元・異世界勇者と元・魔法少女のその後の日常
くずもち
プロローグ:異世界転生した勇者だけど魔王を倒して帰ってきたら最終学歴中卒になった件
これは夢だ。
夢。
――「お前のお陰だ、タナカ。お前が居たからここまで来れた」
夢とは言っても言っても空想の夢ではない。
寝ている時に過去のことを思い出す……アレだ。
――「魔王城はもうすぐ……。最後の戦い」
かれこれ、四年ほど前のことになる。
田中は唐突に異世界に召喚されて勇者として魔王と戦わされる羽目になった。
――「この国に平和を取り戻しましょう! タナカ!!」
大変だったし、苦しいこと、悲しいこともたくさんあった。
それでも旅の仲間もいたお陰で田中は最後までやり遂げた。
――「私たちならやれます。そうですよね……勇者タナカ!」
人類を滅ぼそうと暗躍し、かつて封印されるも再び目覚めた古の魔王。
田中は今度こそ完全に滅ぼすことに成功し、王国に光を取り戻すことが出来たのだ。
――「ありがとう……ありがとう、そんな言葉しか私はタナカにかける言葉がありません。この国を救ってくれて……貴方が救国の勇者で本当に良かった」
美しき姫君は言った。
――「ふっ、まあまあの働きだった。異世界の凡夫にしては……まあ、認めてやらん事もない」
ムカつくほどにイケメンオーラを出した王子はツンデレ風にそう言った
――「お前の魔法は二流どまりでしたね。まあ、大魔導士の私に比べれば……ですが」
クール属性持ち貧乳魔導士はいつもの上から目線でそう言った。
――「タナカとの友情……決して忘れません! パシュー!」
廃熱として鎧の隙間から蒸気を放ちながら全身鎧姿の大将軍はそう言った。
――「それでは勇者タナカよ! 人々を! 国を救ってくれてありがとう! 我らが勇者よ! 異世界に行ってもお元気でー!!」
田中の……旅の仲間。
掛け替えのない勇者パーティー。
彼らが笑顔で田中を送り出してくれた感動的な場面の――
「……いや、やっぱり魔王倒して世界救って、さあここからフィナーレだってところで送り返すのおかしくないと田中は思う。せめて宴なり開いて、元の世界に帰る勇者のためにこれまでの頑張りに報いて報奨とか……何かあってもいいんじゃないかと」
「いや、うん。魔王の爪痕酷いし、戦後復興とかもあるわけだしこの際はそこはいいとしよう。金一封ぐらい欲しかったけど、強請るのもなんかカッコ悪かったし……田中がアピールしなかったのも悪い! うん」
「それは良いとしても……ちょっとぐらい女の子とフラグ欲しかったなぁ。少しいい雰囲気にはなれた手応えがあったつもりだったんだけど、所詮は彼女いない歴=年齢の田中の手応えなんてあてにはならなかった……。まあ、姫さんに関しては普通に婚約者の王子いたしな」
それでも帰り際に一回ぐらい胸を揉ませるぐらいして欲しかった。
田中は切実にそう思い返した。
その幸福があれば……きっとこれからの人生、無限の勇気と共に生きていけただろうから。
「……行くか」
既に一年前の出来事にになってしまった思い出の回想をやめ、田中は目の前に置かれた一枚の紙切れを手に取った。
それはこれから行く戦場に必要な武器なのだ。
田中はそれを携えて部屋から飛び出した。
その紙切れ――履歴書にはこう書かれていた。
名前:田中
年齢:二十歳。
人種:日本人、日本人です。全身の肌褐色ですし髪も白だけど純日本人です。
別に染めてないです。真面目です。
学歴:高校には入学三日間は行きました。
経歴:空白の三年間は異世界で勇者をしていました。
特技:暗殺(魔王を殺れたので特技でいいかなって)
剣術(魔王も斬れたので大抵の奴は斬れると思います)
戦闘魔法(ぶっちゃけ魔法使いの方が強い)
補助魔法(こっちはそこそこ得意。クーラーが無かったので冷感魔法とか……クーラーあるから要らないけど)
備考:こっちの世界の人間のレベルで表すと
プロの格闘家で精々30レベル程なので強盗だろうと特殊部隊だろうと勝てます。
警備員代わりにもなりますしお得です!
魔王軍の支配領域で二年近くゲリラ活動で這いずり回ってたので体力と根性なら負けません。
――落ちた。
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