ペナルティ:弘人の反則
三十分の時間が終わった。
伊織との各トーク画面に、三人全員がラブレターを提出し終わった。
伊織『よし、みんな提出できたみたいだから、結果発表と行きましょう!』
伊織『一、健吾・十七点 二、勝太・十五点』
伊織『ということになりました♡』
健吾『っしゃ!! やっと一位だ!!』
勝太『くっそ、悔し……っていうよりさ、弘人は?』
弘人『ホントだ、僕の名前が無いんだけど』
伊織『ああ、それ? 弘人君、自分で気づかないの?』
勝太『???』
伊織『実はねぇ、弘人君はね、ズルしたのよ』
弘人はもう沈黙を守ることにした。
バレてしまったら仕方がない。だが、どうしよう。これ、除名されたらどうなるんだ? 先駆けするというのはありだろうか。早織の家に乗り込んで、告ってしまうというもの。
でも、今の僕にそれだけの勇気はない。
ヤバい、どうする。
冷や汗が首筋を伝っているのが良く分かった。
健吾『は? ズル? ってどんなズルっすか。弘人、教えろ』
勝太『??????』
伊織『弘人君の書いたのがこれ』
伊織『突然のことで、驚かせてしまったらすみません。早織ちゃんに伝えたいことがあるのですが、直接だと困らせてしまうと思い、手紙を書きました。早織ちゃんと僕とは同じクラスだから、早織ちゃんはどんどん僕に声をかけて来てくれる。それが、僕みたいな人間にとってはとても嬉しかったんです。そこから、僕はある思いを持ちました。それを伝えたい。早織ちゃんのことが好きです。僕と付き合ってください。ぜひ返事を聞かせてください』
伊織『これで、ちょっと一回ネットで調べてみてください? 多分ね、ラブレターのテンプレートとか書かれたのが出てくると思う。つまりそれはどういうことか?』
勝太『あ、ほんとだ。ラブレターのテンプレートって出てきました。めちゃめちゃ弘人のラブレターと一緒っすね』
健吾『は? 弘人、あいつ、まさか……あのゴミカスが』
健吾はただただキレていた。まさかまさか、こんなことが起こるとは。
弘人は前からしっかり者の陽キャ寄りの陰キャだと思っていたが、それは違ったらしい。あいつは全然しっかり者ではなかった。ただの卑怯者だ。
思い切って、俺は弘人に電話をかけた。
『……もしもし? 何の用?』
「おい、ふざけんな、お前」
『……』
「沈黙を保とうってか? そんなの最悪のゴミカスがやることだ。お前、除名してもらうことになるかもしれねぇぜ。なんか謝罪くらいすればいいじゃねぇかよ」
『……いや、負けてたからどうにか巻き返そうと』
「んなアホなことするかお前!!」
『まあ、生き残り戦略的なもんよ』
そんなことを軽々と言ってのける弘人と話すこと自体が屈辱に思えてきた。
「もういいぜ、バカが。お前と話すこと何てなんもねぇ。二度と電話かけてくんな。で、このゲームからもう抜けちまえ、ボケが」
「いや」
弘人の返信を待たず、健吾は電話を切った。
誰が早織を自分のものにできるか競うグループ
参加者 健吾・勝太・弘人・いおりん♪
健吾『さっき弘人と話したんだけど、悪びれる様子はねぇわ』
勝太『ただいまショック中』
弘人『ペナルティーはそっちで考えてください』
健吾『あ、ゴミカス、出てきやがったな。もうここには顔を出すなと言ったはずだぜ。分かってんのかゴラ』
伊織『あ、ちょうどいいところで全員そろってくれたね。さぁてと、ここらでペナルティーを考えてこうと思いまーす♡』
健吾『待ってました』
勝太『まあ、どっちみち反則したやつに負けるわけにはいかなくなったわけで』
伊織『はい、まずはルール確認してみて。まあ、確認しなくても書いてあげるけど。ペナルティーしたらこのゲーム追放って書いたね』
勝太『( ゚д゚)ハッ!! 確かにそうでしたね』
弘人『あ、じゃあ僕追放されるんすね。まあ、好きにどうぞ。ただ、伊織先輩、どうすか。ちょっとね、賭けしません?』
しばらくの間が空いた。
しばらく弘人と伊織の間で、何らかのコミュニケーションがとられた。
二十分後、話し合いが再開された。
伊織『というわけで、弘人君へのペナルティーが決まりました。弘人君は、点数が落ちて、一点になりました』
勝太『一点?!』
健吾『いや、追放じゃないんすか? ちょっとこれはズルいですよ。ちゃんとルールに書いてあるのに? こりゃあ無いですよ』
弘人『ニヤニヤ』
健吾『お前はうるせぇ! 黙っとれボケカスが! お前みたいな卑怯者の言うことは聞きたくないわ!』
伊織『まあまあ落ち着いて、これ聞いて。弘人君とちょっとね、交渉した結果こうなりましたと。それでね、条件は、次弘人君が三位になったら脱落、一位になれば残留になりま~す』
勝太『二位になったら?』
伊織『お、鋭い! その場合は、一位、三位とのじゃんけんで一位になれば、残留。二位、三位なら脱落になりま~す。まあ、弘人君は絶対一位にならなきゃいけないってわけ。どう? 卑怯者を落とすやる気湧いた?』
健吾『絶対潰す。俺が一位になる』
伊織『それと、健吾君ペナルティーでマイナス五点ね』
健吾『はぁ?! 何でですか?』
伊織『ちょっとね、口が悪すぎるわ。私そういうの嫌いなの』
健吾『うそぉ……』
伊織『私の言うことは絶対だったよね? はい、というわけでーす。それじゃあ、十分後、ゲーム再開するから。準備しておいてね♪』
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