三日間だけの花嫁

羽弦トリス

第1話結婚式場選び

山崎純也は民間病院の内科医である。

午後の診察を終えて、帰宅するために着替えた。この病院には入院施設はない。入院が必要な患者は、提携している大学病院へ紹介することになっている。

さて、純也は自宅に戻るとジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めて冷蔵庫を開け、缶ビールを取り出した。

仕事の後のビールは格別である。

同棲中の加藤まひるはシャワーを浴びているようだ。

バスルームから音が聴こえる。

まひるは、クリーニング屋さんの実家の職場で働いている。

純也は医師ではあるが、ある程度給料はいいが、まだ30歳であり役職もないので、まひるは小遣い稼ぎに働いているのだ。

純也は2本目の缶ビールを取り出し、くだらないテレビを見ていると、まひるが風呂から上がってきた。

「純也君、帰ってたの?直ぐ夜ご飯の準備するね。今夜は手作り餃子。ニンニク入れてないから、患者さん相手に気を遣わなくてすむから」

そう、言うとまひるは餃子を焼き始めた。キッチンで料理しながら、まひるは缶ビールを飲んでいる。

「う~ん、いい匂いがする。この匂いだけで、ビールが飲める」


純也は缶ビールは350を3本までと決めていた。研修医時代、二日酔いで病院に行ったら、内科部長に雷を落とされた事があるからだ。

10分程で餃子は焼き上がった。今夜は、味噌汁と餃子とマカロニサラダが夕御飯だった。

純也とまひるは同棲を始めて2年目になる。

まひるの実家に挨拶に行くと、歓迎された。純也の実家では、まひるの酒の飲みっぷりに父親が興味を持ち、早く孫を見せてくれよ!と言っていた。

「ねえ、純也君。結婚式場どこにする?結婚式場雑誌を見ても迷って、私には決められない」

「おれは、海外がいいな。2人だけで。プロバンスの丘の教会なんてカッコいいじゃない?」

「う~ん、それもあるね。南の国がいい」

「例えば?ハワイはやだよ!」

「バリ島」

「マジ?ハワイとあまり変わらないけどなぁ」

「うん、マジ」

「じゃ、バリ島で2人だけで結婚式だ!」

「やったー」

純也は3本目の缶ビールを飲み始めた。

そして、シャワーを浴びた。寝る前に歯みがきをする。

純也はコホンと咳をした。口の中が生温かい。

ペッと、洗面所で吐くとそれは真っ赤な鮮血であった。

その時は純也は、結核か何かだろう。結婚式の前に、CTを撮ってもらおうと考えていた。

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