フレンチトーストにオレンジピール

織部

プロローグ

タケルとナオは、最高の夫婦だ。

 2人を知る友人たちは口を揃えてこう言う。

 揶揄ではなく本心からだ。

 2人は、高校の時からの付き合いだ。

 タケルは、バスケットボール部のレギュラーで背も190センチ近くあり筋肉質。地が茶色の髪を長く伸ばして後ろで結い、すっと伸びた鼻梁に少し厚めの唇、二重の目はとても優しげで、本人も競い合うスポーツをしてるとは思えないほどに穏やかで、体格と性格のギャップに萌える女子は後を立たない。

 ナオは、ミステリアスな才女と呼ばれており成績はいつも上位10位以内に入っていた。小柄で身長がタケルの胸に届くかくらいしかなく、いつもタケルを見上げていたのが印象的だった。猫を連想させる顔立ちはとても愛らしく、ボブのショートがさらに際立たせる。吹奏楽部でも1年生の時からリーダーシップを発揮する凛々しい姿に同性からも異性からも惹かれていた。

 そんな学校を代表する人気者2人が交際していると話しが出た時は、学校中で歓喜と悲鳴が木霊した。

 それくらいに2人は、お似合いだった。

 2人は、常に寄り添っていた。

 喧嘩することもなく、お互いを尊重し合い、会えば楽しそうに話している。

 比翼の鳥とは、この2人のことを言うのではないかと、誰もが思った。

 そして交際して10年目に2人は籍を入れた。

 当然、誰もが祝福した。

 むしろ、まだ籍を入れてなかったことに驚いていた。

 結婚式は、挙げなかった。

 2人とも派手なことは好きでないし、今更だからと笑って家族や友人に説明していた。

 少々、納得はいかなかったものの、それでもみんな若い2人の幸せを祈った。

 2人もとても幸せそうだった。

 この時までにどれだけの人が違和感に気づいたのだろうか?

 こんなにも仲睦まじい2人が10年間、手すら触れたことがないことに。

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