第25話 過去

 隠れ家に戻る道すがら、気落ちするエリーゼを見かねて作り話を始めた。


「俺は行商人の息子だ」


 日が沈み始め曇った空が、次第に闇色に染まってゆく。


「今の俺達みたいに、生活に困る子供は珍しくないんだよ」


 ただでさえスライムが生物として実在する世界だ。他の魔物や野党とか、孤児になる原因は少なくないはず。


「俺がまだスラムに来る前、立寄った町に孤児達が膝を抱えて座り込んでた。街の中でも治安の悪い場所だったらしくて、誰も見てみないふりしてた」

「…」

「何もできない俺だったけど…何かしなきゃって手に持ってた昼めし渡して走って逃げた」


雲からぽつぽつと雫が落ちる。


「その町を出てすぐに野党に襲われたよ。孤児たちが知らせた」

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