ハズレスキル《創造》と《操作》を持つ俺はくそみたいな理由で殺されかけたので復讐します〜元家族と金髪三人衆よ！フルボッコにしてやる！～

第二十一話 ノア、恐怖を覚える

「なあ、ドラゴンってどういうことだ？」

　ケインからそう聞かれた時、俺は何と答えようか一瞬迷った。だが、隠す意味はないと思った俺は、ノアに言った。

「ノア、元の姿を見せてやってくれないか」

「わ、分かった」

　ノアは何か迷う素振りを見せたが、直ぐにコクリと頷いた。

　すると、ノアが漆黒の繭（まゆ）のようなものに包まれた。その後、その繭はだんだん大きくなっていった。そして、天井に届くぐらいまで大きくなったところで繭が破れ、中からドラゴンの姿になったノアが現れた。

「あ、あ……ふひぃ……」

　ケインはノアの姿を見た瞬間、後ろに倒れて、気絶してしまった。俺は頭を地面にぶつけないように、体を支えた。

　まあ、突然目の前にドラゴンが現れたら誰だってこうなる。うん。仕方ない。

「ノア！　人間の姿になってくれ！」

「私を見ただけで気絶するなんて。ケインはかなりビビりなんだね。他の人は、気絶どころか私に立ち向かってきたよ」

　ノアはケインが気絶したことにあきれながらも、人間の姿に戻った。

「いや、多分ノアが会ってきたのは人間の中でもトップクラスの実力を持っている人たちだよ。普通は、こうなる」

　俺はケインを揺さぶって起こすと、ノアにそう言った。

「むぅ。姿を見せただけで気絶されるこっちの身にもなってみてよ」

　ノアは腕を組み、頬を膨らませると、そう言った。

　まあ、ノアの言うことも分からなくはない。姿を見せた瞬間に気絶されたら、生きていくのも一苦労だ。

「うう……ひっ！　ドラ……ドラゴ……ドラゴンになった！　おい！　お前の恋人がドラゴンになったぞ！」

　ケインは跳び起きると、驚きの気持ちを、全身を使って表現しながら、そう言った。

「おい！　落ち着け！」

　俺はケインの頭をスパーンと叩いて、正気に戻した。

「あ、ああ……で、一体どういうことなんだ！」

　ケインは落ち着きを取り戻すと、そう聞いた。

「ノアはブラックドラゴンなんだ。色々あって、今は人間の姿で俺と一緒にいるって訳だ」

「なるほどな……道理で強いわけだよ……」

　ケインは深くため息をつくと、そう言った。

「まあ、取りあえず準備は終わったから、今後の計画を立てるぞ」

「おう、分かった」

「うん。分かった」

「まず、次に行く街はメグジスだ。あそこで俺が〈創造〉で使う鉱石を採掘したり、ハルスとネイルを殺したりするすることが、主にやることだ」

「はーい！」

「いや……しれっとやべぇこと言ってるな」

　ノアは元気よく返事をし、ケインは俺が言ったことに若干引いていた。

「とは言ったものの、今はハルスとネイルは帝都の学園にいる。だから、大体一か月後から始まる夏休みまでは、鉱石採掘や金稼ぎ、作戦に必要な物資を集めることに集中した方が良いな。懸念点があるとすれば、マリアが消えたことでハルスがどう動くかだな」

　影の支配者（シャドールーラー）とマリアが立て続けに消えれば、ハルスは絶対に警戒するだろう。そのせいで、護衛の数を増やされたら面倒だ。

　すると、ここでケインが口を開いた。

「それはないと思うぞ。ハルス様とネイル様は、鬱陶（うっとう）しいからと言う理由で、護衛をつけたがらないんだよ。まあ、遠くから見守るぐらいはしてるけど」

「そうなのか……それは都合がいい」

　遠くから見守る程度の警備なら、どうとでもなりそうだ。

「よし、やることは終わったし、後は自由にしてくれ。ここを出るのは明日の朝にするつもりだ。あの隠し通路を使ったことがバレる前に行きたいからな」

「そうだな」

「うん。分かった」

　二人の返事を聞いた俺は、ブラックスパイダーの死骸を〈操作〉で動かして、大穴の中に落とした。

　その後、アースドラゴンの死骸に剣を向けると、肉を切り取った。

　ドラゴンの肉は美味しいと聞いたことがあるので、楽しみだ。

　そう思った瞬間、ノアがビクッと体を震わせたような気がしたが、気のせいだろう……うん。気のせいだ。

「……こんな感じでいいかな」

　俺は切り分けた肉を〈創造〉で持ち上げると、落ちている石を素材に〈創造〉で作った台の上に置いた。

「よし、〈創造〉火炎！」

　俺は〈創造〉で作った火で、アースドラゴンの肉をじっくりと焼き上げた。

「ああ、いい匂いだなぁ……」

　俺はいい感じに焼けたアースドラゴンの肉を見て、よだれを垂らしていた。

　すると、後ろからトントンと肩を叩かれた。振り返ると、そこには体を震わせているノアがいた。

「ねぇ、人間ってドラゴンの肉が好きなの？」

「まあ……超高級食材とは言われているな」

　俺は遠慮がちにそう答えた。

「うう……私、絶対に街では元の姿にならない」

　ノアはガタガタと体を震わせながら、そう言った。

「ああ、いろんな意味で、そうした方が、いいと思うぞ」

　俺はノアを抱きしめながら、そう答えた。

「つーか、ノアに同族を食べさせようとするとか、お前鬼か何かか？」

　ケインは真顔でそう言ってきた。すると、ノアがケインを睨みつけた。

「こいつと私を同族にするな。同じドラゴンと言う括りだが、格が違う。人間とゴブリンを一緒にしてるようなもの」

「す、すまん……ひぃ……」

　ノアに睨みつけられたケインは、震えて、その場に座り込んだ。

「と、取りあえず昼食にするぞー！」

　こうして俺たちは昼食を食べ始めた。