第2話
「子供用の武器があればいいんだがな」
武器庫前では、聖騎士団専用の支給武器が、ずらりと並んでいた。
イバンはその中から、予備隊の剣を選ぶ。
「そういえば、あれから剣の訓練を続けているか?」
俺は首を横に振った。
これは訓練用の武器なのだろうか。
随分使い込まれているが、しっかりと整備され、ご丁寧に加護までついている。
「……。あのメンバーの中じゃ、それは出来ないか」
イバンは子供用の剣を手に取ると、丹念に一本一本、その刃先を確認している。
「魔道士の体質を持って生まれてくることは、それは恵まれたことだ。だけどもしあの魔王に、剣の腕があったらどうだったのだろうと、私は思うのだよ。それは単純に、私が剣士だからかもしれない。だから余計に、そんなことを考えるのかもな」
「魔王は剣士に敗れたから」
俺はイバンを見上げる。
「きっと魔道士より、剣士の方が強いよ。だって、大魔王エルグリムを倒した勇者スアレスさまは、剣士だったもの」
「そうだな」
イバンの大きな手が、俺の頭をしっかりと撫でる。
「お前が心配することは、何もない。これは大人の問題だ。未来にツケは残さない。そのために私たちがここにいる」
「俺もここにいるのに?」
「はは、そうだったな。ナバロも立派な、調査隊の一員だ」
調査期間は、十日で一区切りとされていた。
一度に携帯できる食料の問題と、悪夢を我がものにせんとするヤカラを排するための他、経過報告など、色々理屈があるようだ。
コンパクトにまとめられた携帯備品を受け取る。
「十日で本当に見つけられると、思ってるのかしらね? 中央議会はやる気あんの?」
フィノーラは、ナイフ状の双剣を背に担いでいる。
またよりにもよって、乱暴な武器を選んだものだ。
「ローラー作戦だ。代表者に地図が配られている。人員を増やして、担当地区を手分けし、くまなく捜索するんだ」
ディータはライフルを肩にかけてた。
「どっちにしろ、先に見つけたモン勝ちだろ。報奨金を手にするか、砕いて持ち去るか」
「ハンマーは私が持っている」
それは聖騎士団の団員だけが持てる、特殊なハンマーだった。
大賢者ユファの祝福が与えられたハンマーで、悪夢を打ち砕くことの出来る、唯一のマジックアイテムだという。
「とにかく、十日で与えられた範囲を調査する。準備は出来たか? 出発だ!」
空を見上げる。
青く高く澄んだ空に、闇よりも黒く巨城がそびえ立つ。
俺たちはそこへ向かって、侵入を開始した。
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