第7話 ブルックとの再会

「ブルック、綺麗になったわね。見違えるようだわ」

メアリーがブルックを褒めると亮をジッと見つめた。

「あら、お二人付き合っているの?」

亮を融けるような眼差しで見つめる

ブルックにメアリーは気が付いた。


ブルックは恥ずかしそうに唇をなめてうつむいた。

「しかし、災難だったね。ヒーローの君の身柄を

拘束するとは申し訳なかった」

めったに謝ることのない国アメリカの上院議員、

スチュアートは自分の国を代表して謝罪した。


「とんでもありません、それと亮と

呼んでいただけますか。ミスターはちょっと」

亮は親しみを込めてスチュアートに言った。

「わかった、じゃあ私もラルフいや

ラフと呼んでくれ。あはは」


「まあ、あなたラフですって」

メアリーが笑うとブルーノも笑って言った。

「ラフは親しい間で呼ぶ名前だ、いつも

ゴルフでラフにばかり落としている

 からついたあだ名だ」


「あら、そうなのおじ様」

ブルックが微笑んで聞いた。

「ああ、ブルーたちがそう呼んでいるうちに

メアリーまで。あはは」

亮は普段GパンとTシャツ姿の

ブルックが御嬢さんらしい話し方を

する姿がまるで映画の中の

ヒロインのように思えてならなかった。


「どうした、亮。ボーとブルックを見つめていて」

ブルーノが亮の目線に気づいた

「いいえ、ブルックのレコーディング

どうなったかなと思いまして」

亮は慌てて言い訳をした。


「10曲終わったわ。あと2曲よ」

ブルックはうれしそうに返事をした。

「忙しいのに良いんですか?」

亮は心配してブルックに聞いた。

「喉の調子が悪いから亮に見て

貰うってプロデューサーに言ったの」


「わかりました、後で・・・そうか

道具を持っていなかった」

亮が申し訳なさそうにしていると

「あっ、そうだ。フロントで預かっていたんだ」

ブルックはいつも持っている

バッグを亮に渡した。


「ありがとう、これでブルックの治療ができる」

亮は一目で一恵が送ってくれたものと分かった。


「メアリーさん、右足は大丈夫ですか?」

亮はメアリーの歩き方がおかしいのに気づいていた。

「ええ、でも時々足首に痛みが出るのよ。

 リハビリを受けているんだけど中々

良くならなくて」

亮はメアリーの太ももから大量に

血が流れていた時を思い出した。


「後で診させてください、これでも理学療法士です」

亮が言うとブルックは自慢げにメアリーに言った。

「メアリー、私のグラスボイスは

亮のおかげで治ったの」

ブルックは喉を手で当てて見せた。


それは手を触れるだけで盲人を治した

キリストの奇跡

思い浮かべさせるものだった。

「そう、それは素敵!」

メアリーはブルックの言う事を信じて

ニコニコと笑って亮の顔を見た。


「とこで亮、バイオ燃料の方はどうだね」

ラルフは椅子を引き真剣な顔で亮に聞いた。

「順調です、先日商社を中心にジェイバイオと

言う会社を作りJOLの再建会議でバイオ

航空燃料会社との連携を進めることになりました

アリゾナでは大型施設を作る準備に入っています」


「そうかそれは素晴らしい、

ぜひ我々も仲間に入れてくれないか」

「国がですか?」

「ああ、リーマンショック以来アメリカの

経済はどん底で先が見えない、新エネルギーは

経済刺激策に良いと思っている。

もちろん地球環境にもいい」


「では資金を貸してください」

亮が簡単に言うとラルフは簡単に答えた。

「もちろんだ」

「えっ!」

亮の言った冗談にラルフは真剣に答えた。


「私は再生可能エネルギーの部会メンバーなんだ、

権限はあるんだぞ」

「そうですか、ぜひデビッドと話をさせてください」

「うん、君たちの会社の事は調べさせてもらった。

とても優秀な技術を持っているし、太陽光パネルも

素晴らしい物だ。それに君の取り巻きが

実にすばらしい」


ラルフは笑ってブルーノの顔を見た。

亮は続いて、CО²ドライアイス

計画をラルフに話すと

「ちょっと待ってくれその話はもう少し待ってくれ」

ラルフは時間を気にして

時計を見る回数が増えていた。


話が進むと亮はだんだん不安になって

ブルーノとラルフの顔を見た。

「ところで僕はどうすれば良いでしょうか?」

「なんだ?」

ラルフが亮に聞くと

「いいんですか、今日基地での話なんですが?」

亮は爆弾の話をしていいか確認を取った。


「大丈夫だ、アメリカの政治家の

妻は夫の活動はなんでも知っている。

ブルックも絶対人には話をしない」

亮はそこで、日本でEMP爆弾を発見しそれを

止めた事、そのテロリストのバックには

ジャック・モーガンがいた事、アメリカに連れて

こられて秘密保持契約書にサインさせられた事

新型爆弾の製造にかかわらなくては

ならなくなった事を話した。


それを聞いた四人の表情はそれぞれだった。

メアリーは驚いて口を抑え、

ブルックは驚いて目を大きく開け

ブルーノは腕を組んでうなずき、ラルフは笑っていた。


「亮、まず君にアメリカ市民権を与えなくてはならないな」

ラルフは亮がアメリカに必要な重要人物である事を実感した。

「ありがとうございます」

「ちょうどいい、亮君に会わせたい人がいる」

ラルフは時計を見ると立ち上がった。


五人はレストランを出るとホテルの前に

止まっている2台の黒塗りの車に分乗し

ラルフの脇に座った亮は質問された。

「亮、ワシントンDCは初めてか?」


「いいえ、学生時代にスミソニアン

博物館群を10日かけて見学しました」

「あはは、だんだん君の性格がわかって来たよ」

亮はワシントンDCシンボルの

ライトアップされたワシントン記念塔、

その先のホワイトハウスを観てニューヨークとは

別なアメリカを実感していた。


そして、亮たちの乗った車は大勢の警備員で

守られたホワイトハウスのゲートをくぐった。

「すごいなあ」

亮はホワイトハウス見学に連れてきてくれた

ラルフ・スチュアート上院議員

の粋な計らいに感謝した。

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