この恋は叶わない
赤紫 井戸
第1話
私の名前は如月優香、今年で18歳になる普通の女子高生だ。
勉強も運動も平均ほどで学校でも目立つような人間ではない。
友達は多くなく片手で足りる程だが、別に人付き合いがあまり得意ではない私にとっては十分である。好きな教科は数学、話を聞くだけの授業よりは考えていたほうがずっと楽だ。
趣味は本を読むことで休日は寝ている時間より本を読んでいる時間のほうが多いくらいだ。
そんな私には幼馴染と呼べる人がいる。
彼の名前は高田景、景は同い年で保育所から高校までずっと同じで家もお隣同士であるため親同士のつながりがあるため話す機会も多くいつの間にかほとんど一緒に過ごすことが多い関係になった。
景もあまり目立つタイプの人ではないのだが私と違い勉強がめちゃくちゃ得意で成績は常に上から5番以内に入っている。一緒にいることが多いからわかるのだが景はほとんど勉強をしていない。最低限出された宿題はするのだがそれ以上のことしておらず、テスト期間の時も私に勉強を教えるだけであとは何もしていない、多分自頭がいいんだろう。
そんな計と私だがよく間違われることがある。
それは私たちが付き合っていると思われることだ。
確かには私たち一緒にいることが多い、学校でも家でもお店でも。
でもそれは昔からそうだったのが当たり前になっているだけで別に付き合っているわけではない。
だいたい私は景のことは人としては好きだが、タイプでもないし、異性として見たこともほとんどない。これは景も同じだと思う、多分。
聞いたことないけど。
■
「けーい、数学の宿題手伝ってー」
とある日の放課後、私と景はいつものように一緒に下校していた。
帰りが同じ方向なのだ、特に用事がない日は基本一緒に帰っている。
「手伝ってじゃなくて答え教えての間違いじゃない?」
「ぐ、まぁそうともいう」
「それじゃ自分のためにならないよ」
「やらないよりましでしょー、それに数学の先生怖いんだよー。この前だって、うへー」
以前宿題を忘れた時のことを思い出して私は顔をしかめた。
「はぁ、わかったよ。今回だけだからな」
「わーい、ありがとう景!さすが持つべきは幼馴染だね!」
何度やったかわからないやり取りをする。
それが私たちにとって当たり前だった。
「あ、そういえば今日机の中にこんなのが入ってたんだけど」
そういって景はカバンから一通の綺麗に舗装された手紙を出した。
「手紙?いまどき珍しい。中身読んだの?」
見た感じまだ封も切られてなさそうだ。
「まだ。気づいたのが帰る前でさ、読もうとしたら優香に帰り誘われてまだ読めてない」
「私のせいですか。中身なんだろ?もしかしてラブレターだったり?」
「どうだろうね?」
景が丁寧に封を切り、封から一枚の手紙を取り出す。
それ見て私の心臓の音が少し大きくなるの気がした。
しばらく、景が手紙の中身を黙読する。
正直覗き込んで私も中身を読みたかったがぐっとこらえる。
やがて景が手紙を読み終えて顔を上げた。
「どんな内容だった?」
「…ラブレターだった」
「え!本当!?よかったじゃん!ついに景にもモテ期到来か!で、相手は誰なの?」
「葵さん」
名前をきいて私は驚いた。
葵奈々、私と同じクラスの子だ。
おとなしく性格で昼休みや放課後はよく本を読んでいるのを見かけた。何度か声をかけようと思ったが結局声をかけることができないままでいた。
男子から人気があるらしく何度か葵さんのことで盛り上がっているの見たことがある。
メロンがどうのこうと言っていたが何のことがわからない。
「関わりあったの?話しているところ見たことなかったけど?」
「図書委員の仕事で何度か、でも数えるほどしか話したことない」
「ふ、ふーん。で、どうするの告白受けるの?」
なぜか少し早口になった。
「いや、断ろうと思う」
「いいのー?最初で最後の告白かもしれないよ?それに葵さん男子から人気あるみたいだよ?」
「うん、僕好きな人いるから」
「………えっ」
今度は心臓の音が明らかに大きくなった。
バクバクと体の内側から鈍い音が鳴り響いている。
「だから断ろうと思う」
私を見る景の顔は今まで見たことがない顔だった。
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