第4話 空堀のスラム

 カードの上部に記された文字を読み上げると唐突に頭に激痛が走り、知らなかった事が既知の現実だったと呼び起こされた。


「…そんな常識、非常識ってか?」


 まず白蓮が活動しているこのゴミ山は、城塞都市の外壁のそとにある空堀の中である。空堀と言っても広大な面積を占有しており、溝の厚さは小さな農村がすっぽりと収まる程巨大だ。


 かつては前線の城塞であったこの都市も、次代と共に前線から離れ空堀を防御機構として使う事が無くなった。当然の様に整備のコストが削減されていき、今ではゴミ捨て場の不法地帯。


 時折城塞都市に訪れる貴族が、スラムに住む下民に施しを与えようと投げ込まれる物が、この世界の力、富、名声の象徴するカードだ。

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