EPISODE1 『色、形』
自分のソレは存在感が全くないモノだった。ここにいる誰の感覚を通しても、『感じることが出来ない』そう言われた自分のソレは、過去2回ソレのやり取りをするみんなと一緒に居たら『色』と『形』が見えてきた、らしい。
でも自分的には、例えその事実があったとして、だからどうしたんだろうという気持ちに変わりは無くて。
だって、記憶が戻ったわけじゃない。自分がなぜここにいるかが、わかったわけでもない。まぁ、それらがわかったところで、どうなんだって話もあるんだけど。
……よく、わからないんだ。正直な話し。自分の中にあるソレが少しずつ変化していることが、良いことなのか悪い事なのか。自分ではどうしたいと思っているのか。
それにアノコがなんで自分と一緒に居てくれるのかも良くわからない。こんな得体のしれない自分みたいな存在なんて、放っておけばいいのに。だけど、アノコはそうしない。最初に出会った時から何故か『一緒に居るといいよ』と言って、何か事があると自分もみんなの輪に連れていかれる。自分的には別に、呼ばれるから行く。それだけ、だけど。
自分は今日もアノコが、アノコの家の中でいそいそと落ちてくるソレを大事そうに整理している横で、ぼーっとアノコのすることを眺めている。時々アノコが『これはそろそろかな』とか『これは、もう少しかも』なんて独り言を呟いている。なにが“そろそろ”なのか、なにが“もう少し”なのか。自分には何一つわからない。
でも、わからない、だけ。
だからどうだっていう話、なんだ。
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