第二十三話 盗賊の襲撃にあう

「あ、見えた」


 あれから一時間ほど歩いたところで、俺達は道に出た。


「あ~何か魔物の出現回数が多くね?」


「確かにな」


 ここに来るまでの間、フォレストウルフを計五匹、フォレストボアを計二匹倒している。そのせいもあってか、ケインはかなり疲れ気味のようだった。


「まあ、安心しろ。これから出てくる魔物は全て俺が倒すから」


 俺は胸をドンと叩くと、自信ありげな表情を浮かべながらそう言った。


「いや、森から道に魔物が出てくることは少ないって知ってるからな!基本一回か二回って知ってるんだぞ!」


 ケインがギャーギャー騒いでいる。昨日と今日でケインには心と体に負担をかけ過ぎていたから、気を使ったんだけどなぁ……


「ま、まあ行くぞー」


「分かったよ」


「分かったー」


 かっこつかないなあと思いつつも、俺はメグジスに向かって歩き出した。




「ユート、嫌な視線が森からくる」


「確かにな。数は一人っぽいな」


「なるどのな。なら多分斥候なんじゃねーか? てなると、この先で襲撃が来そうだ」


 森からの視線を俺たちは冷静に分析していた。


「気配の消し方が甘いな。だから、これはマリア関連の追跡ではないと思う」


「そうだな。まあ、流石にこんなに早く見つかることはありえないしな」


 マリア関連ではないとしたら、これは盗賊で確定だろう。

 俺達三人のことを知らない人が見たら、冒険者になりたての男、非力な少女、ぱっとしない男に見えるだろう。そんなの盗賊からしてみればいい獲物だ。

 実際は、Aランク冒険者に匹敵する男、Bランク冒険者に匹敵する男、小国なら滅ぼせる少女なのに……


 その後、五分程歩いたところで、俺達はガラの悪い男三十人に囲まれた。


「おい! 女と有り金全部をよこせ。死にたくなかったらな!」


 盗賊どもはニヤニヤしながら剣を抜いて、脅してきた。


「お前らこそ、死にたくなかったらしっぽを巻いて逃げるんだな」


 俺は剣を抜くと、最終警告をした。


「へっ 強者を装っても無駄だ。お前みたいなへなちょこが俺達より強いわけがないだろう?」


 盗賊どもは鼻で笑うと、そいう言った。


「そうか。〈操作〉飛剣!」


 俺はマジックバッグからさっき作った龍の爪の短剣を取り出すと、〈操作〉で盗賊どもに向けて飛ばした。


「な!? がはっ」


「ぎゃあ!」


 不意を突いたこともあり、一瞬で半分以上の盗賊を始末することが出来た。


「ちっ はあっ!」


 だが、そこそこ戦える奴は、飛んでくる短剣を剣で叩き落していた。


「へっ 不意打ちとはいい度胸じゃねぇか。だが、俺にはきかな――がはっ!」


「油断禁物だな」


 地面に叩き落された短剣を〈操作〉で動かして、勝ち誇った態度を取っていた盗賊の眉間を刺し貫いた。


「お、お頭――がはっ!」


「ぐあっ!」


 盗賊どものリーダーが死んだことで、統率が一気に乱れた。そこに短剣が飛んでくる。盗賊からしてみれば、絶望以外何物でもない。

 結果、三十人いた盗賊は僅か数分で全滅した。


「ふぅ……面倒くさいけどやらないとな」


 流石に死体を放置するわけにも行かないので、俺は道から外れたところに〈操作〉で穴をいくつか作ると、その中に盗賊の死体を放り込んだ。


「〈創造〉火炎!」


 その後、俺は盗賊の死体を燃やした。そして、その上に土をかぶせて埋めた。


「よい。終わったな」


 俺は二人の方を向くと、そう言った。


「全部お前に任せてしまって悪かったな。後処理なら手伝おうかと思ってたんだがな」


 ケインが申し訳なさそうに言った。


「気にするな。疲れ気味の人を働かせるほど俺は鬼畜ではないからな」


「そうか。それはありがたいが、鬼畜ではないのなら、倒れそうになるまで魔物と戦わせないよな?」


 ケインにそう言われた俺は視線をそらした。


「よ、よし。さっさと行くぞ!」


 俺は会話を強引に打ち切ると、再び歩き出した。

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