第6話 キングドラゴン②

6話

絶体絶命の聖一。


「聖一ぃぃぃ!!!私が助けなきゃ!!」



落下する聖一にマホはロッドの先を向ける。


「いけぇ!回復の光ぃー!!!」


地面に直撃する前に、回復の光が聖一に届く!


「届いた!目を覚まして聖一ぃ!!!」


(ん?…お、俺は…き、気を失って)


「うおっと!」


あわや激突の瞬間に身をクルっと翻して勢いのまま着地をする。


ドン!!


(あ、危なかった。今のは本当に死んでもおかしくなかった。)



「あ、ありがとうマホ。」


「よ、良かった…」


次の一手を考える聖一。


(…力場をアイツの周りに出して動きを阻害してみるか……)


「力場!…出ない。」


(遠すぎるか?さすがに7、80m以上距離があるからな。)



キングドラゴンは首をゆっくりマホに向ける。


回復の光を使ったマホに注意が向いたようだ。


「え?やだ!こっち向いてない?!」



(まずい。マホに注意が。)


聖一はブラックホールから杭を取り出す。


(こっち向け!!)


思いきりキングドラゴンの顎に向けて杭を投げる。


キングドラゴンの顎に当たるが、まったくダメージにはならない。


当たった杭は、チン!という甲高い音と共に弾かれた。


(この距離だしダメージにはならないか。それにしても、なんて鱗の固さだ。)


「でも、こっちを向いた。それでいい!」


面倒そうに聖一を見るキングドラゴン。



(空中を飛んでるときに、攻撃が来ると無防備なんだよな。)


足場から足場をジャンプして空中を移動すると、無防備になる。


(よし決めた。この方法なら!!)



今度は足場から足場をジャンプして近づくのではなく、谷を登っていく事にする。



聖一はブラックホールからピッケルを取り出す。



ピッケルを谷の岩肌にガツンと突き刺して、グッと引っ掻けて、岩を駆け上がっていく。



途中、杭をキングドラゴンの眼球に向けて投げて嫌がらせをする。



ああもう鬱陶しいハエがたかっている、と言わんばかりに目障りそうにするキングドラゴン。



もういい加減にしろと、鼻息をスゥーと吸い込む。



(ブレスが来る!よし今だ!!)


「力場っ!!」


聖一は谷を蹴って飛び上がり、力場で出した足場に着地をする。


「ギュオォォ!!」


ボオォーー!という轟音と共に炎のブレスを吐くキングドラゴン。



しかし、キングドラゴンは既に誰も居ない場所に炎のブレスを吐いている。



(隙ができた。この一瞬!!逃さない!!!)




ブラックホールから、ロープを通した杭を取り出す。



杭をキングドラゴンの鼻先に向かって、思いきり投げる!


「刺されぇぇ!!」


ブレスを吐き終わったキングドラゴンの鼻に杭が向かっていく。


左の穴と右の穴の間に杭がブスン!!と突き刺さる。


「ギイィヤゥ!」


痛がるキングドラゴン。



「力場!」


キングドラゴンが悶えている隙に、糸巻きのような形の力場を出す。


そこにロープをグッと巻きつけ固定する。


(これで、アイツの鼻先までロープが繋がった!)


「うぉー!!!!!」


聖一はピンと張ったロープの上を、超人的なバランス感覚で走り抜ける!


(パルクールなめんじゃねー!!)


ロープの上とは思えないほどの、とてつもないスピードで肉迫していく。



あと10m程度の所で右手の爪から斬撃を放つキングドラゴン。


「ギュイヤァ!!」



冷静にその動きを見ている聖一は、右手から斬撃を飛ばす前のモーションに気づく。


(来る…)


ピンと張ったロープを弓のようにグッと踏みこみ、矢のように上に飛び上がる。


聖一が、飛び上がった瞬間



斬撃が飛んできてロープが切れる。


聖一のジャンプが少しでもタイミングがズレていたら、直撃していただろう。



空中にスゥゥーー!と上がっていく聖一。



「マホォーーー!!!!今だーー!!!!」



「わかったわぁっ!!!ライトニングゥー!!!」




自分より上に飛び上がった聖一を、不機嫌そうに睨み付けているキングドラゴン。



聖一に気を取られ、片眼にライトニングが直撃する。



「ギィヤウゥゥン」


眩しそうに仰け反るドラゴン。


「力場!!」


力場の射程に入った為、キングドラゴンの後頭部に力場の壁を作る。



ゴン!!!


頭を打ち付けるキングドラゴン


少しひよったキングドラゴンに、聖一は全体重を乗せてピッケルを振りかぶる。


「どおりゃゃーーー!!」


キングドラゴンの上顎に全力の一撃を突き刺す!!


ガチィン!


しかし、鱗が1枚ひしゃげただけで突き刺さらなかった。


(なんて固さだ!)



1m×60cmくらいの大きさの楕円形の鱗。


それが、ひっくり返った傘のようにひん曲がっている。



(1枚はがしてみるか…)



ミスリルダガーをブラックホールから取り出して、はがれかけの、ひしゃげた鱗の隙間を引き裂く。




栓抜きのようにピッケルを肉と鱗の隙間に入れて、ベロっと一枚剥がす。


(刺され!)


「ふん!」


むき出しの肉と鱗のちょうど間に、思いきりピッケルを、ブスン!と突き刺す。



「ギ、ギ、ギャャゥガグャウ!!!」



空中の絶対王者はあまりの痛みに声をあげる。


(よし刺さった!ピッケルが抜けないように鱗の内側に固定して…)


鱗の内側に、突き刺したピッケルの先をグッとかます。



そして、聖一はピッケルの持ち手の穴にロープを通す。


ロープをスルスルと伸ばしながら、キングドラゴンの頭部を走りジャンプをする。


「テコの原理でぇ!!」


キングドラゴンが先ほど後頭部をぶつけた力場の壁のてっぺんを支点にして、ロープをグッと持って全体重かけていく。



「ずる剥けろぉ!!!」


ピッケルが作用点、力場の壁が支点、聖一の体重と踏ん張りが力点、になっている。


テコの原理でドラゴンの頭側の皮と肉を尻尾の方まで、ズルズル!!と、引き裂いていく!


背中側とお腹側の鱗の境い目がブチブチと音をたてながら引きちぎれていく。


「うぉぉおおおー!!!!」


とうとうキングドラゴンは背中側がベロンとめくれ血が吹き出して絶命する。





「ナ、ナイスせぃいちぃ~!」


それを見たマホはへなへなと腰が抜けながらガッツポーズを取る。



「…り、力場…」



聖一は、落下しながらなんとか最後の力で足場を作り命からがら着地をする。


「…はぁ…よ、よし…」


フラッと座り込み、グッと握りこぶしを作る。




皮と肉が剥がれたキングドラゴンの背中から血が勢いよく飛び出す。


その血しぶきが雨のようにサァー!と舞い上がる。



そして、ドラゴンの肉と皮がマホに降り注ぐ。


「どわぁ!ぐぇ!重たー!!オェェ!!」


キングドラゴンの顔の辺りの皮がマホに覆い被さる。


「暗い!臭い!キモい!オェェ!!」


光を求めてマホが這いずり回るとキングドラゴンの頭の方が少し動く。


「し、獅子舞?」


「んんー!プハ!し、獅子舞て、なによ!!」


這いずり回ってようやく、ピッケルが刺さっていた上顎の穴から顔を出して聖一に向かって叫ぶマホ。



なんとか顔を出したマホに容赦なく血の雨が降り注ぐ。


「オェェ」


そしてなんと、キングドラゴンの背中から吹き出した血の雨が徐々に晴れて、それは七色の虹になる。


「オェェ、き、キレイ、と、とってもオ、オェェ、き、キレイ」


血を浴びながら、血の雨から出来た虹を綺麗だと思うマホであった。

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