姫乃川さんのSS集

姫乃川沙耶

その目に映る世界

 壁に背をもたせ掛け、遠くを見つめる沙紀。

近視で遠くは霞み、かろうじて見えるのはすぐ近くにある木々の揺れ。

「いつか全て見えなくなってしまうのかなぁ…」

と呟いた。

「沙紀、どうかしたの?」

近くにいた有希は心配そうに声をかける。

「ん、ちょっと考え事してた」


幼少期から視力が悪く、17歳の時に医者から

「10年以内に失明の可能性がある」

と宣告されていた。

28歳になった今、視力はほぼ医者の宣告通りになっていた。


「ねぇ、有希」

沙紀は問いかけた。

「もしこの先、私が失明してしまった後の世界ってどうなっているのかな」

有希は答えた。

「それは私にもわからない」

「だよね…なんかごめんね」


沙紀は空を見上げた。

その目に映る世界は…。





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