さようなら、ベストフレンド

はなさき

プロローグ

「ねえ、僕はどうして運動しちゃいけないの?」

「それはね、少し体が悪いからよ。苦しくなる時があるでしょ。だから、運動はしちゃいけないの」

 僕はお母さんからその言葉を耳にしたけど、運動したい気持ちがあった。苦しくなるのは分かってる。何度も苦しくなった。でも、運動したい。走りたい。そう思うようになったのはいつからだろう。

 運動会があった時にみんなが走っていた。僕は見学していたけど、楽しそうに走っているのを見て僕もあの中に入りたいと思った。

 苦しいのは嫌だ。でも、走りたい気持ちは抑えられない。だから、僕はお母さんとお父さんには内緒で走った。

「優悟くん!」

 学校の先生が僕の姿を見て大声を出す。でも、聞かなかった。

「はぁ、はぁ、」

 当然、苦しくなった。胸がとても痛い。やっぱり、やめとけば良かった。お母さん、ごめん。


 目が覚めて、真っ先に目に入ったのは白い天井。僕は一瞬でどこにいるのか分かった。病院だ。

「優悟! 良かった」

 声のする方へ向けると、お母さんが泣いていた。泣かせたのは僕だ。僕が約束を破ったから。

「お母さん、ごめんなさい」

「走りたかったのよね。大丈夫よ。優悟、ごめんね」

 お母さんは怒らなかった。謝っている理由が分からなかった。悪かったのは僕だから。

 お母さんを悲しませないようにしよう。そう決めたのに、僕は約束を破ってしまったんだ。友だちが出来たから仕方ないよね。

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