是非来て欲しいんです」



「わかりました考えておきます」



「そのパーティーにはいろいろな人が来る予定なんですよ」



「あと美味しいご飯も出るんですよ」



「わかりました考えておきますね」



表情は笑っているが、心の中でどうしようかと悩んでいた。



クライシス達はそもそもレインをパーティーに連れて行くつもりなどない。




レインが夜に1人こっそり抜け出してパーティー会場に行くこともできるかもしれないがそういう行動を取ろうとは思わなかった。



もしかしたら誘ってくれた王子に 恥をかかせるかもしれないと思ったからだ。



王子とそんな話をしていると。



「ラトナ王子お久しぶりです」



デールがそう言いながらレインと王子との間に割って入る。



「ラトナ王子私明日のパーティー楽しみにしているんです」



いつもよりワントーン高い声でそう言った。



「そうですか私も明日のパーティーはとても楽しみにしているので是非来てください」



 王子が爽やかな笑顔でそう言葉を返す。



「それではレインさんパーティーでお待ちしています」



王子はそう言ってその場を去った。



デールが王子に手を振って姿が見えなくなったところでゆっくりレインの方に顔を向ける。



「ちょっと私に黙ってついてきなさい!」



苛立ちがこもった口調でそう言ってレインの腕を強い力で掴み無理矢理どこかに連れて行こうとする。



するとレインが寝る時に使っている物置部屋の中に連れてこられた。



「レインあなた調子に乗ってるでしょ!」



「いいえそのようなことは…」



無駄だと分かっていながらもそう否定する。



「あなた王子に変な色目でも使ったんでしょ!」



レインはその言葉に対してただただ無言でいることしかできなかった。



「そうでもしないとあんたみたいなのが王子に声をかけられるはずなんてないわよね」



「……」



「ち!」



そのまま無言を貫き通しているとそれで逆に腹が立ったのか舌打ちをしてくる。



「黙ってないでどうにか言ってみなさいよ!!!」




強い口調でそう言ってレインとの距離を詰める。



「王子に声をかけられて舞い上がってるかもしれないけどあなたが王子に気に入られるなんて絶対にないから!」



静かな怒りがこもった口調でそう言って勢いよくレインを脅すように壁ドンをする。



その言葉には一切答えずただ話を聞いていた。



「でもまあどんな色目を王子に使ったところで心を射止めることなんてあんたにはできないけどね」



心の底から馬鹿にした口調でそう言ってその場を去る。



パーティーの当日。



「どう似合ってるかしら」



デールが自信ありげな表情で軽くパーマをかけた長い金髪の自分の髪を見せびらかしてくる。



服はレッドワイン色のドレスを着ている。



「まあでも王子の心を射止めるのは私だけど」



そう言いながらクライシスも自信ありげな表情でそう言葉を返す。



そのクライシスの髪の色はこげ茶色でふんわりとボリュームを出したアップスタイルになっている。



服は若干黒に近い紫色のドレスを着ている。



そしてふたりとも顔に濃い目のメイクをしている。



「お母様じゃ絶対無理よ王子の心を射止めることなんてできないわ」



「何をあんたなんてただただ顔に 恋化粧しただけじゃない!」



「それはお母様だって一緒でしょ!」



「私はちゃんと考えて化粧したわよ!」



「そこまで言うんだったらお母様今日のダンスパーティーでどっちが王子の心を射止められるか勝負しましょうよ」



「ええいいわよどうせ私が勝つに決まってるけどね」



余裕の笑みを顔に浮かべてそう言葉を返す。



「それじゃあレイン私たちはパーティーに行ってくるから留守番よろしくね」



「はいわかりました」



その2人は家を出て行った。



2人がパーティーに行っている間家の掃除を頼まれていたレインだったが一つ悩みがあった。



是非パーティーに来てくださいと王子に言われたあの言葉が頭の片隅で引っかかっていた。



せっかく誘ってくれたのに王子に何も言わずにパーティーを欠席することに罪悪感を感じていた。



かといって今更それを伝えに言ったところでパーティーが始まってしまっているだろう。



だからといってパーティーに行ってもあの2人に色々と言われるだけだろうと思いしばらくレインは葛藤した。



色々と考えた結果パーティー会場に行って王子に謝った後すぐに帰ることにした。



すぐに帰ると言ってもそのままの格好で パーティー会場に行くわけにはいかないので、小さい時にお母さんからもらったレインが大きくなったら着せてもらうはずだったドレスを探す。


 


小さい時に前の家からお母さんが残してくれた唯一の形見としてそのドレスを持ってきたのだ。



だが家の中に置いてあるはずの そのドレスをいくら探しても見当たらない。



しまったはずの場所を何度も見たがやはりそこには何もなかった。



クライシスが場所を移動させてしまったのかと思い他の場所も念入りに探したがやはりどこにもそのドレスはない。



少し考えてすぐに気付いたあの2人がレインに嫌がらせをするためにそのドレスをどこか別の場所に隠したということに。



普通だったら悲しみの感情が溢れかえってもおかしくない状況のはずなのだがレインの瞳からは一滴の涙もこぼれなかった。



レインは 気づいた本当に自分の心が壊れてしまっているのだということに。



普通だったら泣きわめいて怒りの感情を口にしてもおかしくない状況のはずなのに、自分の心は奇妙なほどに冷静だった。



まるで他人ごとのように一切感情を揺れ動かされることなく、冷静にどうしようかと考えていた。



少し考えてそのままの格好でパーティー会場に行くことにした。




もちろんこのままの格好で行けば常識のない人だと思われるだろう もしかしたらそのパーティー会場から出されてしまうかもしれない。



でもそれでもいいかとレインは思っていた。



決してパニックになってそんな考えに たどり着いたのではない。



本当に冷静にその考えにたどり着いたのだ。



いや言ってしまえばこの家に来て感情が壊れたあの日からそもそもまともな考えができているのかどうかすらわからない。



それにもしこの格好でパーティー会場に行って笑われたとしても今の感情が壊れている状態だったら人の目も全く気にならないと思ったのだ。



レインはパーティー会場の方へと向かって足を進める。




無事にパーティー会場の場所へと到着し中に入る。




するとそのパーティー会場の中には ドレスを着た女の人や、タキシードを着た男の人達がいた。



その中でただ1人普通の格好をしているレインが明らかに浮いているのは言うまでもない。



「ねえねえあの子普通の格好で来るなんてどこの貴族のこかしら」



女の人3人が嘲笑うようにそう言いながらそのレインの格好を盗み見る。



「ねぇねぇあの子の格好見てよ」



「うわ何あれ王子がせっかくパーティーを開いてくれたって言うのにあんな格好で来るなんて信じられない」



そういう言葉を色々な人達がレインに聞こえるか聞こえないかの声で後ろ指を指しながらそう言ってくる。



「レインさん来てくれたんですか」



ほっとした表情で王子がそう言って近づいてくる。



「来てくれないかと思ってましたよ」



「今日私がここに来たのは王子に謝ろうと思ったからです」



「私に何でレインさんが謝るんですか?」



「まずはこのパーティ会場にふさわしくない格好で来てしまったこと、 そして 王子に恥をかかせてしまったこと、本当に申し訳ありません」



そう言って王子にふかぶかと頭を下げる。



「王子に最初っから謝るぐらいだったらパーティーに来なきゃいいのに」



周りにいる人達は軽蔑した目でそう言葉を吐き捨てる。



「レインさん私は…」



「ラトナ王子こんな常識のない人としゃべるより私と喋りましょうよ」



王子が何か言いかけたところでデールが間に割り込んでくる。



その王子の腕を引っ張ってどこかに連れて行こうとする。



王子に無事に謝ることができもう帰ろうと大きな扉の方に足を向ける。



レインの思っていた通り色々な人達にバカにされ軽蔑の目を向けられたが一切心が傷つくことはなかった。



というより とっくのとうに心が破壊されていて傷ついているんだから、 もうこれ以上傷つけようと思っても傷つけることさえできない。




これ以上心を壊そうと思っても壊すことができないほどにボロボロにズタズタに跡形もなく壊さっているのだ。



「あの女は結局なにがしたかったの?」



「王子と少しでも遊びたいから適当な理由を作ってこのパーティーに来たのかしら」



「もしそうだとしたら本当に気持ち悪いんだけど」



「それもそうねははは」



そんな暴言を背中で聞きながら扉の方に向かっていると。



その大きな扉が勢いよく開いた。



パーティーにいる人達の視線が一気にその扉の方に向く。



すると驚いたことにそこに立っていたのはメインだった。



「レインちょっと私と一緒に来て」



メインがそう言ってレインの手を引いてどこかに連れて行こうとする。




メインに連れてこられた部屋は たくさんの鏡がある部屋で化粧直しをするような部屋だった。



レインはなんでいきなりこんな場所に連れてこられたのか分からず平坦な口調でこう尋ねる。



「こんな部屋まで連れてきて何をするつもりなの?」



「いいからちょっと そこに立って」



レインが部屋の真ん中に立つ。



「レインこれ」



そう言ってメインが手渡してきたのはいくら探しても見当たらなかった昔小さい頃にお母さんからもらったドレスだった。



「なんでメインがこのドレスを持ってるんですか?」




「この前レインの家に行った時花壇のところにこのドレスが捨てられてたから回収しといたの」



ということはこの前メインが来た時は2人でベンチに座って話していたのでその帰りの時にたまたま花壇を見て見つけてくれたということだろうか。



「勝手に持ち帰っちゃってごめんレイン」



「でもこのままじゃまたあの人達がメインのドレスを捨てると思って」



あの人達というのはおそらくクライシス達のことを言っているのだろう。



「でもなんでそのドレスをわざわざ持ってきてくれたんですか?」



「私に着せる為に持ってきたんだとしたら とても申し訳ないですが私はもう王子に謝罪の言葉も言い終えたので家に戻らなければなりません」



「レインに着てもらうためだよ」



「でも私このあと家に帰って掃除をしないと」



「いいから着てみるだけ着てみて」



仕方がないので言われた通りそのドレスを着ることにした。




そのドレスはふんわりとした白いドレスでどこか落ち着いた雰囲気のようなものを感じていた。



「次はこの椅子に座って」



メインが隣にある椅子を見ながら座るように促してくる。



「私は…」



「いいからいいから」



そのレインの言葉を遮ってメインがいつもの平坦な口調でそう言ってくる。



半強制的にその椅子に座らされる。



少し下の方に目線を向けてみると小さいテーブルの所にメイクセットが置かれていた。



おそらくここに置かれているということはメインのものだろう。



レインはメインが化粧するイメージがあまりなかったので少し意外だった。



「メインて化粧できたんですね、私化粧してるメインを見たことがないので少し意外です」



「そんなに得意なほうではないんだけど家柄もあってよくパーティーに小さい頃から出席をすることが多かったから自然と覚えたの」



「まずは髪型を整えた方が良さそうね」



それからしばらく髪を切ってもらった。



すると今まで目にかかっていた前髪がなくなりすっきりとした感じになっている。



すると次はメイクをし始めた。



薄いピンクの口紅の塗る。



目の上と下の部分も軽くメイクする。



最後は髪型まで整えてくれた。



髪型は大人しい感じの三つ編みでまとまっている、全体的に落ち着いた雰囲気になっている。



鏡の方をふと見てみると そこに写っているのはレイン自身のはずなのに、自分でも別人のような感じがした。



「それじゃあ パーティー会場に戻ろうレイン」



「うん…」



その言葉にゆっくりと相槌を打つ。



メインがレインの手を引いてゆっくりと 会場に向かおうとしたその時、 メインが足を一度止め振り向いてこう言った。



「レイン今とても可愛いよ」



いつも通りの平坦な口調でそう言ってくる。



だがその時気のせいかもしれないがめったに笑うことのないメインの口元がわずかに笑っているような気がした。



「ありがとう」



メインが手を引いてパーティー会場まで 一緒に戻った。



するとパーティ会場にいた人達はそのレインの劇的な変化に驚いたようで全員視線を向ける。



「あの愛い女の人どこの令嬢の人なんだろう?」



「もしかしてさっきまで普通の服だった人じゃない?」



「嘘でしょまさか本当に!」



レインのその格好を盗み見るようにしながら内緒話をするように口々にそんなことを言っている。



「堂々と胸を張って歩いてレインはこのパーティー会場にいる誰よりもきっとかわいいだから」



歩く足を止めずにメインが小さな声でそう言ってくる。




それからパーティー会場にいるほぼ全員がそのレインの姿に目を奪われていた。



それから少しするとパーティ会場に曲が流れた。



すると周りにいる人達はそれぞれ男女でペアを組み始めた。



すると王子がレインの前まで来て膝をついて手を差し出してくる。



「レインさん私と踊ってくれますか?」



「はい…」



小さい声で返事を開始その手を取る。



それからレインと王子はそのゆったりとした三拍子の曲に合わせて踊った。



と言ってもレインは今まであまりダンスをしたことがないので王子にサポートをしてもらう感じになったが。 





「なんであの子が王子と一緒に踊ってるのよ!」



クライシスが嫉妬の感情がこもった言葉を口にする。




「なんであのドレスだって 見つけられないように花壇に捨てておいたのになんで!」



デールが怒りのこもった言葉を口にする。




2人は嫉妬と怒りがこもった目でレインをしばらく見続けていた。



曲は無事終わりを迎えた。





「皆さん今日は 私のダンスパーティーに集まっていただきありがとうございます」



そう言って王子が頭をさげる。



「そんなみなさんに感謝の気持ちを込めて一輪の花を渡したいと思います」



王子がそう言うとそのパーティー会場にいる黒いスーツを着た男の人達がそれぞれ赤いバラの一輪の花を渡していく。



わずか3人を除いて。



クライシスにはクレマチスの一輪の花が手渡され、デールには赤色のヒヤシンスの花が手渡された。



「ちょっと待ってください王子何で私達だけ別の花何ですか?」



クライシスがそう言いながら手を上げる。



「その花言葉がお2人に合っていると思ったからですよ」



「ちょっと待ってください 私のもらったこのクレマチスの花言葉は不吉な意味がたくさんあるんですけど」



「だからそれで合っていると思いますよ」



「ちなみにその花をしたのメインさんです」



王子がそう言うとメインが前に出てきて王子の横に立つ。



するとクライシスがメインの方に目を向けて睨みつける。



「クレマチスの花言葉には縛り付けるという意味があります」



「私がいつ何を縛り付けたんですか!」



荒々しい怒りがこもった口調でそう言葉を返す。



「長い間レインさんを縛り付けておいて何を言ってるんですか」



王子が冷静な口調でそう言葉を返す。




「デールさんに手渡した赤いヒヤシンス花言葉は嫉妬です」



「いつ私が誰に嫉妬したっていうんですか!」



「レインさん実の母親からもらったドレスを隠しておいて何を言ってるんですか」



「だいたいドレスを私が隠したっていう証拠はあるんですか、もしかしたらそこにいるメインさんが花壇にドレスを捨てたのかもしれないじゃないですか」



「私はドレスを隠したとしか言ってないのになんで花壇に捨てたことを知ってるんですか」



そう言われて慌てて口元を押さえる。



すると会場にいる人達がざわめき始める。



「ということはそもそもあの3人がいじめるためにドレスを隠したってこと」



「だとしたらひどすぎる」



周りの人達からその2人に向かって軽蔑の言葉が飛んでくる。



「そもそもメインさんとレインさんは小さい頃からの唯一の親友なんですよそんなことするはずないでしょ」



2人にはメインと親友であることを伝えていなかったのでものすごい驚いた顔をしていた。



「お2人は今すぐこのパーティー会場から出て行ってください」



2人は顔に悔し涙を浮かべながら勢いよく扉を開けてそのパーティー会場から出て行く。



「皆様お騒がせして申し訳ありません」



王子がそう言って頭を下げるとたくさんの拍手が起こった。



「レインさん私と付き合ってください!」



そう言って手渡してきたのは百本の赤いバラの花束だった。



その言葉を言われた瞬間灰色に見えていたレインの視界が鮮やかな色を取り戻した。





それから3年後。



レインとラトナはお互い18歳の年を迎えた。



風の噂で聞いた話だが、あれからクライシスは今までしてきた数々の悪行がバレ令嬢としての地位を剥奪されデールと2人で今は路頭に迷っているらしい。



「新郎様新婦様準備終わりましたでしょうか」



「今行きます」



お母さんが唯一残してくれたドレスを着て 結婚式の会場に続く扉が開くのをまつ。



その大きな扉が開くと赤い絨毯がひかれているのが見えその両脇にはたくさんのいろんな花が置かれていた。



その赤い絨毯の上をゆっくりと2人で歩く。



すると周りにいる人達から雨のように 拍手が降り注ぐ。



「レイン受け取ってくれ」



そう言って手渡してきたのは千本の赤い薔薇の花束だった。



そして頭に緑のバラがついた月桂樹けいじゅを付けてくれた。



「色々ありがとうメイン」



満面の笑みを顔に浮かべてそう言った。



「可愛いよレイン」

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