ゲーム6:お姫様救出バトル⑤
フフフッ、二人が対決して、その勝者が決勝で当たる的なことか。
どちらもゴールまではあと少しだ。彼女たちはもう着いているだろう。実に面白いことになりそうだ。
と、健吾君がどんどん落っこちて行っている。さっきの報復をされたのだろう。なら、勝太君がまず上がっていくだろう。
なら、弘人君と一樹君はどちらが勝つか? 間に合うか?
女子たちに出会って目をパチクリさせている彼らのことを考えるとものすごい面白い。
景色を見渡し、おむすびを頬張りながら伊織は微笑んだ。
「グワァァァァァ!!!!」
一樹は耳が千切れそうなほどの悲鳴を上げ、その場に倒れた。
「痛ぁぁぁぁぁ!!!! これはさすがに反則でしょ! ねぇ弘人君? このままいくとか人間として最低でしょうが!! 伊織さん! 今すぐこいつ反則でグループ追放にしましょうよ!! そして被害者として僕を早織キュンに告白する男として推薦してくだヴハァァァゲホッゲホッ」
うるさいから、弘人は落ち葉を顔へ大量にかぶせた。
「ふざけないでください弘人君!! あんた自分がどんなことしてるか分かってるんですか? 今すぐこんなこと止めて謝って僕を先に行かせないと伊織さんに言って早織キュンに……」
「あぁ、うるさいうるさい。そんなこと言う元気はあるんだ」
耳をふさいで、弘人は一樹をほおって、山道を必死に駆けあがった。
早織ちゃんを助け出すまで、あと少しだ。
健吾が落ちて行くのを見届けてから、勝太はふぅっと溜息をついた。
完全にあいつに弱みを握られてしまったな……これはマイナス点か? けど、伊織先輩が良いって言ったならいいだろう。
弘人と一樹はもう大丈夫だろう。登ってくるのにかなりの時間がかかっているはずだ、体力もないうえに振出しに戻ることになれば辛いだろう。そして健吾は落ちた。つまり、自分の勝ちだ。
「……だからって、油断しちゃいけない」
勝太は自分の頬を軽く叩いて、日差しが差し込む頂上へと足を進めた。
やっとのことで頂上に着いた。
早織たち一行はアドベンチャーズの反対側にある、三つある登山道のうちの一つだ。あまり一通りはない方だと思う。
「やっと着いたぁ」
「長かったぁ。山っていつぶりだろ? 小学校の時ここに一回登った気がするようなしないような……」
姫花は首をひねる。
彼女は早織と小学校から同じで、完璧男と言われる
「そういやさ、響輝君と今も付き合ってるの?」
「ん? あぁ、ひびちゃん? ええっとねぇそうだなぁ。彼ね、高校で転向しちゃったんだよね……」
悲しそうな顔をして、姫花は隣町の高校の名前を挙げた。
「けど、ひびちゃんが時々は会おうってLINE交換して、それでずっと会話してる。時々二人で遊ぶ感じ?」
「遠距離恋愛ってやつか。姫花も大変だなぁ。お前そんなことなってたのかよ。小学校時代の彼氏っていずれ別れるっていうけどな。いつまで続くか?」
と、今高校の隣のクラスにいるダンス部の星、
「さぁてと、ここらでお弁当にしましょうか。みんな、お弁当持ってきてる?」
「持ってきてって言われたから持ってきてますよ」
織子が言った。
「おぉ、マミーの手作り弁当。いいねぇ。ルカちゃん焼肉弁当じゃん! レディース暴走族は違うのか」
「止めてください」
「私は自分で作りました! ちょ、見てよ。すごくない? 私。ちょっと褒めてよ」
と言って、凛が名乗り出た。彼女はずっと料理部だから、弁当も自分で作ってるのか。
「すごい。私はカップ麺ですけど。お湯も持ってきてるから重いんだよぉ」
萌は言った。
「伊織先輩は途中でおむすび食べてるから良いですよね」
「良いの、先輩特権」
ハハハハハと和やかに談笑しながら、早織たちは町を一望できる場所でランチにすることにした。
萌のカップラーメンができてきたころに、和やかだった女子高生の場に異変が訪れた。
ガサガサとあっちの葉が揺れる。
「え?」
向こうに確か登山道があったが、少しコースが外れている。
「よっしゃ来た! やっと着いたぁ」
と、藪をかき分けて人間が出てきた。
「キャーッ!!」
何人かはこの高校生くらいの身長の男に怯えて後ずさっている。
「え? 誰ですか?」
「えぇぇぇっ!! なんで早織ちゃんいるの? 他の子たちって……待って、知ってるかも」
「え? 誰、待ってこの声、もしや……勝太君?!」
「正解」
泥だらけの勝太はニッと笑い、グッジョブポーズをした。
「いや、何してたの。一体」
「え? 山登ってたんだけど」
「山登るだけでここまでなるかい! まあいいけど。あ、そういやあれ、空けてるよね?」
「もちろん。あれってあれだろ? ディーイーティーオーだろ?」
DETO、デエト、デート。良かったぁ。
と、姉ちゃんは後ろで何かやっている。手をだらんとしたに垂らし、ヒラヒラヒラヒラ。
「まあ、そういうわけだからさ。ところでさ、俺も腹減ったんだよな。ちょっと……くれない?」
「え!! 私の?」
「いいじゃんか」
「え、いいけどさ……」
仕方なく、私は箸を持って、唐揚げを勝太の口に放り込んだ。
「サンキュ」
それから少し立ち話をしてから、彼はなぜか姉ちゃんと山を降りて行った。
「待って、早織、これさもしかして! あれじゃないの? アーンじゃないの? うおぉぉぉいいねぇ。藍川君とデート?」
「え? マジ? あの藍川君と? やったじゃん!」
「ヒューヒュー」
「いや、違うから。ホントに。私みたいな女子がそんなことできるわけないじゃんか。ほら、さ、ね?」
「顔赤いよ、早織」
「めっちゃ動揺してるな?」
「目が泳いでるわ」
「止めてって……」
みんなに冷やかされている時、私の脳裏には
――神様によると“思い人”もきっとさおのこと見てるよ。
という、美佳子の予言だった。
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