赤の女王と青の女王の戦い

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 炎の世界の赤の女王は、運命の相手を探していた。


 自分が心の底から愛せる相手が、どこかにいると夢見ていた。


 なぜなら赤の女王は他人を愛せない。


 王として自分が導くべき人々を愛さなければいけないのに、人々を愛せないのだった。


 魅了の魔法を自分にかけても、それは同じ。


 だから赤の女王は、人を愛せる日が来ることを夢見ていた。


 そんな女王はある日、占い師によって希望を見出す。

 運命の相手があらわれる日が明らにされたからだ。


 赤の女王はその日を特別な日として決めて、一日一日を夢見ながら過ごしていた。







 水の世界の青の女王は、運命の相手を探していた。


 自分を殺してくれる相手が欲しかったからだ。


 彼女はとても罪深い。


 病弱な彼女は、人の命を魔法でもらわないと生きられない体質だった。


 だから生まれた日から毎日、父王の手によって、その日に殺された死体を差し出されてきていた。


 そんな彼女は自分では死ぬことができない。


 物心ついてその後、自分が罪深いと気が付いた日には、とても傷ついた。


 こんな自分は早く死ぬべきだ。


 そう思った彼女は、自分を殺してくれる存在があらわれる事を願っていた。


 そんな時に、占い師がやってきて、運命の相手を告げてきた。


 青の女王は歓喜した。


 これで、死ぬ事ができる。


 希望を見出した青の女王は、人生で一番幸せだった。


 その幸せな気持ちのまま、探し出した赤の女王へ会いに行く事にした。






 二人の女王は出会う。


 互いに異なる目的をかかえて。


 そして赤の女王は、青の女王に期待をして。


 青の女王も、赤の女王へ期待をよせる。


 しかし、それらの願いが交わる事は決してない。


 だから遠からず二人の関係は破綻してしまう。


 数多の世界に煉獄の嵐が吹き荒れ、いくつもの世界を大水の災害が襲う。


 希望に心を弄ばれた女王たちは、どこにもぶつける事ができない憎しみを互いへぶつけあった。


 同じ女王であり、同じ強大な力を持つ者にしか、ぶつける事ができなかったから。


 それが間違っていたとしても。


 彼女達は戦い続ける。


 不毛な争いを繰り返し続ける。


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赤の女王と青の女王の戦い 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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