1-8「魔物がこちらを殺す気だと!?」「当然では!?」

 継ぎ目のない真っ白な素材でできた部屋の中に突入すると、そこには大きなフルプレイトメイルがあった。


「全身金属の化け物だと!?」


 イヴは『全身板金鎧』という概念を知っていたのでフルプレイトメイルが剣を持って立っているのを見て『誰かフルプレイトメイルを着た人が立っている? ウルサの仲間かしら?』と思ったが……


 ご存じ『この世界』の人には、あんな重武装は未知の概念だ。


 乳や尻を半ば放り出すような露出度の高いヒラヒラ衣装、あるいはボディラインが極度に出る『絶対に中に侵入を許さない』というコンセプトのピチピチピッチリ衣装が『戦いに挑む者の格好』であるこの世界において、全身板金鎧は一発で『金属の化け物』と看破されたのだ。


 金属の化け物はガシャンと音を立ててロングソードを構えると、新たな侵入者であるイヴたちへ向けて襲い掛かってきた。


 そのまま剣を振りかぶって脳天から両断しようとしてくるので、イヴは腕を交差させて、金属の手甲で剣を受け止める。


「まさかこいつ……! 魔物なのに、冒険者を殺す気なのか!?」


 リーダーがいちいちおどろいているが、イヴにしてみればむしろ、殺しに来ない魔物の方がおかしい。


 普通、魔物は殺意をもって冒険者に襲い掛かるもので、決してえっちな液体を分泌しながら快楽責めを狙うものではないのである。


 まあ、その『普通』はこの世界において『おどろくべき異常』なのだが……


「リアクションしてないで応戦してくれないかしら!?」


「お、おう! 悪い! みんな、イヴを助けろ!」


 ウルサの仲間たちの獣のような喘ぎ声をバックに、戦闘が始まった。


 全身金属の化け物には斬撃や属性魔法の効果が薄く、メインの火力はイヴの打撃と、ウルサの大剣の破壊力になった。

 メンバーは素早く金属の化け物への対処法を見出し、イヴとウルサの姉妹を補助するように動く。


 イヴの頬を敵の剣がかすめるなどヒヤリとするシーンもあったが、最終的にイヴの打撃が金属鎧の腹部を叩き、鎧はバラバラとパーツごとにわかれて崩れ落ち、動かなくなった。


「こっこれ! これ! もらってもいいですか!? いいですよね! いただきまぁぁぁぁす!」


 錬金術師がいそいそと化け物の死体を背嚢リュックに詰めると、それだけでもういっぱいになってしまう。


 快楽責めによりグロッキーなウルサの仲間を外に運び出す必要もあり、イヴたちのパーティの六階層の冒険は早々に終わることになったのだった。

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