第二話 入るなー!
「おいおいカイン。お前何やってんだよ」
冒険者ギルドの酒場で情報収集をしていたケインが、頭を掻きながらそう言った。
「しょうがないだろ? ノアに酒ぶっかけてきやがったんだから」
俺は乱暴な口調でそう答えた。
「まあ、どっちが悪いかって言ったら、百パーセントこいつらだから、罪にならずに済むと思うけどな」
ケインは軽くため息をついた。
「で、どうするかこいつら。中にある鉄粒子を取り出すのは無理なんだが……」
俺は頭を掻きながらそう言った。
「……ん? 何したお前」
ケインが真顔でそう聞いてきた。
「こいつの体内に鉄粒子をぶち込んだ」
「……恐ろしすぎるだろ……」
ケインは体をビクッと震わせると、そう言った。
「まあ、非情すぎるという理由でマリアにすらやらなかったからな。与えられる苦痛は俺が取れる手段の中でも最上位クラスだ」
「だよなぁ……で、どうする? ギルマス来ちゃったけど」
「あ、この人がギルドマスターなのか」
俺達の視線の先にいるのはスキンヘッドのいかつい男性だ。彼が、ここの冒険者ギルドの管理者、ギルドマスターであるらしい。
「おいおい何があったんだよ」
ギルドマスターはあきれたような口調でそう言った。
「はい。ノアに酒をぶっかけてきやがったので、ちょっと懲らしめました。反省も後悔もしていません」
俺は平然とそう言った。
「そうか……まあ、見た感じ、その主張は正しそうだな。だが、何をしたらこんな苦しみ方をするんだ……」
ギルドマスターは苦しんでいるゴロツキ四人を見下ろすと、そう言った。
「これは俺のスキルですね。まあ、流石に教えることは出来ません。冒険者に余計な詮索はダメですからね」
「まあ、そうだな。これ以上は何も聞かねぇよ」
ギルドマスターは不服そうだったが、頷いてくれた。
「はぁ~あ。びしょびしょ……」
ノアはマジックバッグから取り出したタオルで髪の毛を拭きながらそう言った。
「匂いもついてるし、一旦宿に帰って洗った方が良いな」
「分かった~」
「あと、ケインは引き続き頼むぞ。俺たちは例の宿の二階の二号室にいるから」
「おう、任せとけ」
俺はケインをここに残すと、宿へ戻った。
「はぁ~さっぱりした~」
ノアはすっきりした顔でシャワー室から出てきた。
「ひゅ~」
そして、そのままベッドに倒れ込んだ。
「服をちゃんと着ろよ」
俺は子供に注意する親のような口調でそう言った。
あ、もちろんノアの姿は見てないからな? 流石にレディの裸を見るようなことはしないぞ!
「じゃ、ケインが来るまでここで休むか~」
俺は体を伸ばすと、ソファに寝転がった。
ドンドン!
「……ん?」
ドアを叩く音で俺は目が覚めた。
「ケインか? 入ってきていいぞ~」
俺は起き上がりながらそう言った……あれ? 起き上がれない……
「……ん!?」
何と、俺の上にまだ服を着ていないノアが寝ていたのだ。
「あ、やっぱりまだ入っちゃだ――」
ガチャリ
「情報収集をしてきたぞー」
ケインがあくびをしながら部屋に入って来てしまった。
「あ……」
ケインは口を半開きにすると、ポカーンとした。
俺も、数秒の間固まった。
そして――
「ノアの裸を見るなー!」
俺は全力で〈創造〉を使い、目の前に鉄の壁を作った。
「ぬおっ あぶねぇ! 潰されるところだったー」
壁の向こう側からケインの叫び声が聞こえてきたが、今はそれどころではない。
「ノア、起きて! 早く服を着るんだ!」
俺はノアを揺さぶって起こした。
「ふぁ~……分かった~」
ノアはあくびをしながら起き上がると、最近は部屋着となっている白いワンピースを着た。
「よし。入っていいぞー」
俺は鉄の壁を〈創造〉で鉄のブロックにすると、〈操作〉で部屋の隅に置いた。これは後でマジックバックに入れて、処分しに行くとしよう。
「つったく。何イチャイチャしてんだよ。彼女が居ない歴=年齢の俺のことを考えろよ」
ケインは頭を掻きながらそう言った。
「すまんすまん。じゃ、詳しく聞かせてもらおうか」
「分かった」
ケインは頷くと、話を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます