第10話 セリナとプチ旅行 3



「セリナ!」

「エギルさ……んっ、はぁ……ん!」




 抱き寄せ、唇を重ねる。

 冷たくなった肌と肌。けれど絡めた舌は温かく、お互いの口内から漏れる吐息と唾液で少しずつ身体が熱を持つ。


 そのまま……。

 だが、そこでふと思い出した。




「そういえば、これ使ってみるか」

「それ、エギルさんが買ってた……これ、なんですか」

「媚薬らしい」




 効果がどれだけ持つのか不明なので、一日中持続するとかだったら大変だ。

 そんな疑問が浮かばないほど興奮したエギルは、瓶のフタを外して匂いを嗅ぐ。




「匂いは、普通か」

「少しいい匂いします。甘い香り、ですかね」

「そうだな。じゃあ」




 一気に飲み干す。

 味も普通──だと思ったのだが、強烈なショウガ汁を飲んだように一瞬にして全身が熱を帯びる。




「エギルさん、すごく身体が熱い。大丈夫ですか?」

「ああ、問題ない」

「本当ですか? 感覚あります?」

「あ、ああ」




 肌をペタペタ触ってわかるほどの熱なのだろう。

 エギル自身には何も問題ない。だがすぐに、




「はあ、はあ、っん、はぁ……っ!」

「大丈夫ですか? 凄い、全身が熱くて、汗も……あっ」




 雨とは違う熱を持った汗が全身から噴き出す。

 身体が熱い。それに下半身も、セリナの視線が釘付けになるほど怒張していた。


 エギルは唾を飲む。

 そして、




「セリナ、もう──」

「──んあっ!」




 エギルは狂暴な獣と化した。












 ※R-18 見せられないよ!











 雨は止んだ。

 少し前、いや、ずっと前に。

 エギルとセリナが王城に帰ってきたのは、月が輝く時間になってからだった。




「……ハメを外すのは構いませんが、ご帰宅予定の時間から九時間も遅れるのは止めてください」

「すまない」

「ごめん、エレノア」




 王城に帰るなり、エレノアに𠮟られた。

 まるで門限を破った子供のように。だが、お楽しみだったということを察してくれたらしく、そこまで言われなかった。

 



「まったく。……セリナ、みなさん待ってますよ」

「あっ、うん!」

「ん、待ってる……?」




 どういうことだ、と首を傾げるとセリナは慌てた様子を見せる。




「なんでもないです! じゃ、エギルさん、おやすみなさい!」




 早足に去っていくセリナ。

 その手には彼女が買った、エギルが唯一中身の知らない紙袋。


 あの大きさ、数冊の書物が入っている大きさか……?


 セリナの背中を追うエギルを、エレノアが不思議そうに見つめる。




「どうかしましたか?」

「いや、あの持っているもの何だったのか気になって」

「ああ、あれですか。みなさんからのお遣い……のようなものです」

「お遣い? 何か頼まれていたのか。だったら別に、隠さないで俺に見せてくれても良かったのにな」

「ふふ、そうですね」




 どうやらエレノアは中身を知っているが教えてくれる気はないらしい。




「エギル様、お風呂に入られますか?」

「風呂? ああ、雨に当たったからな」

「それもありますが……匂い、しますよ?」

「あ……まだするか?」

「はい、とっても」




 自分では慣れてしまっているからなのか、全く気にしていなかった。




「じゃあ、食事前に入ってくるかな」

「では、お供しますね」

「……いや、今日は一人で大丈夫だ」




 この流れはおそらく、エレノアとする流れだ。

 いつもなら拒まないのだが、今日はセリナとハメを外しすぎた。それに荷馬車での移動で少しだけ疲労もある。


 今日は遠慮しておきたいのだが。




「そう言わないでください。長い移動でお疲れのはずなのでお背中流しますよ。あっ、疲れてると思うので”おねだり”はしません。はい、もちろん」

「……」

「ささ、行きましょうか」




 腕を組まれ、胸を押し付けられ、隣を歩く。


「何もしない」

「今日はお休すみの日です」


 そう言うエレノアは信用できない。


 ──そして案の定、この後も彼女にこってりと絞られた。

 





※この章、全体的にR18部分が多くなる予定です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る