第19話

俺の意識の表層からハルヒたちが消えた。

2つの肉体が重なり合ったり離れたりする。それは社交ダンスのようにさえ見える。

だが現実は違ったようだ。

「この分からず屋!なんでキョンの肩持つのよ!」

ハルヒは声を震わせる。目から涙が今にも溢れそうだ。

「分からず屋はそっちだろ、本当はにいちゃんが好きなくせに、素直に言えない臆病者なんだよ!」

そういうの見てると腹が立つんだよと言い放ちながらかおりは右足からハイキックを繰り出す。初速はゆったりとしているのだが、ハルヒに近づくにつれて急激に速度が上がる。ハルヒは顔面手前スレスレで左手を挟み込みなんとかガードする。しかし速度を増したかおりの右足の運動エネルギーに押し負け、右方向に放り出された。

形勢は終始かおりがリードしているかのように思えたが、かおりの様子がおかしかった。

肩で息をするほど呼吸が乱れて苦しそうなのだ。

思えば俺もおかしい。

いくらかおりの後ろ蹴りを食らったとはいえ、女子の蹴りで意識が朦朧とするのは考えにくい。

とすればこれはおそらく。

「うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさーーい」

ハルヒが叫び出した。

目が蒼く光っていた。

というか輪郭までオーラのように青い光を発している。

俺の予想が概ね正しいことがハルヒの状態を見てわかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る