『誰が早織を自分のものにできるか競うグループ』

DITinoue(上楽竜文)

ラブ1:サッカー男の恋

 けんちゃんかっちゃんこうちゃん(みんな高一)

 参加者 健吾・勝太・弘人




 健吾『なあなあ、お前好きな人いる?」

 弘人『いるけど』

 勝太『いんの? マジ?!』

 弘人『いるんだなぁφ(* ̄0 ̄)』

 健吾『誰?』

 弘人『鈴川早織ちゃん。仲いいし、カワイイじゃん』

 勝太『マジ?! ヤバっ……』

 弘人『どういうことだよ? あ、お前まさか?!』

 勝太『そうなんだよ。俺も早織のことが……』

 健吾『はぁ?! ふざけんなよ! 俺だって早織が好きで彼女にしようと思ってんのにか?』

 勝太『マジかよぉ』

 弘人『嘘だろ(っ °Д °;)っ』

 健吾『お前ら、友達だと思ってたら裏切りやがって』

 勝太『いや、裏切ったわけじゃないけど』

 弘人『恋愛ってそんなもんじゃないの』

 健吾『そんなもんってどんなもんだよ! 神様は残酷すぎるだ……』

 勝太『とりあえず、どうしよう>︿<』

 弘人『トリマ、一晩各自で考えるのはどうだろう……?』

 勝太『ああ、ああ、ああ。そうするか……』




 豊沼健吾とよぬまけんごは、怒っていた。

 ――なんで、二人とも。

 早織は俺ばかりに心を寄せているものだと思っていた。

 八月後半のそよ風が過ぎてゆく。普段は心地いいが、今ではそんなことはない。


 サッカー坊主の健吾は恋なんぞ一度も無かった。

 ただただ、ゴール目がけてボールを転がし、ボールを蹴り……そんな小学生時代。そして、中学生時代もサッカー部でフォワードとしてゴールキーパーと何度も対決していたのだ。


 まあ、それだけが頭にある人物だったから恋愛なんぞ当然興味もない。女子とはほとんど話さず、男子のサッカー友達と話す日々が続き、そのまま卒業式を迎えた。

 だが、その時に衝撃があった。


 卒業式の日に、クラスメイトの女子から告白されたのだ。


 告白してきた彼女は結構目立ちたがり屋でクラスのリーダー的立場の子だったが、ボールを蹴ることしか興味がない男に恋をするとは、よっぽどの女だったのだろう。と今になって健吾は思う。

 当然、まず恋愛というものはどういうことなのかもわからなかったから、

「悪い。俺はサッカーで忙しいから恋愛なんかに手間暇かける時間はねぇんだよ」と言って強引に断ったのだ。

 早織が好きになった今ではおかしなことをしたと思っているが、当時は本当にサッカーしか興味がなかったから、女との付き合いなんかめんどいものだと思っていたのだ。


 それから、高校に進むと友達ができた。

 それが、勝太と弘人だった。

 二人ともサッカーをしていて、勝太はミッドフィルターとして、攻めへのつなぎの役割を担っていた。弘人はディフェンダーでゴールキーパーにディフェンダーを近づけない守備力をほこる男だった。

 そんなところだけで考えると俺とあまり変わらないが、大きく違うのだ。

 何が違うのか。

 それは、まさしく文武両道で性格がいいやつということだ。

 俺がサッカーしか頭にない男なのに対し、勝太は野球に水泳、体操もできるやつで性格も良い。勉強ができるとは言えないが。でも、気前の良い性格をしていて、リーダー役で面白く、クラスの人気者的な存在だった。

 弘人はサッカー男なのに温和な性格だ。サッカー以外の球技と水泳は苦手だそうだが、足が速く、体操もできる。そして、勉強もまあまあで文化的なやつなのだ。

 あ、兄の要吾ようごが階段を降りてきた。

 俺は自分の恋愛をからかわれたくなくて、とっさにスマホをソファの内側に隠した。




 勝太『ところで、いつからお前は恋愛に興味なんか持ち始めたんだ?」

 弘人『確かに。サッカーしか興味ないんじゃなかったっけ』

 健吾『いや』

 勝太『ほれほれ。恥ずかしがらずに明かせよ。いつの間に変身したんだ? まあ、俺らはアオハル世代だから無理もないけどさ』

 弘人『健吾、いいじゃん。教えてよ』

 健吾『無理なもんは無理だ』

 弘人『そこをなんとか!』

 健吾『無理なもんは無理だ。そんなもん教えたって何の価値もない』




 急に来た勝太と弘人からのLINEに乱暴に対処して、イライラしてきたからスマホを机に叩きつけるようにして置いた。

 ――確かに、いつ俺は恋愛に興味を持ったんだ。

 女なんて、と思っていたがいつになってからは女性、そして異性という目で女子を見ていたことがある。

 だが、それまでに小説とか映画を見たわけでもなく、ただただサッカーをしていただけだ。

 ――そう言われたら、なんでなんだろうな。

 まあ、恋愛というのは基本そういうものではないのだろうか。

 恋愛に興味がない人は本能的に異性を見始める、まあそんなものなのだろう。


『まあ、人間の本能で恋し始めたんだろう』


 イライラを抑えて返信を送り、再びスマホの電源を切った。

「ところで、なんで、あいつらは俺と同じ女子を好きになったんだ?」

 それが、さっきからの疑問だった。

「恋愛って、こうなったらもう縁を切られるものなのか?」

 恋愛下手、というよりは恋愛無知にはこんなことは分からない。

 そもそも、好きな女子とどうやって接したらいいのかが分からないのだ。


 ――調べるのが一番だろう。

『恋愛 やり方 高校生』

 と、ググる。

「勇気を出して、好きな子といっぱい喋ろう!!」

「何事も一生懸命してたら彼女も見てくれるはず☆」

「女子にやさしく! 嫌われることしちゃダメです」

 らしいが。

 なら、テンプレ通りに恋をしていくだけだ。

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